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たくさんの思い出と出会えた奇跡に感謝の正拳突き 富士葵4周年記念LIVE Ricordanza~追想曲~レポート
2021年12月7日、活動4周年を迎えた富士葵が4周年記念ライブRicordanza~追想曲~をYouTubeで開催した。富士葵から葵歌劇団(富士葵のファンの通称)に贈られた、感謝の気持ちがこもったライブのレポートをお届けする。なお本公演はYoutubeにアーカイブが残っていないため、いつか振り返ることができる記録の意味も込めてレポートを作成する。
ライブの前に富士葵の4年間の来歴を簡単に振り返ってみよう。富士葵は2017年12月8日にSmarpirseからデビューしたバーチャルタレントだ。「キミの心の応援団長」をコンセプトに、YouTubeでバラエティ動画や歌ってみた動画を投稿しながら、イベントやゲーム、ラジオ、テレビ出演、オリジナル曲リリースやライブ開催など、マルチに活動している。
2018年4月27日にクラウドファンディングで集めた支援により新しいお化粧になり羽化。2019年にカバーアルバム「声 〜Cover ch.〜」、2020年11月20日に1stアルバム「有機的パレットシンドローム」、2021年3月24日に2ndアルバム「シンビジウム」をリリースした。そして2020年7月21日にSmarpirseから独立、2021年10月13日に新音楽レーベル「Acro」に加入している。
ここには書ききれないほどたくさんの軌跡を、葵歌劇団と二人三脚で歩んできた富士葵。その4年間の集大成とも言える、最大限の感謝の気持ちを込めたライブを振り返っていく。
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4周年記念ライブはこれまでの思い出を振り返るアタックムービーから始まった。YouTubeのデビュー動画、1周年、2周年、3周年記念配信の様子が駆け足で流れていき、郷愁にふける間もなく「What's the 4th Anniversary?」という文字と共にライブタイトルの「RICORDANZA-追想曲-」のロゴが降りてくる。
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「みなさん、こんばんは!富士葵です!」と、いつもの富士山のポーズをしながらステージに立った富士葵。その姿は2ndアルバム「シンビジウム」発売に合わせて仕立てた紫を基調にしたドレスをまとっていた。緊張を吹き飛ばすように「盛り上がっていきましょう!それじゃあ、よっしゃいくぞー!」と手を高く掲げ、最初の曲「テイストレス」を披露した。シティポップな軽快なメロディに合わせて富士葵もドレスの裾を揺らめかせながらステージ上でステップを踏む。ホントの気持ちを出せずにいる誰かの背中を押す、その歌声は柔らかく優しい。
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あらためて挨拶をした後、富士葵の4年間の軌跡を振り返る。初めての生放送、初めてのロケ、イベントで歌劇団のみんなと会ったこと、ライブ。そんな活動の軌跡の中で欠かせないデビュー曲「はじまりの音」が次の曲だ。しかもアコースティックバージョンという嬉しいサプライズ付き。
「はじまりの音」は「キミの心の応援団長」にふさわしい前向きな歌詞でみんなを鼓舞してくれる。同時にその詞は富士葵自身にも向けられているようにも感じた。富士葵の背景の青空にタイポグラフィで歌詞が表示される演出も見応えは十分。「はじまりの音を聞かせて 奏でて」という伸びのある声は、心地よく響き渡り背景の蒼穹に溶けていった。
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ここで今回生演奏をしてくれるゲストの柳生俊彦氏が紹介される。柳生氏はAoi.chの歌動画に投稿されているカバー曲の演奏やアレンジを担当している。また富士葵と柳生氏の初対面は「Pretender」のカバー動画のMV収録時とのこと。柳生氏が富士葵生誕祭の時にも声の出演をしてくれた話、リハーサルの時から柳生氏がネガティブだった話、柳生氏が好きな自転車の話などに花が咲く。
ここからは富士葵も椅子(通称:スーパーウルトラ海物語椅子)に腰掛け、しっとり生演奏コーナーが始まる。次の曲はライブでは歌うのは初の「Let it snow」。今までの声を張る歌い方とか対照的に繊細な歌声で恋を歌い、視聴者の心を掴んでいく。ステージ上では雪がハラハラ舞い降り冬を演出していた。
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二人の共通点としてネガティブ思考なところをあげ、富士葵が京都の鈴虫寺でお坊さんに「自信ってどうやって付くんですか?」と詰問したエピソードが語られる。そして柳生氏がポジティブになれば花火が打ち上がる演出が明かされ、柳生氏の「いえーい!」という声と共にステージを閃光が走り抜けた。
盛り上がった流れで続く曲は冬から夏へ。「花鈴のマウンド」のテーマソングに起用された「オーバーライン」。暑い夏を追想するように柳生氏がクールにギターを掻き鳴らし、富士葵は闘志燃ゆる球児のような熱唱でそれに応えた。
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ギターを背負って自転車に乗りすぎて腰痛になった柳生氏の話から、富士葵も小学校3年生の頃に腰痛持ちと判明したことを語った。彼女は今でも止まると腰が痛いため、生放送の時や日常生活でも細かく動いているらしい。「腰痛ネガティブ仲間ですね」とパンチの強いコンビを結成し、二人で笑い合った。
「次の曲はギターで演奏したらすごくかっこいい」という富士葵の前振りから披露したのは「Q.E.D.」。ギターのみになったことで、原曲よりも演奏に込めた柳生氏の感情がダイレクトに伝わってきた気がする。エッジの効いたギターの音に負けじと、富士葵もがなり声を上げる。何かと生きづらい世の中の閉塞感を打ち破るようなパワーを、二人の歌声と演奏から感じた。
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素晴らしい演奏をしたにも関わらずネガティブになる柳生氏をYouTubeコメントが元気づけ、再び柳生氏の「いえーい!」の声と共に花火演出を放つ流れを挟み、いよいよ生演奏コーナー最後の曲。この曲は富士葵が草野華余子氏のライブを見に行った時、アコギ1本で歌う草野氏を見て、自分もこんな風に歌ってみたいと思い、今回その念願が叶うとのこと。
そして披露されたギターアレンジの「MY ONLY GRADATION」は、これまでのライブで歌われてきた同曲とは、異なる新しい色をしていた。通常の「MY ONLY GRADATION」はロックで豪華な音たちで極彩色の音色のように感じるが、今日はアコギだけのシンプルな構成のおかげで、より富士葵の歌声の力強さが際立っていた。
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富士葵は「まだ歌いたいオリジナル曲のアレンジがある」と、しっかり次の機会も約束。来年8月で38歳になる柳生氏はコメントの拍手に見送られながら退場した。
再びステージ上で一人になった富士葵が次に歌うのは、初めて本格的に作詞作曲した曲「8分19秒」。「誰かの正解を生きていたんだ」と縛られた日常を生きる「僕」という、陰のある歌詞を書けるのは本人のネガティブな性格故だろうか。そんな「僕」に「甘き死よ来たれ」と決別の言葉を格好良く歌いあげる。間奏ではライブを見てくれている歌劇団へのお礼を述べながら「みんなもお家で手を振ってくれているのかな?」と思いを馳せていた。
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最後の曲を歌い終わり、今日オリジナル曲を歌いながら、それぞれの曲をリリースした時やイベントの思い出を追想していたことを語る富士葵。2021年12月4日に行われたYouTube Music Weekendで、プレミア公開した2ndソロライブ「シンビジウム」の動画とコメントを見てライブを思い出して深夜にも関わらず号泣したこと、そして「ありがとう」以上の感謝の言葉を探すほど感謝していることをみんなに伝える。
ここで告知タイム。2022年1月に富士葵オフィシャルコミュニティ開設、4周年記念キャラフレーム・アクリルキーホルダー発売(過去デザインも受注再版予定)、2022年4月末に羽化記念日オンラインライブ開催の3点が告知された。
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最後にこの4年間みんなと一緒に濃厚な日々を過ごしてきたことを懐かしみ、富士葵の「本日は本当にありがとうございました!」の言葉と共に一旦締められる。そして2019年10月5日の1stソロライブOVERTURE、2021年4月30日のオンラインライブPRELUDE、2021年6月18日の2ndソロライブCYMBIDIUMの映像が走馬灯のようなダイジェストで流れる。その間流れ続けるコメントのアンコールの声に応えて再び富士葵がステージに現れる。
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アンコール1曲目は「コヨーテ」。民族風のメロディに合わせて富士葵が軽やかなステップを踏みステージの上を舞い踊る。クソダサダンスとネタにされる姿はそこにはなく、ただ全身全霊の音楽と表現がそこにあった。
「コヨーテ」で本格的に振付師さんに振り付けを教わったこと、このライブの翌日の限定生放送の告知を話した後、最後のMCではライブ恒例の富士葵の変な話が始まる。「みんなが、あなたが、あなたとして生まれてくる確率は1400兆分の1」というトリビアから始まり、そんなあなたが自分と出会い好きになってくれることは奇跡、と富士葵は続ける。毎日「ありがとう」以上の言葉を探していると繰り返し「ありがとう、これしかないです」と、今共に歩んでくれる歌劇団への感謝を、これでもかと伝える。
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いよいよ本当に最後の曲は「羽化」や「ページをめくる」という歌詞があり、今日この日を締めくくるのにふさわしいと思い選曲したとのこと。「これからも葵と一緒に楽しいページとか、面白いページとか、たまには一緒に泣いちゃうページとか、たくさんたくさん開けて行けたらいいな」という思いを吐露し、歌うのは「Anitya」。「生きてく未完成のままで 物語を続けるんだ」という歌を聴きながら、富士葵という物語に出会い共に歩めた奇跡に感謝の念が込み上げた。
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ステージに降り続ける光と、流れ続ける拍手のコメントを浴びながら富士葵が4周年ライブを総括する。
「4年と言わず5年も6年も7年も8年も9年も10年も20年も(中略)100年も、ずっとずっと一緒に楽しいこと幸せだなと思えることをして行けたら良いなと思っています。本日は本当にありがとうございました!またねー!ばいばーい!ありがとう!」
エンドカードには富士葵からの手紙が添えられていた。富士葵と歌劇団はラーメン。自分の好物のラーメンを比喩に使うあたりが彼女らしい。「エンターテイ麺トライフ」という独特のワードセンスも健在。
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この4周年オンラインライブは、富士葵の魅力的な歌声や柳生氏の格好良いギター、ステージ上の煌びやかな演出などの見所もさることながら、富士葵がみんなへの感謝を普段よりマシマシで述べていたのが印象的だった。4年間を追想すると「キミの心の応援団長」の彼女が、誰よりも歌劇団に応援されていた気がする。だからこそ今日は感謝の繰り返しだったのだろう。だがそれは彼女が誰よりもみんなを応援していた裏返しに他ならない。歌劇団にしてみれば自分が受けた恩を応援として返していたようなものだろう。
100年一緒に、という大きな展望を彼女は語った。現実は1年先の未来さえ誰にもわからない。しかしどんな困難も、富士葵と歌劇団が支え合っていれば乗り越えられる、そう感じさせてくれる温かいライブだった。5年目はどんな美味しいラーメンが出来上がるのか、これからも富士葵のエンターテイ麺トから目が離せない。
富士葵4周年記念LIVE Ricordanza~追想曲~セットリスト
1.テイストレス
2.はじまりの音
3.Let it snow
4.オーバーライン
5.Q.E.D.
6.MY ONLY GRADATION
7.8分19秒
EN1.コヨーテ
EN2.Anitya