仮想世界の始まり!!
13歳の青年は、あるゲームに没頭していた。長時間プレイし、大切にキャラを育てていた。しかしある日、お気に入りキャラのステータスが運営によって突如変更された。青年は心の奥底でモヤモヤを感じていた。
青年が17歳になり、父親からビットコインのことを聞いた。青年の父親は、コンピューター技術者、母親は経済アナリストであり、青年も学業成績は抜群であった。最初に父親からビットコインの話を聞いた時は、価値を感じられず、将来的に失敗するだろうと予想した。しかし、何度かビットコインの名を耳にし、興味を抱き始めた。父親はビットコインを分かりやすく、青年に説明した。
【ビットコイン】
2008年10月サトシ・ナカモトという人物がネット上で、ある論文を公開したことに始まる。 論文は、「取引履歴を暗号によって、正確な取引履歴を維持する技術を使った中央管理者のいない決済システム」というものだった。
この技術の長所はデータ破壊・改ざんが極めて困難なこと、障害によって停止する可能性が低いシステムが容易に実現可能であること。
中央管理者の有無は、具体例を挙げて説明しよう。
まず、中央管理者がいる例は円やドルだ。日本銀行の中央管理者は、その時々で、発行する円の量を調節し、経済のバランスをとる。この需給のバランスは不透明で、『国家経済の都合』によって管理される。そのため、国家がお金をむやみに刷り、ハイパーインフレなどを発生させ、通貨の価値を大きく下落させることがある。もちろん、効果的な経済対策で多くの人を救う場合もある。
一方、中央管理者がいないビットコインは発行枚数の上限(約2100万枚)がある。そのため、システム的にハイパーインフレは発生しない。加えて、このルールは不変であり、全員に”平等”である。≒(権力を持った一部の人の都合でルールが作られない)
また、取引履歴も中央管理者がいないため、世界に無数にあるPC同士で管理する。例えば、「AさんからBさんに1BTCを送る」という取引内容がまとめられる。次に「BさんからCさんに1BTCを送る」という取引内容を取りまとめる。すると下記のように複数の取引内容をとりまとめたブロックとチェーンが完成する。
ブロック:「 」
チェーン:ー
「AさんからBさんに1BTCを送る」ー「BさんからCさんに1BTCを送る」
取引を進める度に、このブロックが繋がり、チェーンのようになることから、ブロックチェーンと名付けられた。このブロックは、一度確定すると取り消すことができない。だから、後から改ざんすることができない、つまり非常に強固なセキュリティを構築している。
例えば、悪意のある人が先ほどの取引をAさんにハッキングして「AさんがBさんに100BTCを送る」と改ざんしたとする。しかし、下図のように全員で取引履歴を共有しているため、下記のような取引履歴となる。
Aさんの履歴:「AさんがBさんに100BTCを送る」
Bさんの履歴:「AさんからBさんに1BTCを送る」
Cさんの履歴:「AさんからBさんに1BTCを送る」
Dさんの履歴:「AさんからBさんに1BTCを送る」
Eさんの履歴:「AさんからBさんに1BTCを送る」
Fさんの履歴:「AさんからBさんに1BTCを送る」
Gさんの履歴:「AさんからBさんに1BTCを送る」
Hさんの履歴:「AさんからBさんに1BTCを送る」
⇒正しい履歴:「AさんからBさんに1BTCを送る」
もし、悪意のある人が改ざんした場合は、無数にあるPCにハッキングする必要があるが膨大なPCと電気が必要になる。
ビットコインの運用が始まって12年間、改ざんされたことはない。
ビットコインが盗まれたニュースを聞いた人もいると思うが、ビットコインそのものが改ざんやハッキングで盗まれた訳ではない。
この事件は、当時世界最大級のビットコイン交換所がハッキングを受けた。 2014年ハッキングにより、当時のレートで470億円分のビットコインが紛失した。この紛失の原因は取引所の保管方法と言われている。取引所のセキュリティーに問題があったのだ。この事件以降、取引所のセキュリティーは厳しくなっている。
*興味がある方は下記のキーワードで検索してみて下さい!
(保管方法のキーワード)
・ホットウォレット
・コールドウォレット
2009年に運用を開始したビットコインが、金銭的な価値を持ったのが2010年。 アメリカフロリダ州でプログラマーがピザ2枚を1万ビットコインで購入したのが、ビットコインで商取引が成立した最初の例と言われている。
2021年10月現在だと1万ビットコイン=約600億円でピザ2枚を買ったことになる。
父親の説明によって、青年はビットコインが中央管理者のいない、強固なセキュリティーを持つ技術ということを理解した。そして、ビットコインの背後に存在する無限の可能性を秘めたテクノロジーに注目し始めた。
≫第2話『青年の旅』2021/10/9リリース予定