Camel / Mirage
2004年4月14日に他のサイトへ掲載した原稿を加筆修正しました。==================================
遅れてきた英国産のプログレッシブ・ロックバンド、キャメルがそれなりの知名度を得たのは、このセカンド・アルバムから。
キャメルがデビューした1973年、ピンク・フロイドは『The Dark Side of the Moon / 狂気』をリリースした後、長い沈黙期間に入る。そしてキャメルが『Mirage / ミラージュ(蜃気楼)』をリリースしてから約6ヶ月後、キング・クリムゾンは第1期の総決算的なアルバム『Red / レッド』をリリースし、直後に解散する。
プログレッシブ・ロックの二大巨頭バンドが、それぞれの代表作を作り終え、職務(?)を全うした時期と、キャメルが本格的な活動を開始した時期は重なる。
そんなキャメルは先人達の築いたスタイルを継承しただけの中堅プログレ・バンドと言えば、あまりにも厳しい見方かもしれないが、それは事実だと思う。
変拍子や転調などを多用した長尺の曲作りで、ヴォーカルよりも演奏力・技術力を重視、曲中ではインストゥルメンタル部分が多くを占め、バンドにはオルガンやピアノだけでなく、シンセサイザーやメロトロンなどの電子楽器も弾きこなす、腕の立つキーボード奏者が参加している、等々が多くのプログレ・バンドに共通する特徴だ。
『Mirage / ミラージュ(蜃気楼)』では上記のスタイル的な特徴が継承され、消化されている。アルバム中で一番の聴きどころは、"Encounter" - "Smiles for You" - "Lady Fantasy" と3つのパートで構成されている《Lady Fantasy》。アルバムの最後を飾る約12分の曲だ。
ド派手で重厚なイントロから始まり、アンドリュー・ラティマーの哀愁漂う、まるで演歌調のギターからピーター・バーデンスの情感溢れるキーボードへと続くこの曲では、激しさの中にもメロウな美しさが響く。
プログレのスタイルだけが継承され、自己批判性といったプログレ本来の精神性は継承されず、このアルバムには含まれていない・・・云々などと屁理屈を捏ねず、未だロックの荒々しさを残したキャメル流のプログレ様式美と独特のサウンドを率直に味わい、楽しむべき一枚だろう。
キャメルはその後もポール・ギャリコの小説「白雁」をベースにした全曲インストゥルメンタルのコンセプト・アルバム『Snow Goose / 白雁(スノー・グース)』や『Moonmadness / ムーンマッドネス』など、後にそのスタイルは”叙情派プログレ”と呼ばれるようになる、好アルバムを連発する。
And More...
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?