Simon & Garfunkel / Bridge Over Troubled Water
2004年7月10日に他のサイトへ掲載した原稿を加筆修正しました。==================================
サイモン&ガーファンクルが時代の転換期を見事に表したアルバム。
ベトナム戦争は未だ続いているが、若者たちが掲げたラブ&ピースは何処かへ消え去ってしまった。
外の世界との疎外感が増幅していた時代だからこそ、このアルバムは渇いていた人の心に、真水のように染み込んだのだろう。サイモン&ガーファンクルは詩人のように時代を切り取り、それを見事なメロディーとクールなヴォーカル・ハーモニーで歌いあげた。
冷えきった世界から届く暖かい声が印象的なタイトル曲《Bridge Over Troubled Water / 明日に架ける橋》は本当なら “洪水に架かる橋” と正確に訳しておくべきだった。
孤独に苛まれている貴方に対して、サイモン&ガーファンクルは洪水に架かる橋のように身を横たえて、音楽による救いの手を差し伸べようとしている。
心に残る素晴らしい歌は、いつも簡単な言葉で歌われる。
また田舎からニューヨークへ出てきた少年が都会での生活を綴る《The Boxer / ボクサー》では残響の奥行きの中で孤独な人の心が映し出される。
対戦相手に痛打され、怒りと恥に苛まれ、リングから立ち去ろうとするボクサー。しかし彼は立ち去ることが出来ず、そこで戦い続ける・・・。それは時代の奔流に飲み込まれ、そこから逃れようとするが逃れられない我々のことを歌っているのだろうか。
これはサイモン&ガーファンクルの最高作であり、こんな素晴らしいアルバムに出会える事は滅多に無い。聴く・聴かないは自由だが、聴かなければ人生で確実に損をするだろう。
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