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感謝の気持ちがつまった温かなライブ ときのそらTheatrical Cover Live「Role:Play」レポート

2022年1月22日、ときのそらのシアトリカルカバーライブ「Role:Play」が池袋HUMAXシネマズ、109シネマズ大阪エキスポシティと配信サイトSPWNにて開催された。ときのそら 3rd Album「Re:Play」を引っ提げての本ライブは、昼・夜の2公演行われ、そのセットリストや演出もそれぞれ趣向を凝らしたものとなっている。本稿では2公演のライブについて内容を振り返りつつ感想を述べていく。

なお昼・夜公演で重複する内容もあるため、昼公演の場合は太陽の罫線を、夜公演は月の罫線を、昼・夜公演共通の内容の場合は月と太陽の罫線で段落を区切っていく。

OPのアタック映像で1stソロライブ「Dream!」、2ndソロライブ「パラレルタイム」のライブ映像が流れる。この時点で昔からときのそらを応援しているそらとも(ときのそらのファンの通称)の皆さんの心はわしづかみだっただろう。

そして舞台裏からステージへ歩いていくときのそらの姿が映し出される。彼女は無人のステージの床から現れ最初の曲「太陽系デスコ」を披露。背景にはYouTubeに投稿されている「太陽系デスコ」のMVが流れ、「昔のときのそら」と「今のときのそら」が交錯する。あの頃よりもずっと成長した歌声に、会場のボルテージは一気に最高潮に達した。

夜公演ではOPの映像はなく、最初からステージに立つときのそらの姿を見て、昼公演からライブが地続きのような錯覚を受けた。披露された「エイリアンエイリアン」は「太陽系デスコ」と並んでYouTubeの歌ってみた動画の中で、ときのそらの名刺代わりの曲と言っていいだろう。時に人外と評される心地よい高音を駆使して、ボカロ曲を原キーで歌いあげる。

続けて歌うのは「HOT LIMIT」。ときのそらの両脇に2人のぬいぐるみの「あんきも」が登場し、3人でステージを湧かせる。海面を思わせる背景映像に、ステージ上から登る花火という豪華な演出に、否が応でも視線はステージに釘付けになった。小悪魔的な歌詞を歌いながら、間奏でヴァヴァとあんきもの鳴きマネをしたり、跳ねるように踊る姿はとても可愛い。

3曲目の「まっさらブルージーンズ」の、青春の慌ただしい楽しさがつまった歌詞を、ノリノリのダンスに合わせて瑞々しく歌う。床やステージ上のライトも目まぐるしく色が変わる。そして可愛くウインクのタイミングもバッチリ決まっていた。

「ロマンスの神様」では、背景が雪に変わりステージ上も冬模様へ。緩いサイドステップに乗せて、往年のアイドル曲を歌う。2番からはステージ中央に腰掛け歌う姿は恋する乙女そのもの。以前この曲をYouTubeで歌った時、SNSで広瀬香美本人から反応があり、ときのそらもビックリしたというのは、Vtuberという存在が広く一般へ浸透していることを表すエピソードだろう。

4曲を続けて歌い終わり、昼公演では盛り上がりすぎて片耳のイヤモニを落としてしまったことを語る。昼・夜公演共に最初の4曲は盛り上がる曲を選んだとのこと。まだまだ盛り上がっていきましょう!と、ライブの勢いはまだ止まらないことを宣言する。

昼公演ではここから「グッバイ宣言」「ファンサ」「冴えない自分にラブソングを」「シル・ヴ・プレジデント」を4曲続けて披露。

「グッバイ宣言」はアルバム「Re:Play」には収録されていないカバー曲だ。そらともの皆さんはよく知っていると思うが、ときのそらの適正キーは高い。彼女は歌コラボをした相手に「高い!」と言われたり、Victorのプロデューサーに「高くないと悔しい」と言われる逸話を持っている。「グッバイ宣言」でもそのキーの高さに舌を巻いた。

「ファンサ」は1stソロライブ「Dream!」でも披露した曲。あの頃よりもアイドルが板についた彼女の「そらビーム」に、会場は拍手とペンライトで、配信は「はい!はい!」「もっと!」とコメントで応える。間奏の「みんな今まで応援してくれてありがとう!これからも一緒に歩いていこうね!」というときのそらの言葉は、アイドルとそれを応援する人たちの理想の姿を体現しているかのようだった。

ここでステージが新しくなる。背景にTOKINOSORAと名が刻まれたライブハウスのようなステージで「冴えない自分にラブソングを」を熱唱。ライブ中盤にも関わらず盛り上がる曲を立て続けに歌い、拍手やコールを煽る。まだまだついて来いと言わんばかりの挑発的なセトリだった。

「シル・ヴ・プレジデント」は筆者としては意外な選曲で度肝を抜かれた。ヤキモチを焼く女の子の物騒な気持ちの歌詞を可愛く歌いながら、半目やシイタケ目などのファンサも欠かさない。「あちゃ~」や「おらー!」などのコーラスも、ときのそら自身の声のようで、可愛さに拍車をかけていた。

夜公演ではここから「怪物」「Butterfly」「冴えない自分にラブソングを」「アンドロイドガール」を4曲続けて披露。昼公演とは打って変わって格好いい曲が続く。

「怪物」の心のうちに煮え滾る葛藤を形にしたような歌詞を、ときのそらのしなやかで力強い歌声で解き放つ。「教えてくれよ」という声が真っ直ぐに胸に刺さった。

「Butterfly」には自分自身を鼓舞するような格好良さだけではなく、妖艶でセクシーさも込められていた。ステージ上で舞うように踊る姿は文字通り蝶を思わせる。アフタートークで明かされたことだが、この「Butterfly」と「まっさらブルージーンズ」の2曲はプロに振付を考えてもらったとのこと。

「冴えない自分にラブソングを」から昼公演と同様にステージが変わる。「冴えない自分にラブソングを」を歌い終わった後、「アンドロイドガールいくぞー!」という絶叫から始まる「アンドロイドガール」。感情を絞りだすような「君だけは許さない!」という絶唱に全身が痺れた。

アップテンポな曲を4曲披露した後は、新しいステージの紹介。色んなときのそらを見せたいがための、格好いいステージを作ったとのこと。そして次の曲は少し落ち着いてバラードの「この世界で」。壮大なサウンドに乗せて響く、ときのそらの高音のボーカルがとても心地よい。伸びやかな歌声は、聴く者を一瞬で曲の世界観に引き込んでしまう。

次は再びアップテンポな「God knows…」を格好良く歌い上げる。昔は格好いい曲を歌うのが苦手と言っていた彼女だが、今はもうそんな空気を微塵も感じさせない。苦手としていた曲にも挑戦して克服していく、そういう成長を見守るのも、アイドルを応援する醍醐味だろう。

夜公演では新しいステージで歌ったのは「嘘」と「KING」の2曲。昼は可愛い曲、夜は格好いい曲を選んだとのこと。格好良い曲は緊張すると言いつつも「嘘」を格好良く切なく歌い上げる。「上手に騙してね嘘は嫌いで好き」という、繊細な感情を丹念に解きほぐすような心地よい歌声を紡いでいく。

「KING」の1番と2番の「ハハッ」の歌い分けは必聴。1回目は格好良く、2回目は可愛く。ときのそらの歌声には、相反する感情や表現を明快に使い分ける柔軟性があり聴き応えがあることを再認識する。

ライブ終盤のセットリストは昼・夜同じ。ステージが再度変わり、アイドルではなく私服の「ときのそら」がマイクの前に立つ。歌うのは「花時の空」。これまでの5年間の歩みを噛みしめるように涙ながらに歌う。ピンク色に染まる会場のペンライト。桜の花びらの絵文字が舞うコメント欄。東京、大阪、オンラインの3つの会場がひとつになった瞬間だった。ときのそらと、そらともの皆さんと、お互いに「ありがとう」を送り合う。そこにあるのは「愛」だ。

そしてさらにバラードの曲「赤いスイートピー」が続く。会場のペンライトたちの色は赤へ。繊細なピアノと透き通るような歌声のハーモニーが心の琴線に触れてくる。ステージに赤い花びらが舞い、春を感じさせる、ゆっくり身を委ねてしいまいたくなる歌唱だった。

「花時の空」は4年前、soraSongとして路地裏ロジック氏からもらった曲なこと、応援してくれる人のためにこれからも頑張ろうという勇気をもらった曲なことを語る。その曲をライブで歌うことができて幸せで、色んな事を思い出しながら歌っていたらグッと来てしまったという気持ちは、このライブを見ている人全員が同じ気持ちだったと思う。この曲がみんなへの「ありがとう」の気持ちが一番伝わると思い選曲したとのこと。「気持ち届いたかな?」という言葉には、会場の拍手と「届いたよ」というコメントがあふれる。そして応援してくれるそらともの皆さん、スタッフの皆さんには感謝してもしきれない、という想いを伝え「これからも応援よろしくお願いします」と深々と頭を下げる。

しっとりした気分は一旦忘れて、ここでお知らせが3つ。まずはときのそらオフィシャルファンクラブのリニューアル。会員証などの会員特典を準備中。2つ目は2021年にリリースした誕生日記念CDに収録されている「KumoHurray!」と「花時の空」の配信リリース決定。3つ目は本公演「Role:Play」のライブBlu-rayの2022年4月20日リリース決定。

3つのお知らせの後は残念なお知らせ、ライブは残り後2曲。今日が何回も続いて欲しいと、ときのそら本人もライブが終わることを惜しむ。最後はしっとりと「ガーネット」「ひまわりの約束」のバラード2曲。

「ガーネット」を聴きながら、すべての会場にいる人たちが今日という日を胸に焼き付けたことだろう。「あなたはずっと特別で大切で」という気持ちは、推しを持つ人類全員が抱く感情だ。愛おしい人を思う歌詞のすべてが胸に迫ってくる。

このライブで歌われた「ひまわりの約束」の歌詞は、ときのそら→そらともの皆さんへの気持ちのようにも、そらともの皆さん→ときのそらへの気持ちのようにも感じた。お互いに笑顔でいて欲しくて、お互い感謝の気持ちを送り続けているから。「その優しさを温もりを全部返したいけれど 君のことだから もう充分だよって きっと言うかな」の歌詞など、推しが生きているだけで感謝したくなる人種にとっては、普段の活動で充分以上に返してもらっていると内心叫ばずにはいられない。

最後に左右と前におじぎをし「ありがとうございました」という言葉で一旦ライブは締められた。

会場の鳴り止まない拍手と、コメント欄にあふれる「アンコール!」「いっかないで!」「ぬーんぬん!」の文字。その声に導かれるように再度ステージに上がったDream!衣装のときのそらが歌うのは「ヒロイックヒロイン」。ライブ終盤とは思えない全力投球で会場を盛り上げてくる。「せーのっ!ワンツー」「はい!はい!」と煽ればコメントはそれに応え、会場も声を出せない分、ハンドクラップやハンズアップで心の動きを表現する。ときのそらが「みんなサイコー!」と叫ぶ。大声も歓声もあげられない空白を、ときのそら自身が感じている充足感が埋めている、そんな感じだった。

最後の曲の前にアンコールへの感謝と、昼・夜2公演という挑戦への不安もあったけど、みんなの声援がここまで自分を引っ張ってくれたことを述べる。「私は最高に楽しかったです!みなさんは楽しかったですか?」という質問への答えは、盛大な拍手と「楽しかった!」というコメント。「毎日がライブだったら良いのに」と名残惜しさを出しつつも、「今日は全力で最後の最後まで楽しんでいってください!」と本当に最後の曲「KumoHurray!」を熱唱。

2021年の誕生日記念にときのそら本人が作詞した「KumoHurray!」は「じゃあ敵だね」「ヤメテヨー」「そっかー」「止まらねぇぞ」など、本人の語録が散りばめられた楽しい曲だ。間奏の「5年目もこうやってライブができるとは思っていませんでした!みんなのおかげだよ!ありがとう!」という言葉は、先の見えないVtuberという世界をガムシャラに止まらずに走ってきた彼女の心からの本音だろう。「今日は本当にありがとうございました!」という全力の感謝の言葉とともにエンディングへ。

このライブをまとめると、奇をてらった演出をするわけでもなく、主役のときのそらの魅力を見せるためだけに、基本に忠実に作り込まれたライブだった。その王道を真っ直ぐに歩く様子は、ときのそら「らしさ」の結晶だと思う。ときのそらを長い間応援している人にも、今回ライブ自体が初めてという人にも、広く楽しめる構成だったと感じる。

シアトリカルライブという新しい試みも評価したい。東京・大阪・オンラインの3会場でともに感動を分かち合えたことは、今後のライブにもプラスに働くことだろう。ホロライブは今も決して油断することのできない社会情勢にあって、停滞したライブエンターテインメントをどうにかして進めようと、知恵を絞り苦心し続けているグループのひとつだろう。今後も有観客ライブでは感染症対策に努めながら、オンラインならではの趣向を凝らしたライブにも期待したい。

ライブタイトル「Role:Play」の通り、本公演ではときのそら本人のオリジナル曲よりも多くカバー曲を歌った。今日のときのそらはアイドルであり、アーティストであり、ボカロであった。女優のように色々な役を切り替え様々な顔を見せつつ、これまでのイメージを破壊するような新しい曲にも挑戦していた。それでも「これはときのそらのライブだった」という感想を抱くのは、彼女がずっと「歌」と向き合い努力を重ねてきたからだ。

そしてこのライブには「感謝」がつまっていた。ときのそら自身の「ありがとう」と、そらともの皆さんの「ありがとう」が混ざり合い、とても温かな空気を作っていた。5年目になっても、ずっと先の未来でも、彼女が応援してくれる人や周囲の人への感謝の気持ちを無くすことはないだろう。いつかまたこの温かい空気のライブに帰ってきたい、参加した人にそう思わせてくれる心地よいライブだった。

「Role:Play」昼の部セットリスト
1.太陽系デスコ
2.HOT LIMIT
3.まっさらブルージーンズ
4.ロマンスの神様
5.グッバイ宣言
6.ファンサ
7.冴えない自分にラブソングを
8.シル・ヴ・プレジデント
9.この世界で
10.God knows…
11.花時の空
12.赤いスイートピー
13.ガーネット
14.ひまわりの約束
EN1.ヒロイックヒロイン
EN2.KumoHurray!

「Role:Play」夜の部セットリスト
1.エイリアンエイリアン
2.HOT LIMIT
3.まっさらブルージーンズ
4.ロマンスの神様
5.怪物
6.Butterfly 
7.冴えない自分にラブソングを
8.アンドロイドガール
9.嘘
10.KING
11.花時の空
12.赤いスイートピー
13.ガーネット
14.ひまわりの約束
EN1.ヒロイックヒロイン
EN2.KumoHurray!

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