デザイナーの成長を可視化する社内ポートフォリオはじめました
こんにちは。クックパッド デザイン戦略部 アートディレクターの杉田です。今期からデザイナー統括マネージャーというポジションに就かせてもらったので、アートディレクターとしてではなく、デザイナー統括マネージャーとしての活動を書きたいと思います。
社内に在籍するデザイナーの実績と成長を全社員が見ることができる社内限定公開の「All Designers Portfolio(以下ADP)」という仕組みを作りました。
デザイナーのポートフォリオというと、主に就職/転職活動用にポートフォリオ自体をデザインし実績をアピールするものをイメージしますが、今回のポートフォリオは目的が大きく異なります。
当たり前ですが、転職してほしいわけではありません。
きっかけ
クックパッドでは、年に1度全デザイナーを集めた合宿を実施しています。(昨年の様子はこちら)。
今年もオンラインで合宿を実施したのですが、その中でテーマの1つであった「デザイナーの能力をさらに高めていくにはどうしたらいいのか?」という議論の中からADPのアイデアは生まれました。
ADPの目的
いかにデザイナーの能力をさらに高めていくためのものにできるか、
ソリューションスケッチ(上記画像)の時点でも書いていましたが、下記のような機能を設定してみました。
現在位置確認
リードデザイナーや、異なる事業部のデザイナーなどのADPを見ることで、自らが手掛けるデザインのクオリティはもちろん、施策の範囲や思考の深度について比較できるので、現時点で自分は何ができて、何ができていないかの確認ができる。
社内PR
デザイナーだけでなく全社員が閲覧可能なので、接点が少ない社員に対しても、自分ができること、得意なことなどをPRすることができる。
自己分析
継続的にポートフォリオを更新していくことで、過去の自分を振り返ることができるので、習得したこと、苦手なことなどを分析できる。
評価面談用の資料
評価面談が期末にあるのですが、そこでのプレゼン資料としても使用できる。
これらを踏まえ、下記のような目的を設定しました。
ADPの目的
クックパッドで活躍する全デザイナーのこれまでの実績を見ることで、
どのような施策を手掛けているか、
どのようなアイデアで課題解決したかなどはもちろん、
その人にとってどんな挑戦を行ったのか、
どんな成長があったのか、を知ることができる。
同時に、期毎に更新をすることで、
定期的に自身を振り返る機会を持つことができる。
それらにより、周囲や会社へ影響をおよぼすことができるデザイナーへと
成長することができる。
ADPのルール設定
目的まで設定した段階で、というよりソリューションスケッチの段階からかもしれないですが、ADPの作成はデザイナーへの負担が大きいだろうな、という不安も感じていました。
その負担をできるだけ解消することを念頭に、目的を達成できるよういくつかのルールを設定しました。
ADPのルール
・上期/下期評価の個人評価入力期間の〆切までに、ADPも提出する
・評価面談ではADPを使用しながら説明をする
・どの実績を掲載するかの基準は「自身がチャレンジした案件」であること
・可能な範囲で入社前の実績も掲載する(形式自由)
・仕組みづくりなど、具体的なアウトプットがない事例も当然掲載可
・基本的にスライドテンプレートに準じて実績を掲載。
・表紙/扉の背景メインカラーは好きな色を設定(一覧時の差別化)
このルールのポイントは、
ADP自体のデザインに個性は必要ないので、制作時にできるだけ余計なカロリーをかけないで済むよう、テンプレートを用意することと、評価時での使用を必須とすることで、継続的に運用させることです。
ADPのテンプレート
前述のとおり、このADP自体にオリジナリティは求めておらず、ページデザインすることへのカロリーは極力かけずに、内容を簡潔に伝えることができるテンプレートを目指しました。
ADPのテンプレート
・表紙は社内での一覧性を考慮して、氏名をタイトル扱いとする
・差別化させるためキーカラーは自由に設定可能
・実績ページの左ブロックで詳細説明/右ブロックで実績掲載
・デザイナー以外もストレスなく閲覧できるようGoogle Slidesを使用
左ブロックの詳細説明は下記のように項目を設定しました。
【課題と解決策】
どのような課題を、デザインでどのように解決したか。
【成果】
課題解決をしたことによって得た成果/効果の具体的内容。
【成長】
あなたにとって、どのような挑戦をしたのか、
それによりどのような成長があったか。
【クレジット】
プロジェクト全体の中で、どの部分を担当したか明確になるように、
可能な範囲で関わったメンバーも記載。
(ex.オーナー/ディレクター/デザイナー/外部パートナーなど)
【その他】
他に特筆すべき内容がある場合は項目増は可。
ここでのポイントは、ルールでも設定したように【成長】(どのような挑戦をしたのか)を記載することです。
【成果】は施策やプロジェクトが設定していた目標をどの程度達成できたかの絶対評価になると思います。当然情報としては重要ですし、必要な項目ですが、一概には言えませんが、個人だけの結果でない場合が多いはずです。
ただ、【成長】が重要だと思うのは、そこに以前(前期)との差分はあったのか、どれだけ主体性をもって動けたか、他者ではなく過去の自分との相対評価になると思うので、そこに記載される内容こそが今回のADPの目的である「デザイナーの能力をさらに高めていく」ために必要な【成長】であるはずだからです。
仮に成果があまりでていない実績だったとしても、個人としての挑戦や過去の自分との差分があれば、成長として記載してほしい、
逆に個人として、挑戦も差分もないのであれば、目的に即していないため掲載しない、という考え方でした。
ADPの作成
準備が整ったので全デザイナーへ簡単なオリエンを行い、ちょうど良いタイミングだったので
・上期/下期評価の個人評価入力期間の〆切までに、ADPも提出する
・評価面談ではADPを使用しながら説明をする
を適用し、短時間ではありましたが作成に入ってもらいました。
ただ、通常業務が忙しい中ADPを作成することは、テンプレートを用意したからといって、負担がゼロになる訳ではないので、みんな正直大変だったと思います。
さらに【成長】の項目において、「これは成長といっていいのか」「成長した点が書けないから掲載しないほうがいいのか」などいくつか質問があり、多少の混乱は生じさせてしまいました。マネージャー側でも、【成長】観点だけで掲載を判断させてしまってよいかの議論はありました。でも冒頭でお伝えしたとおり社内限定公開なので、それが評価に必ず繋がるかどうかは置いておいて、「自分がどう捉えているか、実感したか」の自己評価を正直に書けばいいのではないか、と判断し、内容を変更することなく、デザイナー全員にADPを作成してもらいました。
とはいえ、全員はじめての作成だったので2人いる統括マネージャーがそれぞれ常駐するZoom部屋を用意し、1時間×4回、ADPを作成しながら不明点があったらその場で聞ける「もくもく会」なども開催しました。
ADPを使用した評価面談を終えて
実際、各自が制作したADPを使用した評価面談を無事終えることができました。実績といっても、UIはもちろん、グラフィック、仕組みなど様々ですが、評価者視点の感想として、統一のテンプレートのため読み解くカロリーが少なく、且つポイントを絞った項目を記載してもらっているので、要点がしっかり伝わってくることが多かった印象です。まだ初回なので今年度の実績のみの掲載でしたが、(もちろん詳細は書けないですが)みんなそれぞれ成長ポイントと向き合って書いてくれていたので、今後継続していくことで【成長】の変化が顕著に現れそうだな、と確信に近い実感を得ることができました。
その他、社内の評価に関わった関係者や、デザイナー組織以外の人からも様々な声をもらいました。
・全員同一フォーマットだと実績がわかりやすい
・ADP共有会やりたい
・ADPで面談やってみたら、みんな成長して見える
・瞬間のスナップショットじゃなく蓄積させていくのが
自分にとっても周りにとってもよさそう
・「成果」と「成長」が混在してしまっているケースがあった
・「成果は出てないけど成長してる」みたいなところが書けるのはよい
さいごに
ADPを実行できたことは、サポートしてもらった方々はもちろん、この年末の忙しいなか、しっかりとADPを作り上げてくれたデザイナーみんなのおかげです。
今回、評価直前だったということもあり、「評価のためのADP」というバイアスが生じてしまっていたのも事実です。改めて設定した目的に立ち返り、今後も改善を加えながら、継続させていきたいと思います。
このようなクックパッドのデザインや、組織での取り組みなど、様々な領域や視点での話しが見れるCookpad Design Magazineも是非のぞいてみてください!