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Web活用時代におけるPMOの必要性
本コラムでは、複雑化するサイトリニューアルPJの現状とそれらを踏まえた今後のプロジェクト推進のあり方について考えていきたい。
複雑化するサイトリニューアルの現状
BtoBユーザーの情報収集手段の変化やコロナによる非対面営業が急速に進む中、企業Webサイトは単なる情報発信ツールからデジタル接客やデジタル営業を担う戦略ツールへの転換を余儀なくされている。
このようなWebサイトの位置づけの変化とともに、サイトリニューアルPJの“マルチ化”も進んでいる。従来のサイトリニューアルは、単一サイト、単一システムが中心のシンプルなスコープだったが、昨今のサイトリニューアルでは複数サイト、複数システム、複数ベンダー、複数ロケーションといったマルチ要素が重なるプロジェクトが増えており、プロジェクト難易度が数段増しているのが実情だ(図1)。
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複数サイト/システムが絡むリニューアルの工数規模感は従来の約3倍
図2は過去にイントリックスで手掛けてきた4つのプロジェクトの実績工数を横比較したものである。単一サイト/単一システムのシンプルな形のリニューアルPJと複数サイト/複数システムの高難度リニューアルPJで実績工数を比較してみると、プロジェクト規模の違いが浮き彫りとなった。
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4つの内、A・B社のプロジェクトは単一サイトのリニューアル+CMS導入といった従来型のサイトリニューアルである。C・D社のプロジェクトは複数サイトのリニューアルにCMS、PIM、DAM、MA、SFA/CRM連携といった複数システムからなるシステム基盤構築を含むものである。
昨今のサイトリニューアルでは、マーケ/営業ツールとしてWebサイトを本格活用するためにC・D社のようなスコープで取り組むプロジェクトが増えている。
ここで注目すべきは、両タイプのプロジェクトの工数規模が約3倍くらい違うということである。工数規模の違いはプロジェクト難易度が数段違うということを示している。日本情報システムユーザー協会(JUAS)が発表している企業IT動向調査2020でITプロジェクトの規模別の成功率を示しているので図2のデータを元に検証してみたい(図3)。
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こちらのデータを見ると100人月未満規模のPJの「予定通り完了」は45.6%だが100~500人月未満では29.3%と3割を切る水準まで下がっている。単一サイト/単一システムの従来型サイトリニューアルPJは100人月未満の規模なので成功率も高いが、複数サイト/複数システムが絡む昨今のサイトリニューアルPJは100~500人月未満の規模となるため、難易度も上がり成功率が下がる傾向にあることが分かる。
プロジェクト成功率が下がる4つの要因
ではプロジェクト成功率の差が開く要因は何なのか?数多くの大規模プロジェクトに携わってきた中でプロジェクト成功率が下がる要因として挙げられるのは主に下記4点と考えている(図4)。
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第一に挙げられるのは、「PJ関係者間のコミュニケーション不足」である。昨今のリニューアルプロジェクトではクライアント/ベンダーいずれも利害関係者の数が多いが、これら関係者の共通理解や意思疎通を図るためのコミュニケーション量が圧倒的に不足しているケースが多い。
結果として意思疎通が不十分なままプロジェクトが進み、重大な問題が直前で発覚してプロジェクトのQCD(※Quality=品質、Cost=コスト、Delivery=納期)に影響を及ぼす事態になることが珍しくない。
第二に挙げられるのは、「PJ全体の状況が可視化されていない」ことである。各ベンダーが担当する領域については状況が報告されるものの、PJ全体で見たときに整合性が取れているのか、順調に進んでいるのか、ベンダー間に跨る問題はないのか、が可視化・把握されていない。
第三に挙げられるのは、「俯瞰視点での調整役の欠如」である。先に挙げた課題は本来的にはその役割を担う担当者/チームが設置されるべきだが、そういった役割・機能が設置されぬままプロジェクトを進めてしまっているケースが多い。
第四に挙げられるのは、「発注企業側のリソース不足」である。リニューアルPJの規模の増大に比例して発注企業側の体制/リソースもプロジェクトのQCDに大きく影響する要素となる。しかしながら、本来必要な体制/リソースを確保してプロジェクトを進めることは多くの企業にとってハードルが高く、プロジェクト遅延につながることが多い。
俯瞰視点でプロジェクトを推進するPMOの必要性
これらの課題の内、1~3に対して有効な役割を果たすのがPMOである。PMOは、複数PJ・ベンダーに跨る課題やリスクを先回りして可視化・把握し、俯瞰視点で調整・全体推進を行うプロジェクト全体の推進役である。
PMOの立ち位置や役割については、様々な考え方があるがイントリックスでPMOを手掛ける場合、主な役割としては、「①全体視点でのプロジェクト推進支援」と「②ベンダー間にまたがる課題の抽出と対策検討」を担う(図5)。
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昨今のサイトリニューアルPJはテーマが幅広く、1社だけで完結することは困難となっている。このため複数ベンダーでそれぞれの特長を発揮しながら進めていくことになるが、全体調整役が不在だと各ベンダー視点の個別最適に陥り、ベンダー間にまたがる問題を誰も拾おうとせずにプロジェクトが進んでいくことになる。
当然ながらそのような進め方でうまくいくわけもなく、重大な問題が遅いタイミングで発覚し、スケジュール遅延やコスト増、品質低下などが発生する。最悪のケースでは問題を解決できずプロジェクト凍結に至ることもある。
PMOは業務システムの世界ではプロジェクトの成功率を高めるために以前から当たり前のように導入されていたが、これまでWeb系プロジェクトでは難易度・規模ともにPMOを導入するほどではなかった。
しかしながら、昨今のプロジェクトでは難易度・規模が格段に上がっているため、PMOの必要性が飛躍的に高まっている。弊社でもPMOを含めてプロジェクト支援を行うケースが2~3年前から増えており、工数規模100人月以上の案件ではPMOを設置して運営する形を取っている。
大規模プロジェクトを当初計画したQCDで実現するためには、常に半年先までを目安に想定されるリスクを考え、先回りしてリスクの芽を摘みながらプロジェクト全体を推進していく必要がある(図6)。1~2か月先までしか先が見えていない状況では、どこかで暗礁に乗り上げてしまうからだ。
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昨今のプロジェクトでは問題が顕在化した際のインパクトも大きく、システム要素が多く絡むサイトリニューアルでは大きな問題が勃発すると数千万単位での損失につながることは珍しくない。
こういった事態にならぬ様、これからのサイトリニューアルPJでは俯瞰視点で全体像を把握し、全体最適を意識したプロジェクト推進を行うPMOの設置をご検討いただきたい。