Cannonball Adderley / Somethin' Else
2004年8月20日に他のサイトへ掲載した原稿を加筆修正しました。==================================
テナー・サックスのサウンドはヘビー級のレスラーだ。
ソプラノ・サックスのサウンドはジュニア・ヘビー級のレスラーだ。
では、その中間のアルト・サックスのサウンドは?となると、これが実に中途半端で、ジュニア・ヘビーからヘビーに転向して、悪戦苦闘しているレスラーのようにみえる。テナーよりもスピーディーな動きで悪くはないが、なんとなく技や音が軽いのだ。
そんな独断と偏見が理由で、アルト・サックスにはあまり愛着がない。フィル・ウッズは好きだ。オーネット・コールマンは凄い。ジャッキー・マクリーンもいい。ルー・ドナルドソンのノリも捨てがたい。しかし... なのだ。
さて、キャノンボール・アダレイ。本名はジュリアン・エドウィン・アダレイ。キャノンボール(砲弾)はニックネームで、自慢(?)の巨体が由来ではなく、「キャンニバル:Cannibal:人喰い:大食漢」が由来のようだ。何はともあれ、大食によりアダレイは自慢の(?)巨体を得たのかもしれない。それにしてもジュリアンとは身体に似合わず可愛い名前だ。
体格と体重だけで判断すると、キャノンボール・アダレイはアルト・サックス・プレイヤーながら、スーパー・ヘビー級に属することになる。
そんなキャノンボール・アダレイの代表作は『Somethin' Else / サムシン・エルス』。バックをサポートするのは、マイルス・デイヴィス(トランペット)、ハンク・ジョーンズ (ピアノ)、サム・ジョーンズ (ベース)、そしてアート・ブレイキー(ドラム)、ほとんど当時のジャズ界のオールスター編成だ。
アルバムはシャンソンの代表的な曲《Autumn Leaves》から始まり、コール・ポーターの名曲《Love For Sale》へと続く。
スーパー・ヘビー級のキャノンボールには《Autumn Leaves》や《Love For Sale》などは似合わない。繊細なマイルス・デイヴィスのミュート奏法と付き合う必要はないだろう!と言いたくなる。それほどこの二曲ではマイルス色が強く、だからこのアルバムの実質的なリーダーはマイルスだと言われている。しかしそれではキャノンボールの立場が無く、面目丸潰れだ。
しかし後半はキャノンボールが巻き返しを図る。マイルス・デイヴィス作のタイトル曲《Somethin' Else》からキャノンボールの馬力のある奔放なサックスが冴え渡り、な~んだ、これはやっぱりキャノンボールのアルバムではないかと、妙に納得してしまう。
まぁ、これはプロレスでいうところの名タッグ・チームみたいなもので、マイルスが若いキャノンボールを見事にコントロールし、ちゃんと試合を決めさせているのだ。つまりこれは一応キャノンボールのアルバムだが、マイルスのアシスト無しには名盤にならなかったのも事実。
ジャケット・デザインの素晴らしさも特筆モノだ。
黒をバックに、タイトル等をホワイト・グリーン・ブルーのゴシック書体でシンプルにまとめたデザインは抜群の出来だ。ジャケットのデザイン・ワークが素晴らしいブルーノート・レーベルの中でも、個人的にはベスト10に入ると思う出来だ。
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