Janis Joplin / Pearl
2004年5月30日に他のサイトへ掲載した原稿を加筆修正しました。==================================
神よ、それはあんまりだ!
急にジャニスを連れて行くなんて!
これはジャニスの最後にして最高のアルバムだ。
ジャニスを支えるフル・ティルト・ブギー・バンドの腕前も確かで、さぞ彼女を盛り立てたのだろう。こんなバンドと一緒に歌うジャニスをライブで観てみたかった...
このアルバムを特徴づけるのは全体から滲み出るある種の寂寥感だ。それはジャニスの擦れたヴォーカルの向こう側から聴こえてくる。そこには胸を刺すような痛みと胸を締めつけるような苦しみが微量ながら潜んでいる。
きりっと引き締まったドラム・ソロから始まる一曲目の《Move Over》にしても、ノリのいい演奏の後ろから切なさがくっきり浮かび上がっている。明るさと開放感が漂う《Me & Bobby McGee》からでさえも同じものが微かに聴き取れる。そして最後の《Get It While You Can》で透明感溢れる、どうしようもない切なさはピークに達する。
So if someone comes along,
He's gonna give you some love and affection
I'd say get it while you can...
「あなたがそれを手に入れることができる間に・・・」 こんなに物悲しくもソウルフルなナンバーを私は他に知らない。ジャニスは自分の過去を見つめながら、そして自分の未来を察知しながらこの曲を歌っていたのだろうか。
私は中学3年生の夏、ジャニスがこのアルバムをレコーディングしている事を知った。高校受験が終ったら、真っ先にジャニスの新作を絶対に買おう。私はそれを楽しみにしていた。しかしジャニスはその年の秋、私の高校受験が終わる前に、突然死んでしまった。
高校受験が終わり、予定どおり志望校に合格してから、私が最初に買ったレコードがこのアルバムだった。
すべてが予定どおりだった。ジャニスがいない事を除いては。
合掌。
And More...
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?