見出し画像

プロダクト開発組織の生産性指標


はじめに

SkillnoteVPoEの安藤です。
今回はここ数年特に大きく注目されている、開発生産性についてです。
Skillnoteでは開発生産性についてどのように捉え、どのように可視化し、測定し、改善しているか、といった点を書いていきます。

Skillnoteにおける開発生産性の変遷

Skillnoteは製造業向けのバーティカルSaaSであり、現在ワンプロダクトのモノリスシステムという形態を取っています。詳しくは以下をご覧ください。

今までのプロダクトを取り巻く環境はざっくりと以下のように変遷してきました。これらの状況を踏まえて生産性への考え方、可視化への投資なども行ってきたため、時系列に沿って記載していきます。

  • 2020年:旧プロダクトによるPMF達成、リニューアルを開始

  • 2021年:新プロダクトをサービスイン

  • 2022年:開発組織を倍の15名に増員

  • 2023年:セールスの型化が進み、ビジネスサイドのメンバーを増員

  • 2024年:新プロダクトの機能が旧プロダクトの網羅を達成、開発生産性の見える化に投資

2020〜2022年の開発生産性

この頃は、全社としてもまだまだ人数が少なく、とにかくプロダクトをリニューアルし、1つ1つの機能を深掘りして操作性含めUXにこだわって作る、を目標に掲げていました。
開発組織としても2020年にエンジニア4名、2021年に7名、2022年に14名と人数が増えていき、各自がキャッチアップしながら得意領域を活かしつつ「とにかく作り上げていくこと」に集中していた期間です。
ビジネスサイドも組織作りや型化に課題が多く、組織全体として生産性に対する課題は各チームの足場作りに重点が置かれていました。

2023年の開発生産性

2023年は、開発組織は人数が増えたことに対する最適化に重点が置かれました。2022年に一気にメンバーが増え、各メンバーが得意とする領域を把握してそれを活かす組織構成を取りつつ、ワンプロダクトの開発をスムーズに進められるようにすること等が課題となりました。

一方、ビジネスサイドも一定の型化が進み、堅く売れる部分や、チャレンジ領域などの切り分けなどが進み、人員も増え展示会への参加などMQL、アポイントを増やす施策への投資なども進みました。

このような点も踏まえ、組織全体としてはKPI管理を綿密に行う土壌が作られた年になりました。KGI(遅行指標)を設定し、そこに向けてKPI(仮説)を立て、活動目標などの先行指標を作ってPDCAを回す、といった取り組みです。

開発組織としてもこの流れに乗りつつ、自分たち自身も15人がどのくらいの速度で走れているのか、その速度は適切なのか、生産力を上げていくための定性情報、それを下支えする定量情報などを見えるようにしていきたい、という思いから、まずは消化ストーリーポイント(SP)やFour Keysなどの指標を見える化する活動に取り組みました。
なおFour KeysについてはFindy Team+を活用しており、開発活動の可視化および分析、改善に非常に有用なパートナーになっています。

2024年上半期の開発生産性

2024年上半期は、開発組織については2023年に築いた可視化を元に各メンバーのPDCAを回せる文化作りに集中しました。2ヶ月のリリースサイクルや、その中でもスプリントのサイクルをなるべくリズム良く回すような工夫を行ったり、可視化に乗らない運用の細かい改善・チューニングを実施するなどです。(具体的にはドラフトプルリクエストを廃止したり、GithubのIssueをナレッジデータベースにするためのPoCを実施したりするなど。)

この活動の結果Four Keys指標は上向き、組織として高い生産力を持てていることがここ数ヶ月で分かってきました。(具体的に自慢したいのですがこれについてはまた別の機会に・・)
その一方で、いくつかの課題も見えるようになってきました。

  • 新機能開発を優先してきたため、改善系の案件が進まず既存のお客様の声に応えられなかった

  • 各メンバーが得意とする業務にのみ偏ってしまい、技術チャレンジや負債解消の余裕が持てなかった

  • 消化SPやFour Keysは見えるようになってきたが、これだけで開発生産性の善し悪しは判断できない

  • 全社で重点的に見ている指標が売上指標に偏っており、全社の人数・顧客数(エンタープライズ含む)も増えプロダクトの価値を研ぎ澄ませる方向性が見えづらくなった

2024年下半期の開発生産性

上半期の課題も踏まえ、2024年下半期はSPACEフレームワークに沿って満足度など組織コンディションも含めた指標を取り入れ、またNSMを定義した上でロードマップの意思決定フローを明確化する取り組みなどを実施していきます。
なお具体的に開発組織として見ていく指標は現状以下で考えています。

  • Satisfactionとして:組織アンケートの満足度スコア

  • Performanceとして:計画SPに対する消化SP率(見積誤差)

  • Activityとして:消化SP、Four Keys

Communication, Efficiencyについては今回は計測指標を設けず、2025年以降への申し送りとしたいと考えています。

まとめ

昨今、開発生産性、開発者体験(DevEx)といったキーワードが盛んに聞かれるようになりました。これはSaaSプロダクトが多くなってきた背景もあり、いかにエンジニアのLTVを高められるか、という観点や、不確実性の高い領域においていかに価値の高いプロダクト・サービスを素早く届けられるか、といった観点が非常に重要である、ということだと思います。

また、提供価値の高いプロダクトを作っていくのは、エンジニアだけに閉じた話ではない、という点も重要です。特にSkillnoteが切り拓いている領域は自分たち自身が第一人者であり、旧プロダクトに追いついた今後は顧客理解・ディスカバリーがより一層重要になっていきます。

こういった状況を踏まえて開発生産性を向上していくために、NSM、SPACEフレームワークをうまく活用し、組織活動の可視化と、PDCAを回す土台としていきたいと考えています。
今までは「そもそも見える化ができていなかった」ことが課題で、定性的なふり返りを裏付ける定量情報がなく力強い意思決定がしづらい場面もありました。
今後は仮説の結果を定量的なふり返りもできるようになっていくため、より高い精度でPDCAが回せるようになっていくことを期待しています。

注意点としては、数字ハックにならないよう、数字そのものを評価対象、目標としないことだと考えています。立てた目標に対してどう仮説を立ててアプローチしていくか、それを日々の活動にどう落とし込むか、という点を大事にして、落とし込んだ結果数字としてはどう見えると良いのか、ふり返って考えられるように計測値を用意している点を忘れないようにしていきたいと考えています。

2025年以降は今回計測対象外としたSPACEの「CE」部分を進めたり、個人の評価とのつながりや、エンジニアリング活動外へ計測範囲を広げるにはどうしたら良いかなど(例えばデザイナーやSRE領域の可視化をどう進めるか、といった部分)をテーマとして進めていきたいと考えています。

もっと詳しく取り組み内容について聞いてみたいなど、気になった方は是非お気軽に話しにきてください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?