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こじれた話 #014 《屁理屈に対する屁理屈》

屁理屈とは?

簡単に言えば、筋の通らない理屈、つまり道理に合わない理屈のことだろう。

では何故アタマに"屁"が付くのか?

その理屈は筋が通らず道理に合わない。その理屈は胡散臭い=臭い=屁、みたいな流れで理屈の前に"屁"を付けて屁理屈という言葉が生まれた、という風にも考えられるが、これはあくまで個人的な推測で、そこには何の裏付けもない。

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ところで"屁"とは世間的にどのように捉えられているのだろうか?"屁"がつく言葉から"屁"に対する世間の捉え方を検証してみよう。

屁理屈以外に"屁"から始まる言葉としては、

「屁でもない」
軽い軽い、そんな事は直ぐに出来る

「屁とも思わない」
大した事ではないから無視、無視

「屁っ放り腰(へっぴりごし)」
腰が軽くて不安定、肝が据わってない

「屁の突っ張りにもならない」
軽い屁すら防げないので何の役にも立たない

などが頭に浮かぶ。

これらの言葉から世間の"屁"の捉え方がある程度理解出来る。

世間的に"屁"は軽いもの・存在感がないもの・有用性がないもの、と捉えられているようだ。

キミは非武装ではなく屁武装。
その効力と有効性は万人が認めるところ。

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しかし"屁"の兄貴分(?)に相当する"糞"はどうだろうか?

"糞"または"クソ"は世間的には「凄く・大変」みたいな感じで使われているようだ。例えば「胸糞悪い話」「クソ不味い料理」などなど。

そして"糞"は"屁"より世間的には上位に位置されているようだ。

糞は目に見えて触れることの出来る固体であるから、気体である屁より世間に対するアピール度が高く、それが糞に優位性をもたらしているのだろう。

それに臭気性とその継続性でも糞の方が上だ。屁より強烈な臭気を放つ糞はその場に留まり続け、長時間に渡り周囲に臭気を放ち続ける。

しかし気体である屁はその場所に留まることはなく、その臭気はすぐにそこから消え去ってしまう。

妙な例えだが、屁は音楽のようなものだろうか?

我がご贔屓のジャズ・ミュージシャン、エリック・ドルフィーが遺作『Last Date / ラスト・デイト』に残した最後の肉声メッセージを思い出した。

When you hear music, after it's over, it's gone in the air. You can never capture it again.
音楽を聴き、それが終わったら、音楽は空中に消えてしまう。二度とそれを捉えることはできない。

何やら屁がジャズっぽくて、少しばかり高尚なものに感じられるようになった。

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以上の考察から導き出された結果は以下のとおり。

屁:軽めの否定の際に使える名詞兼形容詞
糞:かなり強めの否定の際に使える形容詞

注:糞は反対語として使われる場合もある。またカタカナ使用の場合も多いが、その使用方法に関しては明確が規定が無く曖昧だ。
例:「あの店のラーメンはクソ美味い!」
糞が反対語としてカタカナで使用された例分

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これからは筋の通らないレベル、道理に合わないレベルにより"屁理屈"という言葉を使うだけではなく、新たに"糞理屈"という言葉を使ったらどうだろうか?

以下は"屁理屈"と"糞理屈"が発生する可能性のある状況例。

要領のいい次男が頭のいい長男をコーラ一杯で買収し、難しい算数の宿題の一部を解いてもらった。それを見ていた母親が「ちゃんと一人で考えてしなさい!」と叱った時の次男の答え:

「先生は一人でしなさいと言ってなかったわ!」

この程度は屁理屈である。

要領のいい次男が頭のいい長男をプリンとアイスクリームで買収し、難しい算数の宿題を全て長男に丸投げした。それを見ていた母親が「ちゃんと自分でしなさい!」と叱った時の次男の答え:

「先生は自分でしなさいと言ってなかったわ!」

このレベルになると、"屁"を使わずに"糞"を使い、"糞理屈"という方が正しいだろう。

ひょっとしたら、すでに"屁理屈"と"糞理屈"を使い分けている方もいらっしゃるかもしれない。

そんな方には釈迦に説法だが、これから自分はその時の状況を判断しながら"屁"と"糞"をきっちり使い分けていく所存だ。

またその状況が"糞"レベルを遥かに超えている場合、糞の前にバリを付けた"バリ糞"という表現も存在するようだ。

しかしその状況が"屁"レベルを超えていても、屁の前にバリを付けることはなく、"バリ屁"という表現は存在しないようだ。

この辺りの微妙なニュアンスが現代日本語の難しさなのだろうか?

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つまらぬ屁理屈は、あほらし屋の鐘が鳴るまえに終えておこう。

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おまけの一曲はジャッキー&ロイの軽快なナンバー、《アンタ、ええ匂い!》

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