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不確実性のコーン~PJ初期の情報詳細化の重要性

わたしは20年以上に渡りBtoB企業のデジタルコミュニケーション支援を行っているのですが、最近Web業界の方と情報交換をすると必ず話題になるのが「提案できないRFP(提案依頼書)が増えて困っている」問題です。

なぜそんなことになっているのか?

背景には企業におけるWebサイトの位置づけが時代とともに大きく変化していることが挙げられると思います。

2010年以前のBtoB企業のWebサイトの位置づけは企業側が発信したい情報を提供する単なる情報発信ツールに留まっていたと思います。その後、インターネットの発展やクラウドの普及、MAツール(見込客育成・リード獲得支援)の登場などによって営業/マーケティングツールとしての可能性を感じるBtoB企業が徐々に増えて行きました。

さらにこの流れがコロナ禍で一気に加速しました。営業活動では非対面でのコミュニケーションが求められ、展示会も一時期は以前のような形ではできなくなりました。営業/マーケティングツールとしてWebサイトの役割はさらに重要なものとなりました。

「営業/マーケティングツールとしてWebサイトを活用する」ことと、「単なる情報発信ツールとしてWebサイトを利用する」ことは天と地ほどの違いがあり、プロジェクトで取り組む範囲の広さ、利害関係者の数も全く異なります。

こういった中、「営業/マーケティングツールとして自社サイトをリニューアルしたい」というRFP(提案依頼書)を多くの企業からいただくのですが、9割方は下記のようなケースに当てはまります。

  • リニューアルの目的やゴールが曖昧

  • 提案側からみて必要な情報量を100とすると30-40くらいの情報しかない

  • 情報整理の視点に偏りがあり、本来必要な視点からの情報が欠けている(ex. マーケ視点が必要な内容なのにシステム視点に偏っている、など)

  • 実現したいことと費用感の乖離が大きい(数倍の開きがある)

“情報不足や情報の曖昧さ”は見積もり額のブレ幅に大きく影響します。弊社はよくRFP作成のご相談をいただくのですが、「ベンダー間で5~10倍の価格差が出てしまい選定ができない」といった声は珍しくありません。

こういった現象はIT業界でよく耳にする“不確実性のコーン”に当てはまります。

“不確実性のコーン”とは、1981年にバリー・ベームという方が発表したソフトウェア開発の各工程と見積もり額のブレ幅の推移を示した図です。

これによると情報が不足・曖昧な初期工程では見積もり額のブレ幅は10倍以上開き、要求事項が固まった工程では1.5倍程度までブレ幅が縮まります。実際にこれまで多くのお客さまから自社で作成したRFPを元にベンダー数社に見積もり依頼をしたところ、見積もり金額に5~10倍以上の差がついてベンダー選定ができないため、RFP作成を支援してほしいとご相談を受けています。

どのような目的のベンダー選定をするかにもよりますが、できるだけ提案依頼する初期工程で情報を詳細化することが適切なベンダー選定をするためには重要です。また、初期工程での情報詳細化は社内関係者のプロジェクトへの理解度を深めることにも大きく貢献します。

成功しているプロジェクトでは、初期工程での情報詳細化をしっかりと行っており、プロジェクト実施内容に対する社内関係者の理解度が総じて高い水準にあります。プロジェクトの目的や実施内容を7割くらいは理解してスタートできていると思います。

最初から関係者の理解度が高いので後工程での大きな認識のギャップが起こりにくく、Webサイトの品質、コスト、納期が当初計画した水準で実現されやすいです。

一方で、失敗プロジェクトでは初期工程での情報が少ないため関係者の理解度の差が大きく、後工程で大きな問題が生じてスケジュール延期や品質低下、コスト増につながる問題が頻発します。

利害関係者が多い昨今のサイトリニューアルPJでは、初期工程で情報を詳細化するためのRFP作成フェーズや計画フェーズを設けて社内関係者と提案ベンダー双方のプロジェクト理解度を深めつつ、見積もり額のブレ幅をより抑えた形で進めることを推奨しています。

今回はサイトリニューアルPJを題材にしましたが、皆さんが関わられる各種プロジェクトにおいても初期工程での情報詳細化によってプロジェクトが円滑に進み、得られる成果は大きくなると思います。

皆さんも初期の情報詳細化や情報共有によって円滑にプロジェクトが進んだ成功体験あると思いますので、実際に取り組まれた施策を含め是非教えてください!

#信頼されるITコンサルタントへの道 #不確実性のコーン

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