目眩と
朝起きたらめまいがして、そのままお昼が過ぎるまでくらくらし続けていた。起きて数分、くらくらすることは今までもあったけれど、こんなずっと症状が続くのははじめてだ。
とにかく視覚的に世界がぐるりぐるりまわっている。気分がわるいわけではなかったから、わりと冷静に観察できていたのだけれど、足が地面についているのに宙に放り出されたような感覚で少し可笑しかった。
とはいえ会社でいつまでもまわりまわる世界と戯れるわけにもいかず病院へ行くことに。「めまいだから内科かな」と思ってたけど「耳鼻科だよ」といわれ、たしかにそりゃそうだなと思う。
午後の診察時間前、自分の他に誰もいない病院につくと、すぐに診察室に呼んでもらえた。念のため、と持って行った文庫本を開くことはなかった。少し残念だった。
視界がまっくらになるアイマスクをされて、いろんな方向に頭を回されたのだけど、視界が無くても(まっくらでも)目が回ってるのがわかることにおもしろくなってまた笑ってしまう。見えてはなかったけど、今日のあの検査のときが人生でいちばん目がまわっていたんじゃないかしら。あのめまいをちゃんと見たかった。
診断は「良性突発性頭位めまい症」だった。わかりやすく、おもしろい名前。
診察室をでると、待合室にはもう5、6人の人が座っている。銀座の病院はサラリーマンが多いのかな。みんなマスクをしている。ひとくみの親子がいて、なんでこんなビジネス街の病院に?と思った疑問は、するりと一瞬で現れて消えた。
さっきまで雨が降りひどく寒かった冬の銀座は、傘もささずコートを脱いで歩ける天気になっていた。午後から南風が吹いて暖かくなると天気予報士の斉田さんがテレビで朝言ってたけど、ほんとうだったな。1時間まえまで「うそつき!」と叫びたいくらい寒かったのに。
会社についてパコソンに向かいなおす。病院で検査のために首ををぐりぐりされたせいか、さっきのんだ薬のせいか、それとも天気のせいかよくわからないけど、めまいは少しおさまっていた。
世界がまわるのは愉快な気もするから、たまになら出てきてもいいぞ、と少し思う。少しだけ。(ほんとは出てこなくてもいいけど、出てきてもいいぞ、くらいの気持ちでいたい)
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