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絵画歴史のイノベーション その10新しいアートの世界「猪子寿之(チームラボ)」

前回のゲルハルト・リヒターを紹介して絵画歴史のイノベーションは終了と考えていたのですが、先日、豊洲にあるチームラボの作品を観て衝撃を受けたので、第10回目として紹介することにしました。

これまでチームラボの作品は、水族館なり、いろいろな場所でプロジェクションマッピングの作品として観てきました。当時は、ちょっとした商業的なイベントであり、アート作品としては観てきませんでした。なんか面白いデジタル商品だなって感じでした。

しかし、この豊洲のチームラボプラネッツを体験するとその考えが一転します。かなりの衝撃でした。現代アートは本当に観る方も訓練しておかないと、そのすごさが分からないというところだと思います。修行不足でした。

チームラボプラネッツを体験したこともない人もいると思いますので、まずはチームラボ公式サイトの映像を見てもらいましょう。

これで凄さが伝わったのかどうかは分かりませんが、チームラボの代表・猪子寿之さんの考えとしては、「ボーダレス」がキーワードだと思います。

チームラボの作品は絵画作品ではなく、デジタル作品なのですが、それぞれの作品同士の境界があいまいです。また、鑑賞者と作品の境界があいまいです。鑑賞者が作品に包含されてしまいます。猪子さんはそのことを「超主観空間」と呼んでいます。

昔で言えば浮世が風景を平面でとらえたイノベーションがあり、さらに村上隆が時代や文化などもすべて同列(平面)でとらえた概念「スーパーフラット」(村上隆のスーパーフラットについては第8回のこちらをご参考ください。)を提唱したように、それに匹敵するような新たな概念が「超主観空間」だと思います。

猪子さんの取組みのどこが新しいのかを羅列しておくと、


鑑賞者とアート作品の境界を無くした

これまでのアートは絵画作品などを観ること自体にお金を払い、場合によっては作品を売買していました。猪子さんは鑑賞者とアート作品の境界を無くし、鑑賞者が作品の一部となり、鑑賞者が作品を体験することで得られることを商品化したことがすごいですね。だから、作品を売買するという発想がありません。
また、アート作品自体も定常的なものではなく、常に移ろいます。例えば、鑑賞者が水面を歩き、その水面を鯉が泳ぐ作品があるのですが、その鯉が鑑賞者に当たると花になるのです。つまり、鑑賞者の動きによって、鯉の動きも変わるのです。そういった仕組みなども観察することで分かってくるのですが、観察という堅い話でもなく、ずっとその空間でいることで理解できます。そのプロセス自体も作品の一部なのでしょう。

体験自体を商品にした

先にも上げた通りなのですが、通常アート作品はその作品自体(例えば、絵画や彫刻)に価値があり、それが売買されます。しかし、猪子さんの作品は鑑賞者が客観的にその作品外部から観るとあまり価値がなく、没入することで価値が発揮されます。つまり、作品自体を売っているのではなく、鑑賞者の体験を商品にしたところがこれまでのアート作品とは全く異なるものと言えるでしょう。これまでのアートは悪く言えば一部の富裕層向けと言えなくはないのですが、この作品は入場料は必要ですが、すべての方に開放されたものと言っても過言ではなく、資本主義社会に対する投げかけとも言えなくないと思います。

デジタル時代における人間性への訴えかけ(五感をハックした)

体験「超主観空間」ということで言えば、ディズニーランドの世界観もゲストに没入感を体験させてくれると思います。(この辺がUSJとディズニーランドの違いなのでしょうが。)ディズニーランドとの違いは、デジタル時代における人間性とは何なのかを作品を通じて問うているように思います。猪子さんの言葉で「五感をハックする」とありますが、その感覚を鑑賞者が作品を通じてどのように受け止めるのかだと思います。
また、「身体の境界線をなくさせたい」という発言もあり、鑑賞者が作品に溶け込むことで、自分自体の感覚も失われることから、何か新しい気づきを得てもらいと考えているのだと思います。
我々現在のデジタル時代を生きるなかで、ものすごいインプット(情報)があふれるなかで、人間性として変わらないものは何か、を考えるきっかけにするのは大変素晴らしいことだと思います。いや、猪子さんすごいよ(笑)

これまでの学習価値観を転換させた(「立体的で身体的な知」への転換)

これまでの学習は教科書(アートで言えば絵画)などの平面的なものを言葉や画像で勉強してきたわけですが、チームラボプラネッツではデジタル空間で体験的な価値観に変えたわけです。
私とかは特に書籍によるインプットが多いわけですが、チームラボプラネッツの体験を受けて、改めて体験的な価値観が重要だと感じました。
猪子さんと対談した宇野常寛さん(この人もすごい人)の言葉で言えば、「平面的で言語的な知」から「立体的で身体的な知」に切り替えることへの挑戦ということになります。
デジタルアートだからこそ、よりその体験をコントロールしやすくなったとも言え、デジタルアートの有用性を示していると言えます。

さあ、自分自身も村上隆が提唱した「スーパーフラット」、猪子寿之が提唱した「超主観空間」のような概念を生みだすべく、アートに取り組んでいきたいと思います。

最後に、チームラボプラネッツを体験したときの写真を張り付けておきます。

チームラボの世界への入り口
ふわふわの床
本当にきれくて没入してしまう空間
鑑賞者に当たると花になる鯉
水滴とアート
ボールで遊ぶ
ごろんと寝そべって「超主観空間」に没入
リアルなお花
最後の締め

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