ミニシアター系映画の時代
僕はいわゆるミニシアター系映画が大好きなのですがブームを起こした90年代どういう時代だったか思い出して見ます。
その前に僕の映画遍歴を少し辿ってみようかと。
小学生の頃は80年代ハリウッド映画全盛でそれこそE.T.やバック・トゥ・ザ・フューチャー、グーニーズなど、邦画ではAKIRAや子猫物語など観に行った記憶あります。そんないったって普通の少年が中学に入ってすぐ嗜好を左右する事件が起こりました。
世の中バブル真っ盛りの頃、大きなTVへ買い替えによってお下がりになった古いTVが自分の部屋のクローゼットにしまわれるという思春期の少年にはなんとも誘惑をかり立たせる出来事がありました。当然ながら夜中にこっそりTVのコンセントを刺し、光がもれないように布団で洞窟を作ってイヤホンを挿してギルガメッシュないとをこっそり見たり、そんな時に出会ってしまったのがCINEMAだいすき!という映画番組でした。
初見は緑のロングヘアーの美少女が光合成しないと生きていけないという謎のSF邦画を放送していました。ギルガメッシュないと後の洞窟の中の僕はこの粗めな画質で見てはいけないものを見ているなんともいえない非現実感となんだか不思議な陶酔感を感じてました。
深夜の午前2時台から放送のそれは普通の映画番組ではないラインナップで、
例に上げると、「SF再考」「異常心理学入門」「ソビエト映画シリーズ」「フランス映画フェスティバル」「アジア映画特集」「ルイス・ブニュエルの世界」「小津そして あるいはヴェンダース」「カメラという身体~ゴダール/原将人/C.ドイル」
見て分かる方は通じると思いますが完全にミニシアターの特集ラインナップです。
それだけじゃなく、いまやサブスクでもレンタルでも見られない邦画インディー映画やC級ホラー映画、幻の映画がTVで無料でやってたんです。
CINEMAだいすき! はご親切にその映画の始まる前に国や時代背景、監督の繋がりなど字幕で説明してくれてまるで映画の講義を受けているかのような番組でした。
ドハマリしてしまった僕は見終わると朝の4時とか5時になっていていつも寝不足で学校では居眠り少年になったのは言うまでもありません。
そんなCINEMAだいすき!学校で映画を学んだ僕はその後インディーズ邦画にハマり映画制作を志します。そんな中、大学生の頃にミニシアターブームが巻き起こります。
ミニシアターの盛り上がりは80年代後半から始まってるのですが特に最盛期と思われる90年代中盤から後半の日本での封切り年をwikiで調べてみると(正確にはミニシアターじゃ無いのも含まれてるかも)
青いパパイヤの香り,トリコロール,オートバイ少女,BLUE,時の翼にのって,キカ(1994)エドワード・ヤンの恋愛時代,レオン ,愛情萬歳,プリシラ,デッドマン,BeRLiN,MEMORIES ,恐怖分子,PiCNiC,天使の涙,Helpless(1995)KIDS,アンダーグラウンド,スワロウテイル,カップルズ,(1996)熱帯魚、悦楽共犯者(1997)鬼畜大宴会,ラブ&ポップ,ラヴソング,MIND GAME,パーフェクトブルー,ねじ式,初恋,ポルノスター,ガンモ,JUNK FOOD,ラブゴーゴー(1998)メイド・イン・ホンコン,ラン・ローラ・ラン,バッファロー'66,運動靴と赤い金魚(1999)ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ,ひかりのまち,マルコヴィッチの穴,ヤンヤン 夏の想い出,ダンサー・イン・ザ・ダーク,ヴァージン・スーサイズ(2000)
みていて気がついたんですが、製作国がほんとに様々。
イギリス、ドイツ、フランス、スペイン、ポーランド、ユーゴスラビア、チェコなどヨーロッパ映画、日本、台湾、香港、ベトナムなどアジア映画、他、オーストラリア、イラン、インドなどなど。
今思えば配給会社や映画館の努力で様々な国の映画が観られたんだなと思います。
あとこういった各国に興味を持つきっかけになったのは時代背景にもある気がします。
バブルが崩壊した後、職につけなかったいいわゆるロスジェネ世代は円高の影響なのかアジア、東欧など比較的安かった国へバックパック旅が流行しました。(僕もその一人です)地球の歩き方(旅行本)電波少年など(TV)の影響もあった気がします。そんな様々な国に興味を持ったこの頃に台湾旅行に行ったからエドワード・ヤンに興味を持ったり、はたまたヤン・シュヴァンクマイエルが好きでチェコにいったり。偶然にもこのミニシアターのブームも重なったのでは?なんて思いました。
ミニシアターってたとえば、大きい本屋さんではなく店主が趣味が出ている小さな本屋さん、もしくは小さなセレクトショップな感じですかね。そこに行けば好みの映画を教えてくれる。
アメリカインディペンデント映画や60年代のフランス映画のリバイバル上映も盛んに行われてました。
映画も服も本もそれぞれの個人的嗜好で好きになると思いますが、偶然出くわす興味みたいな事や、その入口自体の選択が狭くなるのはもったいないなと。海外旅行も実際行くと感じ方が違うように映画も映画館で観るとまた感じ方が違ったりするのでミニシアターは無くならないでほしいなって思いますね。