Van Morrison / Moondance
2004年7月20日に他のサイトへ掲載した原稿を加筆修正しました。==================================
北アイルランド・ベルファスト出身のヴァン・モリソンは1967年に大西洋を渡った。
1964年にブルース・ロック風のバンド、「ゼム」を結成し、ヒットにも恵まれたが、ヴァン・モリソンは1966年に脱退し、ロックの向こう側にある、もっとアメリカ的なものを探しに海を渡った。20世紀初頭、新たな生活を探し求め、アメリカへ向かったアイルランド移民のように。
それは自分の音楽スタイルを意図的に確立するためのものではなく、もっと自分を解き放つ為に、ソウル、ジャズ、ゴスペル、フォークなど、アメリカの底辺に流れる音楽の奥義(?)に触れる必要があったのかもしれれない。
そしてヴァン・モリソンは 『Astral Weeks / アストラル・ウィークス』(1968年)、『Moondance / ムーンダンス』(1970年)、『His Band & Street Choir / ヒズ・バンド・アンド・ストリート・クワイア』(1970年)、『Tupelo Honey / テュペロ・ハニー』(1971年)と名作を連発する。
これらのアルバムの底に流れているのは、滲み出る色合いや漂う匂いは各アルバムごとに異なるが、アーシーなソウルであったり、ジャズやゴスペルであったり、とてもアメリカ的なものだ。
『Astral Weeks / アストラル・ウィークス』に漂うのが思春期的な”陰”の雰囲気であるなら、『Moondance / ムーンダンス』からは、そのタイトルとは反対に、月の冷たさではなく、太陽の暖かさと輝きが感じられる。ヴァン・モリソンが脂の乗り切っていた時代の、見事な出来のアルバムだ。
アーシーでソウルフルに歌い上げる《And It Stoned Me》、前作の流れを汲むジャージーなタイトル曲《Moondance》、そしてゴスペル風味溢れるバラード《Crazy Love》。これら最初の3曲を聴いただけでもヴァン・モリソンの”一番絞り声”をたっぷり堪能できる。
精神はロックであるが、身体はジャズ、ソウルというヴァン・モリソンが創り上げたスタイルは80年代以降、スティングなどに影響を与えた。
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