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Badfinger / Straight Up
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2004年4月30日に他のサイトへ掲載した原稿を加筆修正しました。==================================
バッドフィンガーは薄幸のバンドだった。
アップル・レコードからデビューした為、バッドフィンガーはどうしてもビートルズの弟分バンドと見られていた。どんなバンドでもビートルズが兄貴分で、天才的な兄貴と比較されるのは実に難儀だろう。多分そんな訳でバッドフィンガーの評価は不当に低くかった。それに当時はこの手のポップなバンドの評価は、多分あまりにも商業的すぎるという今から思えば実に阿呆らし理由で、不思議なくらい不当に低かった。
しかし彼らのパワー・ポップ的なセンスは本当に素晴らしい。中心メンバーであるピート・ハムはメロディー・メーカーとしても優秀で、多数のヒット曲を送り出した。しかし残念ながら本格的な成功には手が届かず、また所属していたレーベルに契約を切られたり、マネージャーに裏切られたり、名声にも運にも金にも恵まれない大凶的な不運ばかりが続いた。そしてそれに耐え切れず、全てに絶望したピート・ハムは75年に自殺してしまう。そしてバンドは解散。
その後、ピート・ハムと共にバンドを支えたトム・エヴァンスを中心に再結成されるが、結局人気は出ずにバンドは再解散。そしてトムも83年に自殺してしまう。
そしてバッドフィンガーは忘れ去られた。
カラっとしたドライで脳天気な明るさが無く、ポップではあるが、曇り空的な少し湿ったサウンドのバンドだけに、彼らに明るい結末はなかったのか?
《Maybe Tomorrow》、《No Matter What》、《Without you》、《Baby Blue》、バッドフィンガーが織りなす、イギリスのバンドらしい少し陰りのある切ないメロディーはたまらない。個人的には《Day after Day》が一番好きな曲だ。好アルバムは多いが、《Day after Day》を収録している彼らの三枚目のアルバム『Straight Up / ストレート・アップ』を一番贔屓にしている。
今こそバッドフィンガーの持つ良質なポップ・センスを評価してやってほしい。
志半ばで死を選んでしまったピートとトムの供養のためにも。
And More...
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