見出し画像

【社内報の作り方】それ誘導尋問です

コメント取りをしていて、こちらの思い通りに話してもらえないってことが多いと思います。でも考えてみてください。あなたが考えていることを相手が話すなら、そもそもコメントなんてとらなくていいのです。でも多くの編集者は「誘導尋問」で記事を作りがちです。今回は、誘導尋問から考える社内報取材のテクニックを考えたいと思います。

欲しい答えがあるから・・・
例えば、成績優秀者にコメントをもらうとき「来年も受賞できるよう頑張ります」みたいな前向きなコメントを期待して話を聞くと思います。しかし「偶然獲れただけです。」みたいなつれないコメントしかくれない場合、たいていの人は「そうはいっても、何か工夫されたことはあるんじゃないですか」「うれしい気持ちはないですか」など、ほしいコメントに導いていくような質問をしがちです。事前原稿という言葉があるように、編集者は特に、年中行事の記事を作成する場合、事前に想定した原稿を作成していることがあります。この感覚を引きずっていると、こうした誘導尋問をしがちで、予定調和の記事を作って満足してしまいます。

気になるワードを深堀
では「偶然獲れただけです。」と言われた場合、どう質問を切り返せばいいでしょう。この時、頭から捨てるべきは「前向きな答えが欲しい」という願望です。これができれば、意外に「つれない答え」ではなく「意外で面白い、オリジナリティのある答え」と感じられるようになります。たとえば「偶然ということは、狙っていなかったということですか?」「偶然というだけあって、ものすごく驚かれたのではないですか?」など「偶然」というそっけないけれど、とても意外なキーワードは深堀対象です。この時、その答えがどうなるかは気にしません。とにかく、気になる、引っかかる言葉の真意を聞くようにしましょう。段々と本音が引き出されてくるものです。そしてその先にオリジナリティある答えが待っています。

自分が感じたことを書きたいときは
コメントですべて表現するのは難しいものです。例えば科目だけど、やる気を内に秘めたような感じの方の、その良さを伝えたい!と思っても、その人のコメントでは「頑張ります。以上!」みたいになってしまい、そこに漂う空気やニュアンスは伝わりません。こういった場合、ルポ形式をとって、取材者であるあなたが感じたことを、そのまま書けばよいのです。「「頑張ります」と話すその眼からは、言葉に表れない強い意志や覚悟を感じました。」とすればどうでしょう。あくまでも編集者の感想という形をとりながら、編集者が伝えたかったことが表現できるのではないでしょうか。

予定調和は面白くない
言外の情報をどう伝えるか、こうしたテクニックを知っているだけで、前述の「誘導尋問」が無くなり、予定調和から脱却することができます。ひいては、社内報の記事に「発見」が多くなり、より面白い誌面になることでしょう。

今回の1冊

ウクライナ民話
エウゲーニー・M・ラチョフ絵
うちだりさこ訳
てぶくろ

 おじいさんが落とした手袋に小動物たちが住み始める。そこへオオカミがやって来て…。ここまで読むと、あとの展開は想像つくかと思いますが、実は全く予想外の常識を裏切る展開に。予定調和を打ち破る、牧歌的なファンタジー。今読みたいウクライナ民話。世間の事情を知らない4歳の娘が夢中になる一冊。増刷を重ねる名作。

Connecting the Booksは、これまで培ってきたクリエイティブディレクター、コピーライター、編集者としてのノウハウを公開するとともに、そのバックグラウンドである「本」のレビューを同時に行うという新たな試みです。