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くらし

9月末から10月にかけ、私のルーティン仕事に、季節の入れ替え作業が加わります。夏の布団を片付け、冬の布団を準備。毛布を出して、扇風機を片付ける。すべての部屋にファンヒーターを設置して、灯油を入れて動作を確認。あとは、11月中旬には網戸を片付け、窓に断熱材を貼る。気密性が高く、空調が整った建物ではないので、いろいろと苦心しながら快適空間を維持。しばらくは、気温も上がったり下がったりどっちつかずの気候が続きそうです。

お客さんとの会話の中で、丁寧な暮らしって何だろう‥という話になりました。朝からコーヒー豆を挽いて、丁寧にドリップするお客さんを見て、なんか素敵だなぁと思い、そんな話題になりました。

私のイメージするそれは、やっぱり朝からコーヒー豆を挽く‥とか、料理を作り、器にこだわって、食事を楽しむ。あとは、暮らすことに対し時間を惜しまない‥。庭でサラダになる葉物野菜くらいは作っちゃう‥そんなイメージです。

それと比べると、私は宿で住み込んでいるので、常に人との共同生活。台所もトイレもお風呂も共有スペース。自分の時間や空間はなく「暮らし」は100%「仕事」。だからこそ、ちょっとあこがれるそんな「丁寧な暮らし」。

こだわりの調味料に、無農薬野菜。山の中で古民家に住んで、家の横を流れる清流で野菜を洗う。そして、その家には薪ストーブがあって‥。20代のころに知り合った人がそんな生活をしていました。きっと影響を受けたんだと思います。かえって若い時の方が「丁寧な暮らし」に憧れがあって「田舎暮らし」だったり「自給自足」に興味がありました。※あくまでも丁寧な暮らしのイメージが田舎暮らしなので。

両親はサラリーマン、家は町中の住宅地。日々会社へ通勤し営業周りでストレスもたまる、そんな暮らしの真逆にいる人を傍から見ていいなぁ~とあこがれてたのかもしれません。

週末ごとにそういうところへ通い、自然農のイベントに足を運ぶ。その世界に足を突っ込みかけたけど、仕事を辞めて20代半ばから旅する中で、定住する感覚がつかめなくなりました。

荷物はザック一個で十分だし、常に他人との共同住み込み生活をする中で、素敵な家具や布や食器はむしろ自分には無用なものに‥。

先日、お客さんと暮らしに関する話をした時に、改めて私はバタバタした人生で今は自分の空間も時間もなく、丁寧には程遠い生活をしてるなぁ‥と思いました。

そして、お隣島根県の石見銀山にある群言堂さんの話題にもなりました。群言堂オーナーの松場さんに関する本を何冊も持っていて、読むとまた憧れが増してしまいます。20代のころ、足しげく通った、古民家をうまく再生したそのお店のことが大好きで、こんな家に住みたい!といつも思っていました。実際に、石見銀山のあの大森地区で物件探しをして、内覧をしたこともあります。ここ最近も、同じ通りで売りに出た古民家物件が気になって、ずっと見ていました。もちろん、群言堂の松場さんのライフスタイルそのものにも憧れがあります。

本を読んでわかるのだけど、その松葉さんの「暮らし」とは、日本人が今まで普通にしてきた生活そのもの。

私はおばあちゃん子で、子供のころはよくお手伝いをしました。梅干しをつけたり、吊るし柿を作ったり。笹巻の季節には笹を上手を団子に巻くこともしました。靴下に穴が空けばそれをかがる、物を大事にすることを教わりました。そして、二十四節季、暦を大事にした暮らし。季節を感じるよう、季節ごとに掛け軸を選んでかけることも、建具も季節で変える、夏には風鈴をつるす。

決して、古民家で小川が流れるような場所ではなく、住んでいた家は、区画整備された住宅地でしたが、そんな街中でも丁寧な暮らしはできていたのだと思います。

大山にいて、季節ごとに寝具を変え、季節ごとに網戸をつけたり外したり。日々はたきをかけて掃除をしたり、お客さんを受け入れるために、家を整えています。これはこれで丁寧な暮らしなのかもしれない。おばあちゃんは家族のために、そして松場さんは家族やお客さんのために、それをしているのでしょう。

そういった雑務をめんどくさいなぁ‥と思いながらも、お客さんに快適に過ごしてほしいからこそ、季節の移り変わりに敏感になります。以前、旅館で働いてた時は、ここに料理が加わりました。季節の山の恵みに、器に飾る季節の花や葉っぱ。それを食事に提供していました。そういったことがとても楽しく感じられ、よろこんで山菜やキノコを採りに、そして飾りの葉っぱを拾いに山へ入りました。

どうしても形から入りたいから、田舎で古民家でそういういわゆる古いものに囲まれたいのだけど、でも、今、自分のいる場所で四季を感じ、移り行く外の景色を眺めながら暮らすことも「丁寧」な暮らしと言えるのでしょうね。

今日は週末、外は晴れ、暖かく穏やかな気候。山は色づき宿からもきれいな山肌が見えています。一日のうちで、座ってくつろぐ時間に、Noteを書くのですが、日々のことを思い返し、文章を書く時は、自分がとてもリラックスしているとき。いろんな出来事を思い返したり想像したり、そういう時間が持てることは、それはそれで丁寧な時間がある‥のかもしれません。

さて、チェックアウトの清掃と、洗濯。そして今日は朝からイベントの日、その合間にようやく座ってインスタントコーヒーで休憩、コーヒー片手にパソコンに文章を打ち込み中。さて、そろそろ「とりクラブ」メンバーが野鳥観察から帰ってくる!急いで仕事を片付け、みなさんのためにおいしいコーヒーを入れたいと思います。

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