闘次郎ちゃんの世界
「先輩.......」
「ん.......すまん.......充電切れ」
そういうと先輩は屋根裏部屋の梯子を下ろし、登っていく。
登ってみたら物置になっていて、先輩の姿はない。
闘次郎ちゃんは宇宙空間にいる。
すかさず集まってくる星の子たちに「ただいま」と言う。
一眠りしてひろみくんのもとへ帰る。
「ひろみ.......もしお前が.......この世界での用事を全て済ませたら.......俺に.......着いてきてくれるか.......?」
「.......もちろんです.......どこまでもお供しますよ.......先輩.......」
先輩は屋根裏部屋の梯子を下ろす。
後をついていくと、初めて見る光景が広がっていた。
そこは.......宇宙.......?
星屑が煌めいている。
ここにいるだけで気持ちが落ち着く.......
無数の光が集まってきて、体を取り囲む。
「地上で暮らしていると、魂が汚れてきてしまうから.......コイツらは、その汚れを浄化してくれるの。」
「.......なんだか、ドクターフィッシュみたいですね。」
「ふふふ.......」
はぐれないように抱きしめ合った。
「.......今ならまだ戻れるけど、どうする.......?」
「.......僕は、ここに居たいです.......先輩と一緒に.......」
先輩は微笑んだ。
「良かった.......」
そのままどのくらいそうしていたかわからない。
飽きることなくただ抱きしめていた。
穏やかな空間で先輩と繋がっている.......幸せだ。
.......宇宙の幸福。
このままいつまでも先輩と一緒にいたい.......
「なぁ.......大丈夫か?」
「.......え?どうかしましたか?」
「いや、飽きたり、元の世界がもの恋しくなったり、してないか.......?」
「全然平気ですよ。不思議と、お腹がすいたりもしません。」
「そうか.......」
先輩は幸せそうに僕の懐に潜り込む。
「次の周期が来たら.......地上に戻ろうか。」
「はい.......」
「まだここに居たいか?」
「いえ、先輩がそういうなら」
「次の世界は.......元の世界とよく似ているけど.......俺とお前のいなかった世界。だから、家族や知人を見かけてもあまり馴れ馴れしくするなよ。」
「はい.......」
そう.......これが先輩の生きてきた世界。
似た世界を何度も何度も繰り返して.......その度に、僕に逢いに来てくれた.......先輩の.......愛情.......
そして.......孤独.......
-アトガキ-
今までは闘次郎ちゃんが世界を繰り返し、その度にひろみくんと出逢い、死に別れていた。
それがこの二人の運命だと思っていた。
それが今日.......新たな扉を開いた。
ひろみくんが、闘次郎ちゃんの世界.......宇宙に足を踏み出す。
闘次郎ちゃんと共に、永遠を生きる覚悟を持って。
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