見出し画像

Dollar Brand / Good News From Africa

Good News From Africa / 1974

2004年8月30日に他のサイトへ掲載した原稿を加筆修正しました。==================================
ダ~ン、ダランララ~ランとピアノが同じテーマを振子の様に繰り返す。
心はどんどんダラー・ブランドの世界へ引き込まれ、呪術的なサウンドがピグミー・サイズ状態だった感性を徐々にジャイアント・サイズへと拡張・膨張させる...
そんなダラー・ブランドを代表するソロ・アルバム『African Piano』は大好きだ。しかし『African Piano』の4年後、1973年12月10日にドイツで録音された『Good News From Africa』も大好きで、捨てがたい。何かの理由でどちらか一枚を選べと暴力的に迫られたら、後者を選んでしまう。
※『African Piano』は1969年10月にコペンハーゲンのJazzhus Montmartreでライブ録音されたが、リリースされたのは1973年3月。
『Good News From Africa』は南アフリカ出身のダラー・ブランド(ピアノ)とJohnny Dyani / ジョニー・ディヤニ(ベース)によるデュオ・アルバム。
ジョニー・ディヤニの朴訥とした歌声と掛け声、そしてゆったりとしたピアノとベースから始まる《Ntsikana's Bell》が流れ始めると、部屋の中はアフリカの草原の空気で満たされる。シンプルな演奏と腹の奥から絞り出されるような歌声には、都会人が遠い昔に失ってしまった、原初の生命力のようなものが感じられる。
徐々に高揚する曲と共に遺伝子の中で眠っていた原始の情報が目覚め、脳内細胞を活性化し、感性は先祖帰りを始める。すると目の前に見たこともない広大なアフリカの風景が広がり、小さなことにくよくよするのが阿呆らしくなってくる...
アフリカンなイメージを呼び覚ます曲ばかりではなく、ブランドが吹く素朴なフルートやベル、そこにディヤニのベースが絡む牧歌的な小曲《Msunduza》やイスラム教の礼拝の呼びかけとアッラーを讃える荘厳な《Adhan & Allah-O-Akbar》なども聴き逃せない。
ジャズ・テイストの強い《Good News / Swazi / Waya-Wa-Egoli》や《The Pilgrim》では『African Piano』と同質の、硬く黒檀色をしたダラー・ブランド独特のピアノ・サウンドを聴くことが出来る。それは南アフリカの鉱山で採掘されたダイヤモンドのように硬質だ。それは黒く光りながらぶつかり合い、パーカッシブな響きを奏でる。
※ ダラー・ブランドは1968年にイスラム教に改宗し、Abdullah Ibrahim / アブドゥーラ・イブラヒムと改名した。
And More...

African Piano

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?