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人間の創造性とは何か? 生成AI時代に問われる根源的な問い

人間の創造性とは何か?

生成AIの登場により、“人間の創造性”が改めて問い直されています。創造性とは単に作品を生み出すことではなく、自分自身の存在を通して何かを伝えたいという根源的な欲求に基づくものかもしれません。AIにはそのような衝動はなく、これは人間が持つ固有の創造性といえるのではないでしょうか。

もう少し深掘りし、”人間の創造性”の仮説を考えてみます。次の3つの要素を挙げてみました。

1. 表現の欲求 - 自分自身を通して、何かを伝えたいという根源的な衝動。

2. 身体感覚に基づく経験 - 五感や身体の動きから得られるインスピレーションや直感。

3. 問い続ける力 - 答えのない問いを投げかけ、考え続けることで新たな価値を発見する能力。

これらの要素は、データからアウトプットを生成するAIには欠けている部分であり、人間が持つ独自の特質です。
また、人間の創造性は、様々な表現に触れ、体験を重ね、試行錯誤する中で磨かれていくものです。私自身、まだ存在しない将来のプロダクトを描く時、まずは実在するモノゴトを観察し、分解し、霞のようなモヤモヤしたところから新たな構成へと再構築する作業を行ってきました。その時、紙と鉛筆で霞の中からなんとか実体を掴もうと、何枚も何枚もスケッチを描き続けるプロセスは、時に締め切りのプレッシャーで胃が痛くなるものでした。MidjourneyやStable Diffusionが現れた時の衝撃を、理解していただけるでしょうか。これらのツールは、まるで私の頭の中にある「霞」を瞬時に具体化してくれるような存在でした。
もちろん、「その痛みがあるからこそ価値が生まれる」と感じる方もいるでしょう。しかし、本当に苦労するべき部分はそこだったのでしょうか?生成AIがもたらす変革は、創作のプロセスそのものを再定義し始めています。

「創造のカタ」と再現性の向上

私が個人的に期待し、現在取り組んでいるのは、暗黙知であった創造の「カタ」を解剖し、創造の再現性を高めることです。人間の”センス”や”インスピレーション”といった言葉は、しばしば曖昧で、捉えどころがなく、神格化されがちでした。しかし、生成AIの登場により、これまで創造性とされていた領域の一部は、すでに再現可能になりつつあります。

例えば、画像生成AIのDiffusion Modelは、私がスケッチを重ねるプロセスに非常に似ていると感じました。観察(理解)、分解、再構築、評価というサイクルを通じて、まだ存在しないものを徐々に見える形にする。このモデルは、クリエイターが行ってきた創造の思考をシミュレートできているのではないでしょうか。これも一つの、創造の「カタ」が仕組み化され、テクノロジーによって再現可能になった例とも言えます。生成AIの活用は、今後アーティストやクリエイターが意識的に新たな作品を生み出すための新たなアプローチとして、発展していくと考えています。

With AI 「共創」による新たな可能性

人間とAIとの「共創」とは、単なる協力ではなく、人間の感性や体験とAIの分析・生成能力が交わることで、これまでにない新しい価値が生まれるプロセスです。1+13になるような創造のダイナミクスが、AIが単なる効率化ツールから「知的な鏡」としての存在へ進化する瞬間を生み出しています。

今までは捉えどころのなかった"インスピレーション"や"センス"というものも、AIとの対話を通してより頻繁に引き出せるようになり、意図的に新しい表現やアイデアを生み出すプロセスが確立されていくと考えています。AIが人間の創造性の一部として進化することで、クリエイターは自らのアイデアを探求し、深め、さらなる高みへと進むためのプロセスを手に入れることができるはずです。

人間にしかない創造性と身体感覚の重要性

しかし、その中でも重要な要素は、AIにはない人間だけの特質です。AIは膨大なデータを元に様々なアウトプットを生成できますが、その作品が生み出される動機や感情、さらにはその表現が持つ意味や価値についての理解は人間のものとは異なります。人間にしか持ち得ない「個人的な経験」や「感情の揺らぎ」、さらには「曖昧さ」や「矛盾」もまた、創造性の一端を成していると考えられます。

特に身体を通して得られる経験や知覚は、あらゆる創造の源泉であり、これはAIには再現できない“人間らしさ”の根幹です。つまり、身体感覚の再現こそが、作品そのものに宿る「人間性」なのです。

未来の創造性の再定義

この「人間にしかない創造性とは?」という問いに対する私の答えは、まだ仮説に過ぎません。生成AIと共に創作のプロセスが進化し続ける中で、私たち自身が創造性について再定義することが求められているのかもしれません。そしてその過程で、私たちは新しい問いを投げかけ、これまでにない視点や価値観を発見することになるでしょう。

創造性とは、単なるアウトプットの技術ではなく、「問い続ける力」や「自分の身体経験を投影し、意味づける力」にも関わるものです。人間がAIを活用することで、自分自身の問いを深め、新たな答えを見出す過程こそが、創造性の本質といえるでしょう。
そして、AIの進化が加速する未来においてこそ、人間にしかできない創造的な問いかけや自己表現がますます価値を持ち、創造の本質そのものが深まっていくのではないでしょうか。


2024年11月8日朝
信号トラブルで止まってしまった東武東上線にて

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