月刊こしら Vol.74 (2021年7月号) 「復讐はこうして行われた」
「復讐はこうして行われた」 文・立川こしら
読書感想文という宿題が大嫌いだった。何をすればいいのかわからなかったからだ。本を読んで感想を書く。小学高低学年だっただろうか。夏休みの宿題ではなく、通常授業での宿題だった。原稿用紙1枚、低学年だからマス目は大きかったが、全く埋まらなかった。だってその当時の感想なんて「おもしろい」「つまらない」それぐらいしかない。今でも思うのだが、本を読んで感想を言えと言われたら、この2つだけで充分だ。考えてみると私のスタンスは小学生から変わってないのだ。ブレないのか、成長がないのか。
当時の私は愕然としたのだ。無限とも思えるマス目を前にして「おもしろかった。」の8文字で終わってしまったのだ。原稿用紙1枚を埋めなくてはいけない宿題で、8文字しか埋められないなんて、書いてないのと同じだ。しかしこれ以上書き様がない。明らかなキャパオーバー。埋まらないマス目の数だけ「もっとがんばりましょう」スタンプを押されているのだ、
運動も勉強も一番という訳じゃなかったがそこそこ出来た。算数のドリルを前に頭を抱えている同級生にアドバイスしたりしていた私が、今、彼と同じ形になっているのだ。もはや絞り出した8文字なんて無駄な抵抗だ。私の中で僅かに芽生え始めた優越感という名の自信はあっと言う間に消え去った。
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