クイーンズタウン序章

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クイーンズタウンはニュージーランドの南島の南部に位置する国際的なアウトドア観光のメッカです。冬は周辺のスキー場(Coronet peak, Remarkable, Cardrona, Mt. Huttなど )の利用者で賑わい、グリーンシーズンはマウンテンバイクはもちろんハイキング、ホースライディング、キャンプ、バンジー、ジェットボートその他無数のアクティビティをするにあたっての施設、窓口が集中しています。湖畔のリゾートとして、アウトドアを目的としていない旅行者も多く、そういった人のための宿泊施設、飲食店、娯楽施設なども非常に充実しています。ちなみに、大橋巨泉が作ったお土産屋さんもあります笑

年間を通して多くの観光客が訪れる町として、ここ10年で大きく成長しているので、レセプショニスト(各種受付係)、ハウスキーピング(ホテルの室内清掃)、飲食店のスタッフ、建設作業員などの比較的特殊スキルの必要ない分野の求人で常に人不足なので文字通り世界各国の若者がこぞってワーキングホリデーを利用して滞在していることから、行動的な若者が世界中から集まっていて非常に活気のあるリゾート地です。スキルや英語力がそこまで必要とされない仕事が余っているので、他の都市と比べて旅行目的のみに限定されないワークビザの取得を目的とした南米やアジア圏の若者が集まりやすい傾向があります。町を歩いていてもKiwi(ニュージーランド人)に会うのが難しいほど。

自分は当時そういった若者が集まるシェアハウス(25人収容)にずっと住んでおり、恐らくのべで言うと100人弱の多種多様な背景を持つ人の状況を見聞きしていたので、マウンテンバイクに限らず一般的なクイーンズタウンのイメージがつかみやすかったです。

さて、マウンテンバイクに話を戻しますと、”マウンテンバイカー”の目的地になるような場所は当然いくつも存在しており、クランクワークスが開かれるロトルアにあるものと同じ系列のSkylineというゴンドラアクセスの山上リゾートが運営しているQueenstown Bike Park、世界的な映像作品にも頻出する有名なダートジャンプスポットGorge Road Jump Prark、上述のCoronet peakに位置するクイーンズタウンのアイコン的なトレイルRude Rock、町中からゴンドラを乗り継いで行けるBen Lomond山にあるバックカントリートレイル、公共のジャンプとしては世界最大級のサイズを持つDream Trackを有するWynyard Bike Parkなど、あげだしたらきりがないほどです。

その他にも、”一般観光客”向けの設計で地元住民の生活の道としても活用されている(ここが結構重要だと思うので後でまた書きます)Queenstown Trailがあります、分かりやすく表現するとこれは「ポタリング」向けトレイルとでも言いましょうか。

これらの”マウンテンバイカー”向けのトレイルと”一般観光客”向けのトレイルはそれぞれ運営組織が違っていて、それぞれのトレイルが持つ顧客と将来のビジョンも異なるようですが、相互に協力関係にあるようです。

”マウンテンバイカー”トレイルの管理運営を行っているのはQueenstown Mountain Bike Club(QMTBC)で、マウンテンバイカー専用のトレイルの作成計画、整備、造成、地元飲食店などとコラボしたイベントの実施を行っていて、組織の人もマウンテンバイカーです。こちらはイメージしやすいと思います。

一方”一般観光客”向けのトレイルの計画、造成を指揮しているのはQueenstown Trail Trustという非営利の組織です。この組織の作るトレイルはテクニカルに山を駆けるトレイルよりも比較的平たんさを保たれている幅広のシェアトレイルで、一般観光客がレンタルバイクを利用して景観を楽しんだり、散歩をしたり、住民が通勤通学で利用したりするトレイルです。

この二つの組織は共にQueenstown Lake District Council(町の評議会)の承認のもとで、トレイル造成の計画作成、予算申請などを行っているようです。自分の中では二つの組織の印象がそれぞれ全然違うので、この二つの組織の関係性もすごく気になるところ!

普段の生活の中で観察していても明らかでしたが、実際にそれぞれの組織が行った現地での利用者への聞き取り調査にもボランティアとして参加した結果、マウンテンバイク利用者の中でも客層の違いがはっきり出ていたのが印象的でした。

Queenstown Trail Trustの運営しているQueenstown Trailは、ニュージーランド政府が実施しているニュージーランド各地を結ぶ長距離トレイルネットワーク「Ngā Haerenga New Zealand Cycle Trails」の一つとして登録されているクイーンズタウン周辺を結ぶトレイルネットワークです。

この「Ngā Haerenga New Zealand Cycle Trails」の目的を簡潔に記すと、観光資源としてのトレイルの整備による各自治体での雇用の創出と住民への自転車利用の促進による健康増進と交通混雑の緩和、にまとめられると思います。

Queenstown Trailは他の都市と比べて観光客数が圧倒的に多く、観光客によるレンタルバイク(特にEbike)利用、クイーンズタウンを起点としたNgā Haerenga New Zealand Cycle Trailsをつないだ自転車旅行に係るサービス業の創出、要所要所での飲食店の利用者数の増加などはとても多いようです。

それに加えて、町の大きな課題でもあるクイーンズタウン空港(フランクトン)から町の中心地への一本道(トレイルも並行して走っている)の交通渋滞緩和への解決策の一つとして住民に推進されているBike To Work(チャリンコ通勤、通学)に寄与するとして期待もされているようです。

これは町として課題とされている問題に対してトレイルを通すことによって具体的に解決策が提示できる分かりやすい例だなと思いました。トレイルがあること、自転車利用者への環境を整えることが町の課題の解決への取り組みとして認識されていくことは、他のトレイルを作るにしても、コアなマウンテンバイカー向けのトレイルを作るにしても印象が良いのかなと。

マウンテンバイクをやらない人に対してトレイルを作ることに対して首を縦に振ってもらうためには大事な要素かと。

クイーンズタウンのトレイルに関する2大組織の存在を理解するだけでも、100「へえ~」行きそうなほど面白いのですが(古いか笑)

さらにその背景を掘り下げていくと沼にハマりそうになるほど奥が深いです。ニュージーランドのアウトドアツーリズムに関する制度や教育のありかた、保険制度(ACC)、産業構造からはたまたネイティブ文化とのかかわりまで、平野先生のクライストチャーチ調査に同行させてもらった時により分かったことも多いですが、生活している中で「こうもバランスが取れているようにみえるのはなんでだろう」ととても興味がわくのでした。

次回に続く

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