メンタルモデルによる「圧倒的な自己認識」が、組織を変える。 | ㈱ユーザベース Co-CEO 佐久間衡さん
「リーダーこそ、圧倒的な自己認識が不可欠です。私自身もこれまで手痛い経験を重ねてきました」
そう語るのは、株式会社ユーザベース Co-CEO の佐久間衡(さくま・たいら)さん。「経済情報の力で、誰もがビジネスを楽しめる世界をつくる」をパーパスに、NewsPicks や SPEEDA といった多様なサービスを展開しています。
「リーダーこそ、深い自己認識を通じて自分の特性とパターンを理解すること。それが共に働く仲間や組織全体の洞察力につながります。だからこそ、ユーザベースではリーダーが内省を深めることに投資し続けています」
そんな同社に、私・三好大助がファシリテーターとして組織づくりに伴走させていただくようになったのは2019年頃のことでした。
「私自身、経営者として大きなきっかけになりましたし、役員・リーダー陣にも目に見える変化が起きました。今では新任のリーダーみんなに "メンタルモデル・セッション" を受けることを勧めています」
同社に導入させていただいた "メンタルモデル" というアプローチは、いかなるもので、「わたしの在りよう」が変わることが、いかに組織にインパクトをもたらすのか?
ユーザベースを経営する佐久間さんと、じっくり対話をしてみました。
1. いかに自分の内側が現実を創りだすのか?:佐久間さんのケース
ー まず、佐久間さん自身、この「メンタルモデル」というアプローチに触れてみて、いかがでしたか?
これまで様々なコーチングを受けてきましたが、最初にメンタルモデルのセッションを受けたとき、ここまで自分の深層意識が分かるのだと、とても驚きました。
ー メンタルモデルとは、過去の痛みから端を発している "わたしは○○だ" という「自己定義」のことで、これを人間誰しもが持っている、と捉えています。
その自己定義が「行動パターン」を生み出し、「現実のパターン」も生み出している。そんな3階層のイメージが上の図です。
佐久間さんの場合はどんなメンタルモデルの構造があると分かったのか、改めて教えていただけますか?
まず気づかされたのは、「"自分の力で" 周りを引っ張れない、責任を果たせない自分はダメだ」と思い込んでいたということです。
それができない自分は、必要とされなくなってしまうし、その寂しさを味わいたくないと思っている自分がいる、ということにも気づかされました。
こないだ実家の長崎に帰っていたんですよ。そこでもまざまざと実感させられたんですが、うちの両親は責任感のカタマリなんですね。その姿勢から、自分も責任を全うしなければという意識が強まったし、全うできなければ明確に否定されていました。
このあたりの体験が、今の自分のメンタルモデルに強く影響しているんだなと実感しましたね。
ー この「自分の力で周りを引っ張らなければいけない、責任を果たさなければいけない」という自己定義から、どんな「行動パターン」と「現実のパターン」が生まれていると気づいたのでしょう?
責任感があること自体は悪いことではないと思っていますし、経営者としては自然なことだと思いますが、私の場合「"自分の力で" 引っ張ること、導くこと」に重きがありました。
そのため、自分と意見が一致していない相手との議論で、「こうあるべき」「こういうものだ」という "正しさ" で論破しようとする、という行動パターンが顕著でした。
これによって、自分自身の力で責任を果たせている感覚は得やすいのですが、一方でメンバーから意見や本音が出づらくなってしまったり、時に相手を傷つけてしまうといったことが、現実のパターンとしてとても不本意だったんです。
ー ケースによっては自分の "正しさ" で引っ張ることも有効ですが、その頻度が日常的に高いとなると、仰っていただいた不本意さが発生してしまうということですよね。
本当はメンバーと本音でぶつかりあって、Will を引き出し合える関係を欲しているはずなのに、実際にはむしろ心理的な距離が広がってしまい、自分も寂しさを味わってしまう。そんな不本意なパターンがあることに改めて気づきましたね。
ー メンタルモデルでは、この全体の構造を理解できるからこそ、「本当はどんな現実を創り出したいのか?」という「真の願い」につながり直せると見ています。佐久間さんはここからどんな「願い」につながれたのでしょうか?
ここまでの構造に気づいて、改めて私の本当の願いは、自分を含めた誰もが「異なるままに存在し合える」ことなんだと。
「わたしの存在」が必要とされるために自分の正しさを貫く結果、周りの人たちがあるがまま存在できなくなるのであれば、それは決して望んだ現実ではありません。
異なるままに、一人ひとりの Will が大事にされること。その Will がお互いに共有され、想像を越えた未来が共創されること。
これが私の本当に望んでいる状態であり、経営でも大事にしたいことなのだと、改めて腑に落ちました。
ー この願いに気づけたことで、これまでにない、どんな新しい選択肢を持てるようになったのでしょうか?
「正しさ」一辺倒のコミュニケーションは、相手の意見を殺すことであり、自分が望んでいる関係性とは逆の状態を創り出すのだと理解しました。
自分の意見を、絶対的なものとして伝えず、その意見の背景までしっかり伝えること。するとそれはただの洞察のシェアになり、その上で相手も自分の意見と背景を出しやすくなる。
そうした対話のあり方の先に、自分の望んでいる「本音が言い合える関係」「一人ひとりの Will が合わさって、共創造が生まれる状態」が創れるのだと思っています。
このメンタルモデルの構造を理解できたことで、自分の不本意なパターンが回っているときには自覚できるようになりましたし、「本当はどんな関係をつくりたいのか?」と自問して新たな選択を取れるようになったのは、私にとって大きな変化でした。
2. チームがメンタルモデルを理解すると起きること
ー ここまで佐久間さんご自身のメンタルモデルについて伺いましたが、ユーザベースさんとしてもメンタルモデルを紐解く「グループセッション」を様々なチームで導入いただいています。4~5人のグループでメンタルモデルを観ていくことで、どんな変化を感じていますか?
自分のメンタルモデルを紐解いてもらうことで自己認識が深まるのはもちろんですが、他者のメンタルモデルの紐解きに立ち会うことで、「なぜこの人はこの行動を取らざるをえないのか?」を理解し合えるのが大きいですね。
本人としてもその行動パターンを取りたいわけではなく、ついついやってしまうことがある。そんなときにメンバー同士がパターンを理解し合えていれば、不本意なパターンにハマっている時にフィードバックし合うことができます。
また他者のメンタルモデルのパターンを数多く知っていることで、リーダーであればメンバーそれぞれのパターンを察しやすくなり、マネジメントがしやすくなるという利点も感じています。
ー ユーザベースさんでは、人間関係のすれ違いや、マネジメントの問題が起きているケースのみならず、ゼロからチームを立ち上げるタイミングでもメンタルモデル・セッションを積極的に導入いただいています。どのような意図で実施されているのでしょうか?
初期の相互理解の時間を買っているような感覚ですね。3~4時間程度で、圧倒的な自己認識を促しつつ、他者のパターンとモチベーションの源泉を理解することができる。たくさんの自己分析ツールはありますが、この短時間で人間の背景をここまで理解できるのは、非常に効率がいいです。
ー 大きく組織を編成し直すタイミングで、新任役員の皆さん 10 人に対して、メンタルモデル・セッションを行ったケースもありました。
経営チームを新しくつくる時に導入することで、お互いのパターンの理解にとどまらず、初期の段階から「この経営チームはどんな強みを持っているのか?」「どんな失敗のリスクを持っているのか?」を理解できる。これにはとても助かっています。
ー 例えば、経営チーム全体として「方向性を示してストイックに目標達成すること」に強みがある。
一方で佐久間さんのケースと同じく、「〜すべき」と自分の正しさを押し通すパターンがチームに色濃いので、長期的にはメンバーが経営陣に依存的になってしまう。
このように経営チーム全体の強みとリスクを、初期から先読みできるのはメンタルモデルの良さですよね。
新しい経営体制の発足時から、強みとリスクを先読みした上で、先手を打っていけるのは大きなメリットです。お陰でこのケースも、スムーズなチームの立ち上がりと信頼関係が実現できたと思っています。
3. 「なぜそうならざるを得ないのか?」という人間理解のまなざしが、現実を変える
ー ここまで佐久間さん自身のケースと、組織として導入したケースについて伺ってきました。メンタルモデルというアプローチを体験してきて、今どんな方におすすめしたいですか?
全リーダー、必須だと思っています。
ー 全リーダーですか?(笑)
規模を問わず、他者をマネジメントする立場のひとなら、誰でもおすすめしたいですね。
リーダーは「どれだけ曖昧で複雑性が高いことを扱えるか」がカギだと、私自身の経験から感じています。特に経営の立場に近づくほど、意思決定に正解は存在しなくなっていくし、関係者も多くなりますよね。
そんな中で、まず一番複雑な「自分」をしっかり理解する。自分にはどんな風に物事を解釈するクセがあり、どんな意思決定のパターンがあるのか。
そして同じくらい複雑な「他者」一人ひとりの感情も理解していく。どんなパターンがあり、どんな Will を持つひとなのか。
そうした相互理解の上で、オープンに議論できれば、信頼関係は深まりますし、リーダー1人では創り出せなかった未来を、みんなで創ることにつながっていくはずです。
ー リーダーが「複雑性」を扱い、想像を越えたチームの共創造を起こしていくための基盤を、メンタルモデルというアプローチは整えてくれる、ということですよね。
人間関係を扱っていく上で、「違いを違いとして扱わず、違いを解消しようとすると死ぬ」と常々思っています。三好さんもよく言うように「その人は、したくてそうしてるわけではない」「なぜそうならざるを得ないのか?」という他者理解のまなざしが、組織の一人ひとりに共有されていくこと。マネジメントや経営をしていく上で、こんなに強いことはありません。
そうした意味でも、すべてのリーダーに、メンタルモデルはおすすめしたいですね。
4. メンタルモデルに興味をもってくれたあなたに
現在、メンタルモデルのセッションは、1on1 形式、2人以上からのグループセッション形式の2形式で、個人・法人ともに提供しています。
まずは、打ち合わせだけでも歓迎です。
ぜひお気軽に、こちらからお問い合わせください💁♂️