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This is startup - スタートアップで知財家がハマるポジション -

Startupを外からも中からも見てきた弁理士の回顧録

This is startup - スタートアップx知財 -」に書いたとおり、スタートアップは、一定期間内の急成長が求められる企業体である。
それが故に、スタートアップのインハウスで知財家が果たすべき役割も、スタートアップの外にいる場合とは違ってくるはずだ。

スタートアップの状況をサッカーに例えると

フィールドには味方プレイヤは8人しかいない。
キーパーは素人でグローブを持っていない。
スコアボードを見ると、キックオフ前から3点ビハインドだ。
残念ながら後半はないかもしれない。
相手(市場)は、スタートアップだからと言って手を抜いてくれるわけじゃない。
もちろん、命題は勝利、負ければチームは解散だ。

こういう状況でピッチに立ったときに、知財家はどうプレイすべきだろうか?

キーワードは、次の3つ。

  • ゲームメイカー

  • ボールボーイ

  • バランサー

スタートアップで知財家がハマるポジション

ゲームメイカー

スタートアップと大企業の最大の違いはリソースの量だ。
その中でも人的リソースの量的不足はいかんともしがたい現実だ。
質は負けていないが、量だけはどうにもならない。

ビジネス部門(Bizdev、Sales、エンジニアetc.)は、顧客側(前線)で能力が発揮される。
彼らには顧客側に張ってもらう必要がある。

コーポレート部門はディフェンスライン(後衛)を支えてもらわねばならない。
といってもデフェンダの数も十分ではないので、ディフェンスに専念してもらうことになる。

となると、ビジネス部門とコーポレート部門の間のボールのつなぎ役(インタフェース)が足りない。
それを知財家が担う。

元来、知的財産部は、様々な部門とコミュニケーションを取った上で、高い専門性が故に、最終解を自ら出すポジションだ。

例えば、特許実務に触れていると、目の前の発明(ファクト)に対して上位概念化と下位概念化(上下動)を繰り返すだけでなく、変形例(新たな可能性)の模索(左右の視野拡大)も怠っていない。

初めての技術や事業の相談が来れば、分かる範囲でいったん何とかする

これが癖になっているのが知財家だ。
スタートアップでは、この癖を活かせる局面がとても多い。

知財家が、情報(ボール)を上下左右に散らすことにより、ビジネス部門はビジネスに集中することができ、コーポレート部門はコーポレートに集中することができる。

危機を未然に回避することもできるし、味方の背中を押すこともできる。
マクロの視点で全体をコントロールすることもできるし、ミクロの視点で局地戦に参戦することもできる。

ボールボウイ

全体が俯瞰して見える位置にポジションを取っていると、こぼれ球がよく見えるようになる。
ときとして、「これって知財業務じゃないよな」と思うことだってある。
でも、その状況こそが「スタートアップで働く」ってことだと思う。

ボールを拾えば拾う程、いろんなボール(相談)が集まるものだ。
僕には「人事」だって飛んできた。

知財業務(基本的なドリブルやパス)は呼吸を吸うようにハイレベルにこなす。
その上で、こぼれ球(知財業務以外の業務)を拾う。

そうしているうちに守備範囲が、視野が、視座が広がる。
知財が拡張する。

そうすると、社内で最大の情報通になる。

バランサー

スタートアップの中では、信じられない事態(非常事態)が日常的に起きる(日常的に起きる非常事態って何だろう・・・)。

とはいえ、非常事態の対処に割ける人的リソースはない。

その局面で大事なことは、致命傷(レッドカード)を割けること。
そのために意識しているのは、危機の平均化(リスクバランシング)だ。

複数の穴が同時に空いたときに、手数が足りなければ塞げない穴が出る。
塞がない穴を見極めることも必要だし、応急処置能力も必要だ。
もちろん仲間を信じて任せることも必要だし、ときとして助けてもらうことも必要だ。

バランスを取りながら、ゲームメイクしながら、こぼれ球を拾う。
これがスタートアップにおける知財家がハマるポジションだと思う(そもそも、僕たち知財家って生まれつきそういう人種なんだと思う)。

This is startup

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