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馬の強さを測る方法

この馬は強い、この馬は弱い。そんな言葉で片付けていないだろうか。何が強いのか、何が弱いのか、そんな事も考えずに適当に言っていないだろうか。

今回のコラムは馬の強さはどうすれば分かるか、どういう馬がどのように強いかというところを徹底的に解剖して話そうと思う。

是非お楽しみください。


第一章 距離適性

馬の距離適性を理解するというのは簡単な事ではない。馬の能力の分類の中で最も難しいジャンルであるといえよう。

調教師や騎手ですら、馬の距離適性というものには中々気付けず、スプリンターがずっと2000メートルのレースを走っているなどということも良くある。

そんな馬の距離適性という部分を解剖して考えてみる。

①馬は車だ

まず、競馬における馬は車に例えるのが分かりやすい。馬にはエンジンやガソリンが搭載量、燃費が決まっている。優れたエンジンを持つ馬は一瞬の加速力に優れて馬は燃費は悪いだろうし、燃費がいい馬は長く楽に走れるだろう。そして、ガソリンが無くなるとパタっと足が止まる。そんなイメージでいいだろう。

②乳酸抵抗力理論とガソリン理論の違い

いつも僕が言っている乳酸抵抗力理論は、車で例えるとエンジンが熱を持ちすぎて動かなくなるようなものだ。馬でいうと乳酸が溜まりすぎてオーバーヒートして動かなくなるということになる。すなわち、上に書いたようなガソリンというのとは別の物である。

あくまでも、ガソリンの搭載量というのは距離適性における考え方であるという事を忘れないでいただきたい。

つまりは、乳酸が溜まりすぎてオーバーヒートして止まるのと、ガソリンが空っぽになって動かなくなるのは違うという事だ。

乳酸抵抗力理論について具体的に書いた記事になるのでイマイチ理解できない方はまずこちらを先にどうぞ。


③距離的適性の測り方

上に書いたガソリン理論と乳酸抵抗力理論、馬が止まる時にどちらが原因で止まったかをまず知る必要がある。

ペースが早すぎていつも走っている距離だけど、付いていけなくなった。これは明らかに乳酸抵抗力理論における止まり方だ。ペースが早くなった部分で乳酸が溜まりすぎて体が反応しなくなったのだ。

ゆったりとした流れで走り続けたけど、パッタリと止まってしまった。これはガソリンの燃料切れによるガソリン理論的な止まり方だ。

この判断がきちんと出来るようになると距離適性についての考え方が非常にクリアにしやすい。

序盤にハイペースになりやすいダートレースで多くみられる馬の止まり方はオーバーヒートであり、淡々とスピードに乗せて走り続ける芝レースで多くみられる馬の止まり方はガソリンが無くなった止まり方という事もイメージしやすいだろうし、覚えておいて欲しい事だ。

具体的にどこで乳酸が溜まったのか、どこでガソリンが無くなったのかという部分にフォーカスしてレースを見るとみるみるうちに馬の距離適性や乳酸抵抗値などが理解出来るようになるだろう。時間はかかるが、自分の勝負レースなどはこれくらいしても良いのではなかろうか。


第二章 能力の方向性

馬の能力には色んな方向性がある。簡単に言えば、長くいい脚を使うタイプ、一瞬のキレを活かすタイプ、スタートが上手なタイプなど。これらの方向性を明確にする事で、馬の能力がクリーンになっていく事が多い。

そして、馬の能力の方向性を知る事で、どのレースで好走するのかを推測しやすくなる。

では、細分化して考えてみよう。

①基礎スピードについて

長くいい脚を使うタイプの馬がいる。

コントレイルやアーモンドアイ、今の3歳世代でいうとサークルオブライフ、イクイノックスなどもそうだろう。淡々と速いペースで走り続けれるのがこのタイプ。

シンプルに基礎スピードが速く、他の馬たちは乳酸が溜まってくるようなペースでも有酸素系で走れるのが最大の特徴。人間で例えるなら中距離の陸上選手を思い浮かべると分かりやすいだろうか。僕達素人が、中距離のレースに参加すると早々に無理なペースで走らされ、無酸素運動になり、乳酸が溜まりオーバーヒートするだろう。しかし、この基礎スピードが速い陸上選手達にとっては無理なペースではないため、乳酸を溜めずに有酸素運動で消化出来てしまう。この差が長くいい脚を使えるかどうかの境目になってくる。

この能力が発揮されるのは、ある程度淡々とペースが流れてくれないと分からない。ドスローの瞬発力勝負になった場合には、基礎スピードがあるorないに関わらず有酸素運動になるため、長くいい脚を使えるタイプなのかどうかは分からない。

長くいい脚を使えるという事は、上級条件でも問題なく活躍する事が出来るため、かなり強い馬になっていく可能性が高い。

そして、逆転の発想にはなるが、長くいい脚を使えるタイプなのかどうかを判断するよりは、基礎スピードが足りないという部分から長くいい脚を使えないタイプという判断をした方が汎用性が高い。

例えば、最近の重賞でいうと、2021阪神JFで2番人気に推されたステルナティーアという馬が全く切れ味を発揮する事なく沈んだのは、基礎スピードという部分が不足していて、スローからの瞬発力勝負向きの馬だった事が大きな要因と考えられる。前走のサウジアラビアRCでそこに気付けた場合、この馬を買わなくてよかったとなるわけだ。新馬戦では明らかにギアチェンジをしてからピッチが上がり加速していたが、サウジアラビアRCではそこまでギアチェンジが出来なかった。だから、基礎スピードが足りていないスローからの瞬発力勝負向きの馬だ、長くいい脚を使えない馬なんだと判断出来るのだ。


②乳酸抵抗力について

①の基礎スピードとは別物と考えて欲しい。勿論、基礎スピードが高いと他の馬が乳酸を溜めるようなペースでも、乳酸が溜まらず有酸素運動で走れる。だが、全馬が乳酸を溜めて走らないといけないペースになる事があり、その時に大きく関わってくるのは乳酸抵抗力という部分だ。

乳酸抵抗力がとても優れている馬として挙げられるのは芝馬で言うならパンサラッサやエフフォーリア、ダート馬なら多く存在するがオメガパフューム、チュウワウィザードなどもそうだろう。この馬たちは乳酸が溜まった状態でも粘り強く自分のパフォーマンスが発揮できるのが特徴である。

乳酸抵抗力が高いと、どんな状況でも自信のパフォーマンスを発揮しやすくなり、乳酸抵抗力が低いと一気にパフォーマンスを発揮できなくなる。

乳酸抵抗力が低いとどうなるかという簡単な例として分かりやすいのが、アーモンドアイの有馬記念だ。アーモンドアイはとても基礎スピードが高く、その基礎スピードが高すぎるが故に今まで多くの乳酸を抱えたままレースをした事がなかった。だが、有馬記念はレース序盤からかなりのハイペースになり、そのペースに付いて行った事と道中行きたがった事もあり、一気に乳酸が溜まった。そのままレースが進み、更には道中でもう一度ペースが上がった部分があった。そうする事で2度乳酸が溜まり、最後の直線では全く手応えが無くなってしまった。伝説級に強い馬が沈んだ理由はここにあるのだ。勿論アーモンドアイの乳酸抵抗力が著しく低い訳ではないが、複数回勝っているジーワン馬と比べると高い方では無かったと言えよう。その事がこの事態を招いたのだ。

次に、エフフォーリアが乳酸抵抗力が高いといった理由を解説しよう。この馬は皐月賞では前目に行ってそこそこペースが流れていたのにも関わらず、普段と遜色ないストライドの伸びで突き抜けて大勝した。このレースだけでは根拠として薄いが、その次のレースのダービーでは終始折り合いを欠きながらも最後の直線ではいつもの走りを見せつけた。この2レースから基礎スピードの高さと力んで乳酸を溜めても最後には自分のパフォーマンスが出来るという事が判明した。基礎スピードと高い乳酸抵抗力を備えた馬は、本当に隙がない素晴らしい馬である。

このように、乳酸抵抗力は人気馬の粗探しにも使えるし、人気馬の信頼を増す物としても使える。

また、2021年エリザベス女王杯のような息を入れる間もない序盤から無酸素運動が続くようなレースになると、後方待機の乳酸を溜めずに済んだ馬達が一気に差してくるという展開予想にも使える。僕自身、この考え方で2021帝王賞は◎ノンコノユメにして馬券を取る事が出来た。それは、どうしても乳酸抵抗力というのは限界があり、どんな馬でも乳酸が溜まりすぎると自由に動けなくなるレース質がある。それを回避するには後方待機で乳酸の溜まらないペースで走るしかない。そういった理由で前の馬が沈み、後方の馬が恵まれると判断できるわけだ。

③ギアチェンジ

馬は基本的に騎手の合図を受けてギアチェンジをしようとする。ギアチェンジが出来る出来ないはガソリンがどれくらい残っているかや、乳酸がどれくらい溜まっているかによって決まってくるが、ここではガソリンが有り余っていて、乳酸が溜まっていないと仮定して話をする。

基本的に合図を受けるとギアチェンジをして、ストライドが広がりピッチが早くなる。ただ、これがそもそも出来ない馬がいるし、あまり変わらない馬もいる。この部分にフォーカスして見る事が馬のキレという部分を見る事に繋がる。逆にストライド、ピッチが変わりすぎる事で一気にガソリンを使い切ってしまう馬もいるため、長くいい脚が使えないという風になってしまう。

ここはある程度レースでの走法を注視することで見極めれると考えている。

また応用ではあるが、普段ギアチェンジが出来ていたのに今回のレースでは出来なかったなという場合には、ガソリン切れか乳酸によるオーバーヒートがあったと考えられるため、そういった判断にも利用できる。

④折り合い

メンタルな部分や状態的な部分で道中無駄な力を使ってしまわないかという指標になるのが折り合いである。馬群に囲まれるとどうしても力んでしまったり、ダートでいえば砂を被ると力んでしまったりする馬も多くいる。

この考え方も競馬では重要で、折り合いを大きく欠くとレースでは全く力を発揮出来なくなる事が多い。だが逆に折り合いを大きく欠いたのに、強い競馬をしたとなると、それは乳酸抵抗力がかなり高い証拠にもなるだろう。

⑤スタートの良し悪し

スタートというのは競馬においてかなり重要であるが、レースの内容とは切り離して考えるべきものである。何故なら、ゲートスタートは特にスタミナを使わずにポジション決定出来るため、スタートが上手いだけでいいポジションが取れる事が多いからだ。このスタートの良し悪しというものは、特に短距離レースを予想する上でかなり重要になってくるので、馬の能力の方向性としてしっかりと意識しておいた方がいい。テンの3ハロンタイムだけではなく、映像を見てスタートの瞬間にフォーカスして見る事が大事と言えよう。

第三章 能力の判断方法

馬の強い、弱いという部分を言語化、数値化出来るのがベストではなかろうかと考える。

競馬には指数というものが出回っているが、僕の考え方は全く新しい考え方だ。

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六角形のグラフに

A基礎スピード

B乳酸抵抗力

Cガソリン搭載量

Dギアチェンジ

E折り合い

Fスタート

この6つの評価を記して競馬に重要な能力を視覚化する。1つ1つにフォーカスすれば、このグラフを作り上げる事は難しい事ではない。

そして、勿論レースに応じて重要な項目というのは変わる。例えばスローからの瞬発力勝負であれば基礎スピードよりギアチェンジ能力が問われるだろうし、距離が長くなればなるほどスタートの重要性が下がり折り合いやガソリン搭載量の重要性が上がる。

これがコース形態によってや、レース質によって目まぐるしく変動する。

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僕が常日頃述べている競馬ピラミッドの馬場(コース形態、馬場状態)などから必要な項目をピックアップし、その項目で馬の能力が高いのかどうかを判断する。

あとがき

このように1つ1つの能力を細分化し、判断する事で、この馬は強い、弱いと言った薄い議論にならず、中身のしっかり詰まった議論になるだろう。これを競馬界のスタンダードにしたい。そんな思いでこのnoteを書かせていただきました。是非面白かったら拡散宜しくお願い致します。いいねandリツイートを沢山してください。皆様の応援が僕のモチベーションになります。


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