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アルバム「シンビジウム」のテーマが垣間見える曲「Eidos」レビュー

2021年2月23日、富士葵2ndアルバム「シンビジウム」より、サブリード曲 「Eidos」が配信開始されました。特設サイトと「シンビジウム」のダウンロードサイトはこちら。新曲の購入とアルバムの予約をぜひお願いします。

さっそく「Eidos」を聴いた感想を述べていきます。この曲を聴いてまず思ったのが「夢を無くした大人になった人に刺さる曲」ということと「1番と2番で物語性がある曲」ということでした。

歌詞の「余計なものばかり増えて 邪魔になって こんなんじゃなかったはず」とか「綺麗な色を望んで 望まない色をもらって」のあたりはかなりグサッときました。大人になって嫌な事とか理不尽な事があっても仕方ないって諦めてしまったり、年齢を理由に夢を見るのをやめてしまったりしている自分に気づくことって、割と普遍的な体験だと思います。

だからこそ「白か黒じゃなくていい 青いままでいてよ」という歌詞に勇気づけられます。ここでいう「青い」は色の青だけでなく「青二才」や「青臭さ」のような意味も含んでいると解釈しました。こういう曲を聴くと、たまには大人げなく夢を見たり語ったりしても良いのかな?という気持ちになります。「どこからだって そうstartなんだよ」ですね。

歌詞の中に僕とキミという言葉が登場することから、この2人の物語の歌とも解釈できます。最初聴いた時は、僕と君が出会って時に傷つけ合いながら愛を知っていく歌だと感じました。

しかしこの曲のタイトル「Eidos」を調べると下記のような説明が出てきます。Wikipediaから抜粋して引用。

形相(けいそう。英語: form、古代ギリシア語: εἶδος、エイドス)とは、哲学用語で質料に対置して使われる用語。日本語としては、「ぎょうそう」とも読めるが、哲学用語として使う時には「けいそう」と読む。

古代ギリシアの哲学者アリストテレスは、あるものにそのものの持つ性質を与える形相(エイドス)は、そのもののマテリアルな素材である質料(ヒュレー)と分離不可能で内在的なものであると考えた。

たとえば、建築家が「木造の家」をつくるとき、材木が質料(ヒュレー)である。この受動的な存在である材木にはたらきかけ、形を与えることによって、「木造の家」が現実化する。

一読しても「なんのこっちゃ?」と思いますよね。私も思いました。最後の木造の家の例えで、エイドスというのは単なる物(ヒュレー)に性質(意味?)を与えるものというニュアンスは読み取れた気がします。

この説明を踏まえると、この歌の歌詞の僕とキミは、分けることのできないエイドスとヒュレーの暗喩という解釈もできるかもしれません。他にも「Eidos」の意味を「あるものに性質を与えるもの」とすると、歌詞の僕やキミにとっての「Eidos」とは?、自分自身の「Eidos」とは?と考えてしまいます。人生の意味や愛について考えさせられる深い歌詞です。

2021年2月1日に先行シングルカットされた新曲「シンビジウム」の「キミらしく咲けばいいよ」の「キミらしさ」というのも、ものの性質を示す「Eidos」と共通する部分があるかもしれません。このあたりに「シンビジウム」というアルバム全体のテーマみたいなものを感じます。アルバム全体のコンセプトみたいなものの解説も、葵の生放送で聞けると面白そうですね。

歌詞については考察が捗りそうですが、長くなるのでここまでにしておきます。最後にこの歌の歌詞にも白黒青赤灰という多数の色が出てきます。この色で表現する歌詞は葵ちゃんのオリジナル曲「MY ONLY GRADATION」を思い出しました。

歌詞以外にも、音については葵ちゃん本人もツイートしている通り、疾走感あふれる曲です。ドライブしながら車中で聴きたい系の盛り上がる曲です。イントロ冒頭の一種暴力的にも聴こえるドラムから始まり、メリハリのあるドラムとピアノのメロディは、最後の一秒まで飽きさせません。特に曲のラスト数秒のドラムとピアノの音の余韻が心地いいこと。

葵ちゃんのコーラスも素敵で「涙さえも 痛みさえも」「傷ついて」「愛を知って」「こぼれるたび」などのハスキーなボイスは耳が幸せでした。また1番の歌詞の「こんなんじゃなかったはず」の悔しさがにじんだ歌い方には思わず感嘆の声が漏れました。かわいかったり元気に前向きな感情を込める歌はよくありますが、悔しいというニュアンスを「こんなんじゃ」というワンフレーズに込めているのはお見事という他ありません。

最後に「Eidos」のジャケットのワンピース姿で青い空と海を見ている葵ちゃん良いですよね。葵ちゃんのワンピース衣装も見てみたいです。この後アルバム「シンビジウム」の発売日3月24日までに他の楽曲の先行リリースがあるのかは分かりませんが、他の曲が聴けるのも楽しみにしています。

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