感染性腸炎と言っても... ウイルス? 細菌?
この時期気をつけたいのが細菌性腸炎ですね。市中において比較的よく見る細菌感染症です。細菌性腸炎の多くは対症療法のみで軽快するので、抗菌薬を投与する例は限られるみたいですが、やはり正確な診断は必要です。さすがに大学病院では見ないですかね??
大腸炎とはなんぞや
感染性腸炎と一口に言っても原因はいくつかあるわけで、多いのがウイルス性腸炎(前回参照)か細菌性腸炎です。病原微生物が口から入って、腸管に感染します。サルモネラ、キャンピロバクター、0-157などがよく知られてます。
大腸炎といえば浮腫ですが、なぜそのようなエコー像にあるのか疑問に思ったことはありませんか?始めたばかりの頃、なぜ粘膜下層が肥厚するのか疑問でした。
細菌性腸炎のエコー所見
では、細菌性腸炎のエコー所見を確認していきましょう。腫れるのは上行結腸など右側が主体の右側結腸炎型です。Radiopeadiaさんは次のように述べています。
日本語にしますと、1) 均一な壁肥厚、2) 粘膜下層エコー肥厚、3) カラードプラにて壁内血流が増加することがある。といったところがUS所見になります。ほぼ同意ですが、個人的には3のカラードプラは特に気にしません。細菌性腸炎においてカラードプラ血流で診断が変わるこということは経験したことがありません。血流増加は炎症の強度と関係するとは予想できるので、ドプラの性能次第では今後何か言えるかも知れませんが、今のところmay beです。
一番重要なのが、第3層主体の壁肥厚を呈するということです。第3層とは何かと言いますと、「粘膜下層」でしたよね? では、第3層が肥厚するとは何を意味するのでしょうか?古い論文ですが、解釈の変更はないはずなので、引用します。
大切なところなので分かりやすく訳しますね。
"粘膜下層(高エコー)の肥厚は、粘膜下層の浮腫または粘膜下層出血に関連した急性の疾患過程を示すことが示唆される。急性炎症/感染のプロセスが毛細血管透過性の亢進を伴う血管拡張を引き起こし、その結果、緩く充填された粘膜下層に蛋白性液体が余分に滲出することである。これらを反映し、超音波反射率が増加することで、粘膜下層が高エコー像として厚く描出される。"
ということです。要は全て急性炎症の課程で生じる変化であり、主戦場が粘膜下層であるということです。僕は粘膜下層のloosely packedという表現がすごくイメージしやすいと思いました。
なので、こういった病理組織学的所見を反映して、1) 均一な壁肥厚、2) 粘膜下層エコー肥厚、3) カラードプラにて壁内血流が増加するわけですね。
個人的な感想
食歴は当然重要なポイントになるのですが、患者さんに聞いてもはっきり覚えていないことの方が多いと思います。
罹患範囲や強度で病原細菌を予測できるかというところでは、EHECを除いては難しいと思いますし、特異度は低いと思うのでそれをする必要があるのかは議論があると思います (例えばキャンピロ、サルモネラ、病原性大腸菌の区別をエコーでつけれるかという話です)。
画像だけで言えば、鑑別疾患としては、IBD(潰瘍性大腸炎、クローン病)、虚血性腸炎などが挙がります。
まとめ
今回は細菌性腸炎のお話でした。「なんでそうなるのだろう?」と疑問に持つことで、どんどん面白くなっていくんじゃないですかね😀これが原因で、鳥肉を食べれなくなった人がいるとかいないとか、笑。
by みけ