棲家の遍歴・その13 / フランス、パリ郊外② / 間取リックス&住マップ
2010年8月13日に他のサイトへ掲載した原稿を加筆修正しました。==================================
間取リックス:
Avenue du Général de Gaulle 92170 Vanves /
ヴァンヴ市、ジェネラル・ド・ゴール通りのアパート
Appartement / アパルトマン(集合住宅:日本で言うところのマンション)の3階。
1990年の夏から1992年9月まで、このアパルトマンに住んでいた。
それまで郊外の古い一軒家に住んでいたが、不便なところも多く、またその他の諸事情で引越しを決めた。
働き始めて既に数年が経過しており、薄給ではあったが、人並みの家賃を支払えるようになっていた。
しかしながらパリ市内でアパルトマンを借りると割高になるので、パリから少し離れたところに借りることにした。
築10年程度の比較的新しい建物だったので、住み心地はまずまずだった。地下には約3帖程度の収納室もあり、重宝していた。
きれいな状態で借りたのだが、壁紙のデザインや色の感覚が気に入らず、大家さんの了承を得て、壁紙を剥し、壁面と天上をマット系の白ペンキで塗ることにした。
ローリング・ストーンズ風に言うと、Paint it White !
ラジカセでBGMにロックを流しながら、せっせとペンキを塗った。壁面の塗装はそれほど苦にならなかっが、天上は少しばかり難儀した。
脚立に登り、首を捻り、天上を見上げながらの作業は堪えた。しかし気分はシスティーナ礼拝堂の天上に旧約聖書『創世記』の場面を描く、ルネッサンス期の天才、ミケランジェロ・ブオナローティ。
ちなみに私はペンキ塗りが好きだ。少しずつ空間を埋めていく感覚と、妙な達成感がたまらない! ちょっとした中毒かもしれない。
このアパルトマンに引越して、何が一番嬉しかったかといえば、当たり前だが、風呂があること。
シャワーすら無い古い一軒家に長い間住んでいただけに、何時でも好きな時に風呂に入れるのは嬉しかった。
風呂に入りながら、冷蔵庫でしっかり冷やしておいたサクランボを食べるのが好きだった。
サクランボの種をプイッ、プイッ、とバスタブに吐き出す。少しずつサクランボの匂いがバスルームに充満し、バスタブ内は天然サクランボ湯(?)と化すわけだ。これは快感だった。
しかしお湯を抜く前にサクランボの種を回収するのがちょっと面倒だった。
住マップ:
135 Avenue du Général de Gaulle 92170 Vanves /
ヴァンヴ市、ジェネラル・ド・ゴール通り 135番地
周辺は閑静なパリ郊外の住宅街だった。
なだらかな丘陵に、まるで印象派の風景画から切り取ったような街並みが続いていた。
歩いて約5分程度のところにフランス国鉄、SNCF(Société Nationale des Chemins de fer Français)の Clamart / クラマール駅があった。しかしパリに出るときは、約10分ほど歩いて Mairie d'Issy / メリー・ド・イッシー駅から地下鉄12号線を利用していた。
買物にも Mairie d'Issy / メリー・ド・イッシー駅周辺が便利で、駅前の広場では定期的に市が開かれていた。
パリの中心部から私が住んでいたところまで、タクシーで約20分、料金は約3,000円程度だった。
ポケットマネーで支払える程度の料金なので、パリで遅くまで飲んだ後、よくタクシーで帰った。
パリの街並みは昼間でも美しいが、その夜景の美しさは素晴らしい。日が暮れると、歴史的な建造物が見事にライトアップされるからだ。
オペラ座近辺でタクシーを拾い、コンコルド広場方面へ向かう。広場で右折し、Pont Alexandre III / アレクサンドル3世橋を渡ると正面にアンヴァリッドが見え、右折してセーヌ河沿いに南下すると、左右にシャイヨー宮やエッフェル塔が見える。
漆黒の奥からくっきりと黄金色に浮かびだす数々の建造物。その美しさを堪能するだけで、タクシー料金の元は充分に取れる。
ちなみにパリのタクシーの車種は、フランスだけにルノー、プジョー、シトロエンが多かった。たまにメルセデス・ベンツのタクシーに当ると、料金体系は同じだから、少し得をしたような気分だった。しかしBMWのタクシーは無かった。それはメーカーがタクシーとしての車両使用を許可していないからだそうだ。
飲んだ後、安心してタクシーで帰れる距離のところに住む。
飲んだ後、美しい夜景を楽しみながら帰れる街に住む。
今ではもう無理だろうか?
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