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クレーマークレーマー : 妄想ショートショート009

クレーマークレーマー

美奈子は駅前のハンバーガーショップの常連客だった。彼女の注文はいつも特別で、店員たちは彼女の要求を満たすのに四苦八苦していた。例えば彼女のコーヒーは、ちょうど93度でなければならない。

ある日、いつものように彼女は店に現れ、コーヒーの温度を1度でも間違えたら訴えると迫った。彼女の狂気じみた要求は日に日にエスカレートし、店員たちは彼女を見るだけで震え上がっていた。

しかし、ある日から突如として店の対応が変わった。美奈子が店に入ると、彼女の好み通りのコーヒーがすでに待っていた。デリバリーも完璧で、彼女の指摘することは何もなかった。
「なぜこんなに完璧なの?」と驚く美奈子に、店長は新しいデータ解析技術の導入を明かした。それはお客様の要望をリアルタイムで分析し、サービスを即座に向上させるものだった。

美奈子の要望は満たされていたが、複雑な気持ちだった。心の奥底の欲求は、相手の不手際をみつけ指導し、自分がコントロールしている感触を得たかったからだ。
彼女は新しいシステムに挑戦するかのように、さらに特別な注文を始めた。しかし、店はその都度、彼女の要求を完璧に満たしていった。

ある日、彼女は驚愕の事実に気づいた。
彼女の食費はそれなりの高級レストランに毎日通えるくらいの出費になっていた。駅前のハンバーガーショップは一般のお客様には普通の価格を適用していたが、美奈子のような特別な要求を持つお客様には、もちろんプレミアム価格を適用していたのだ。



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あとがきのようなメモ

ファーストフード店で「いつものやつ!」と注文するお客様が存在するそうです。新人アルバイト君は「へ?」となり、怒鳴られる。
良い社会勉強になるのかな、。

データ活用が進むと、このショートショートのようなことが起きても不思議は無いです。
あるお店が、各人に合わせてサービスも価格も変化させる。ダイナミックプライシングの発展版。
あ、寿司屋さんなどは昔からか。
それがテクノロジーでもっときめ細かく、フェアに進化していくのかも知れません。

クレーマー対策もどんどん進化していくでしょう。
お店も明らかに害になるお客様は排除する仕組みが取り入れられるようになるはず。
最近は万引きの犯人の映像データを蓄積しておいて、その人物と思われる人が再来すると…入口でその人にだけ聞こえるように警告が流れるシステムもあるそうです。
逮捕するには現場を押さえなければなりませんが、
入口での"警告"なんですね…ニ度と店に来なくなるそうです。一見優しい対応ですけど、その後は生きた心地しないでしょう、。
神様(デジタル様)が見てる。

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