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聖徳太子の奈良・飛鳥地方への旅

奈良県南部にある飛鳥地方を訪れました。この地は、日本の歴史と文化の源流ともいえる、私にとって特別な場所です。

1,500年前、飛鳥時代と呼ばれる6〜8世紀。ここは日本の政治、文化、宗教が大きく花開いた中心地でした。現在でも遺跡や寺院が数多く点在しており、古代の息吹を感じられる場所です。その風景に立つだけで、遥か昔の人々の暮らしや思いが胸に迫ってきました。

昨年、日本の歴史を描いたまんがを夢中で読みました。その中で描かれた飛鳥の地には強い憧れを抱いていました。歴史好きである自分にとって、ここを訪れることはまさに夢の一つ。日本人として、この場所を自分の目で見なければいけない、そんな思いがずっと心にありました。

今回、その思いをようやく実現することができました。飛鳥の空気に触れ、目にした風景は、ただの観光ではなく、私にとって大切な記憶の一部になりました。訪れてよかった、この一言に尽きます。

まずは法隆寺へ

京都で新幹線を降り、奈良を経由して法隆寺へ向かいました。607年に創建された法隆寺は、飛鳥時代の仏教文化の中心的な存在だったと考えられています。

JRで奈良経由の法隆寺へ

JR大和路線は都内では見かけない車両

奈良から飛鳥時代ゆかりの場所を訪れるなら、法隆寺が最も近いと感じました。そこで、まずは法隆寺に足を運び、その後に他の場所を巡る計画を立てました。

奈良駅からは大和路線に乗りました。この路線は思った以上に混んでいて、この日もほぼ満席。学生や観光客が多く乗っている印象を受けました。約10分少々で法隆寺の最寄り駅に到着します。移動時間が短いので、アクセスがとても便利でした。

ズバリお寺の名称の駅名

その名もなんと「法隆寺駅」。駅前広場のような名前ではなく、駅そのものがこの名を冠しているんです。随分とストレートな名前だなと感じました。

法隆寺周辺の観光は自転車が便利

法隆寺駅から法隆寺までは少し距離があり、歩くと約25分ほどかかります。タクシーを利用するのもいいのですが、ちょうど前に降りた人がタクシーを使ってしまい、駅前にはタクシーが1台も残っていませんでした。

そんな時、目に入ったのが駅前の貸自転車。これは便利そうだと思い、自転車を借りて法隆寺周辺を散策することにしました。

駅前にあった貸自転車

法隆寺駅から法隆寺までは、自転車で約10分ほどの距離です。住宅地の中を抜けながら、気持ちよく進むことができました。

借りた自転車はいわゆる「ママチャリ」タイプ。でも、歩くより断然効率的ですし、タクシーだと帰りに捕まえられるか心配になりますよね。その点、自転車ならそんな心配もなく、自由に移動できるのがいいところです。

法隆寺の自転車置き場にて

法隆寺

法隆寺は、日本を代表する仏教寺院で、飛鳥時代に建立されました。その起源は、病気平癒を願い仏教寺院を建てるという誓いにあります。この願いを聖徳太子が形にし、なんと607年に建立されたと伝えられています。

おそらくこれが法隆寺の参道

法隆寺に近づくと、松並木が見えてきます。この風景には、自然とテンションが上がります。

仏教寺院らしく、参道にはほとんど出店がありません。静かで厳かな雰囲気を大切にしているからでしょう。そういえば、多くの寺院でも出店が少ないことに気づきます。ただし、浅草寺(東京)や清水寺(京都)など、観光地化が進んだ場所は例外ですね。

法隆寺の仁王像

仁王像は「金剛力士像」とも呼ばれ、寺院を守るために悪霊や邪気の侵入を防ぐ役割を果たしています。

法隆寺の仁王像は、飛鳥時代ではなく鎌倉時代に作られたと考えられています。

この像は2体で一対となっており、「阿形(あぎょう)」と「吽形(うんぎょう)」と呼ばれます。阿形は口を開けて宇宙の始まりを、吽形は口を閉じて宇宙の終わりを象徴しています。

こちらが阿形。口を開けています。

こちらが阿形の仁王像です。口を開けている姿が特徴で、「阿」という音を表していると言われています。

吽形

こちらが吽形の仁王像です。「吽(うん)」という音を表していると言われています。どちらの像も、表情や筋肉の緊張感がとても迫力があります。

飛鳥時代や平安時代の建造物と比べると、法隆寺の仁王像がそれらとは明らかに違うことに気づきます。鎌倉時代以降の仏像は写実的な表現が多く、その特徴を旅を重ねるたびに実感しています。

西院伽藍

まずは西院伽藍を見学しました。伽藍(がらん)とは、仏教寺院の主要な建物が集まったエリアのことで、寺院全体の構造や配置を指します。

五重塔と金堂。早朝は逆光になります。

中門を抜けると、金堂と五重塔が目の前に現れます。金堂は仏像が安置された法隆寺の中心的な建物で、日本最古の木造建築です。

五重塔は高さ32.5メートルもあり、1,500年前にこれほどの建物を建てる技術があったことに驚きます。しかも、地震の多い日本で倒壊せずに現存しているのは本当にすごいことです。

五重塔。まだ観光客が少ない。

五重塔は、仏教的にも象徴的にも深い意味を持つ建物です。地・水・火・風・空という仏教の五大要素を表し、これらが物質と精神の基盤とされています。

また、五重塔は仏陀の遺骨を納める「舎利塔」としての役割も担っています。内部に見える像がどこか宇宙的な雰囲気を感じさせるのは、こうした五重塔の象徴的な意味が反映されているからかもしれません。

東大門を経て東院伽藍

法隆寺の東院伽藍へ向かいました。まだ朝の9時前だったので、観光客や修学旅行の学生もほとんどおらず、静かで落ち着いた雰囲気でした。法隆寺は朝8時から拝観できるので、早めに訪れるのがおすすめです。

東大門に向かう道も、人影はほとんどなく、とても静かな道のりでした。

観光客がほとんどいなかった

法輪寺

法輪寺は奈良県斑鳩町にある仏教寺院で、法隆寺のすぐ近くにあります。聖徳太子ゆかりの地として知られ、法隆寺と合わせて訪れるのにおすすめのスポットです。

正式名称は大福光寺

法輪寺は、聖徳太子ではなくその子孫によって建立されたと伝えられています。一度平安時代末期に消失しましたが、その後再建され、現在に至っています。

見どころは三重塔です。保存状態がとても良いので当時のものかと思いきや、実は1975年に再建されたものだそうです。それでも、飛鳥様式が忠実に再現されているため、まるで当時の建物を見ているような気分になります。

法輪寺の三重塔

法輪寺へは法隆寺から自転車で向かいました。周囲は驚くほど豊かな自然に囲まれていて、静けさの中にたたずむ、とても落ち着いた雰囲気の寺院でした。

薬師如来像を拝観しているときに、お寺の方とお話しする機会がありました。この像は当時のものだそうですが、手の部分はお寺で大切に保存されているとのことでした。

法輪寺の周辺

飛鳥時代からこんなに細かい部分まで仏像が保存されているなんてすごいなと思っていましたが、実は手の部分はお寺の方が作られたものだそうです。

薬師如来像の手について、「本来はもっと“むぎゅっ”とした形だったけれど、今では社会通念上…」と説明されました。「むぎゅ」ってどういうことなのか、聞けばよかったなと後から少し後悔しています。

法起寺

法輪寺から自転車で法起寺へ向かいました。法隆寺・法輪寺・法起寺の3つは「飛鳥三塔」と呼ばれているそうです。

法起寺といえば、やはり三重塔。現存する日本最古のもので、8世紀に建立された貴重な文化財です。

法起寺の三重塔

法起寺の裏側にはコスモスが一面に咲き乱れ、多くの人が訪れていて、法起寺本体よりも賑わっているように感じました。

コスモス畑

コスモスと法起寺の三重塔が見事に調和していて、とても美しい光景でした。三重塔をじっくり見ると、各階のバランスが絶妙で安定しているのがよくわかります。他の塔にはない、この安定感が特に印象的でした。

法起寺の三重塔とコスモス

自転車を法隆寺駅で返却し、そのまま次の目的地へ向かいました。

いよいよ飛鳥地方へ

法隆寺駅から電車を乗り継ぎ、橿原神宮前駅に到着しました。

飛鳥地方の観光もレンタルサイクルが便利

橿原神宮前駅でレンタサイクルを利用し、自転車を借りました。タクシーよりも自転車の方が機動力があって便利だと感じたからです。

借りたのは電動アシスト付きのママチャリタイプで、料金は半日で1,500円ほどでした。

THEママチャリ。でも電動アシスト付き

電動アシスト付き自転車は少し重いのが難点ですが、長距離を走る予定だったので迷わず選びました。

事前予約なしでもスムーズに借りられたのも便利でした。そういえば、京都で紅葉を見に行ったときは1日で40kmも走ったな…とふと思い出しました。

日本最古の仏像を求めて「飛鳥寺」へ

自転車で飛鳥寺を目指しました。途中で道を間違えましたが、なんとか無事に到着。今回の旅で一番行きたかった場所です。

飛鳥寺は、日本最古の仏教寺院で、6世紀末頃に蘇我馬子が建立したものです。当時は政治と仏教が深く結びついており、飛鳥寺は蘇我氏の権力を象徴するような存在だったそうです。

飛鳥寺

飛鳥寺には、日本最古の仏像とされる飛鳥大仏が安置されています。驚いたことに、ここでは写真撮影が許可されていました。有名な観光地で撮影OKなのは、ほとんど初めての経験かもしれません。

飛鳥寺の飛鳥大仏

飛鳥大仏は、長い歴史の中で火災などの被害を受けましたが、修復され、今でもその姿を見ることができます。そのたたずまいには思わず驚きました。

他の寺院の仏像とは少し雰囲気が違う印象を受けます。頭が大きいのか、それとも細長いのか、不思議な雰囲気がありました。

飛鳥寺の庭

中庭はとても素敵で、飛鳥時代から脈々と受け継がれてきたと思うと、歴史の重みを感じます。本当にここに来られてよかったです。

庭を抜けると蘇我入鹿首塚があります。中大兄皇子と中臣鎌足による政変で暗殺された蘇我入鹿の首が、この場所に埋められたと伝えられています。

ほんの小規模な石積みの塚でした

飛鳥寺には、歴史的なロマンが溢れていました。

飛鳥時代の宮殿「飛鳥宮跡」

飛鳥寺から自転車で飛鳥宮跡へ行きました。飛鳥時代、日本の政治と文化の中心地だった場所です。推古天皇の時代に造営され、聖徳太子が仏教や政治改革を進めた舞台でもあります。

710年に平城京へ遷都されるまで、この地は日本の政治と文化の中心として重要な役割を果たしていました。

飛鳥宮跡

飛鳥宮は20世紀に発掘調査が行われ、その結果、この場所にあったことがわかりました。

現在は遺跡公園として整備されていて、自由に見学できます。

飛鳥宮の宮殿の基壇や柱の跡

1,500年以上も前に庭園や水路が整備されていたなんて、当時の技術の高さに驚かされます。

蘇我氏の権力を感じられる「石舞台古墳」

飛鳥宮から自転車で約10分の場所にある石舞台古墳を訪れました。

6世紀末から7世紀初頭の飛鳥時代に権力を握っていた蘇我馬子の墓とされる古墳で、日本最大級の横穴式石室が特徴です。場所は明日香村にあります。

なかが広くてびっくり

石舞台古墳は江戸時代に研究が始まり、20世紀には本格的な発掘調査が行われました。

巨大な石がいくつも積み上げられており、飛鳥時代にどうやってこれほど大きな石を運び、積み上げたのかは謎のままです。

石舞台古墳の全貌

石舞台古墳は、少し離れて見てもその迫力に圧倒されます。大きな石が見事に積み上げられていて、壮観です。

周囲は緑豊かな公園として整備されており、自然の中でゆったりと過ごせる場所になっています。

飛鳥時代を感じられる風景をサイクリング

石舞台古墳から北へ自転車を走らせました。道中、大自然に囲まれた景色が本当に素晴らしく、この辺りでのサイクリングはとても気持ちが良かったです。

本当に大自然が広がる

飛鳥時代に戻ったような風景が広がり、北へ向かってのんびりと20分ほどサイクリングを楽しみました。

このあと、藤原宮跡に行きました。

コスモスが咲き乱れる「藤原宮跡」

藤原宮跡は奈良県橿原市にあり、7世紀末から8世紀初頭にかけて、日本で初めて本格的な宮都となり、政治と文化の中心地でした。

飛鳥宮から藤原宮へ都が移った道のりを、自転車でたどってきました。実際に移動してみると、歴史のロマンをより強く感じますね。

藤原宮跡

藤原宮跡には建物は残っていませんが、発掘調査で見つかった基壇跡が保存されていて、当時の宮殿の大きさを感じることができます。

現在は遺跡公園として整備されており、一面に咲くコスモスがとても美しく、心を癒してくれます。

JWマリオット奈良

奈良での宿泊先を迷った結果、JWマリオット奈良に泊まることにしました。

JWマリオット奈良の入り口

近鉄奈良駅から少し離れていますが、奈良駅周辺と飛鳥地方のどちらにもアクセスしやすい拠点として選びました。

入口から高級感が漂い、部屋も広々としていて、ゆっくりと快適に過ごせました。

JWマリオットホテルのお部屋

JWマリオットホテルは、他のマリオット系ホテルに比べて家族連れが多い印象でした。ラウンジは予約制で、1日だけ利用しました。

料理はとても充実していて、夕食として十分満足できる内容でした。

マリオットバーガーが大好きなので、後からルームサービスで注文しました。ご当地の食材を使ったハンバーガーで、どのマリオット系ホテルに泊まっても、ほぼ毎回頼んでいます。

マリオットバーガーは、私にとっての楽しみの一つです!

奈良のマリオットバーガー

朝食のオムレツがとても美味しく、プレーンでシンプルにいただきました。


さいごに

京都や奈良を訪れたことがあるなら、奈良の飛鳥地方もぜひおすすめです。京都や奈良よりさらに古い時代の寺院や建造物を巡ることで、時代ごとの違いを感じられ、観光以上の楽しさがあります。

ただ、歴史に興味がないと少し物足りなく感じるかもしれません。というのも、飛鳥地方は建造物より跡地が多いからです。

それでも、広がる大自然はこの地域ならではの魅力。自転車を借りてサイクリングしながら、のんびりと観光するのがおすすめです。

旅行日:2024年10月

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