不幸な少年

ごめんなさい……ごめんなさい…………
生きていて……ごめんなさい…………
ご主人様の為に……なんでもいたします……
恥ずかしいのも…………痛いのも…………我慢します…………
だから…………どうか…………
どうか、僕を殺さないで………

あぁ………お兄様…………どうか……どうか…………
そんな哀れみ深い目で……僕を見ないで……
僕を……汚らわしく不幸な僕を…………
僕の不幸を……そんな目で見ないで……
僕が…………僕が可哀想だなんて…………
そんな……そんな残酷なことを……言わないで……
僕は…………僕は…………ただ…………
生きるために…………その日一日…………今この一瞬でさえ……
生きて……生きてちられるように…………
ただ、懸命に…………
懸命に生きているだけなのですから…………
お願い…………僕を…………
僕を放って置いてください…………
僕が……僕が不幸だと言われるくらいなら……
いっそ見捨てられてしまった方が…………
僕が必死に生きていることさえ……哀れならば…………
いっそ……………………

お兄様…………何をおっしゃるのですか…………
この薄汚い僕に…………過去など…………
お話できるような立派な過去など……
あるはずが、ありませんでしょう……?
どうして…………どうして、お兄様は……僕に……
この傷だらけで醜い僕に、構っておられるのですか……?
僕が……僕がどんな思いで…………毎日、毎日…………
必死に生きているのかを…………
きっとあなたはお分かりでしょう…………
僕の……忌むべき過去など…………どうか詮索なさらずに……
お兄様…………お兄様…………お兄様…………
あぁ!お兄様……お兄様……お兄様…………
僕は…………僕は…………
お兄様の……優しさに……縋っても……良いのでしょうか…………

僕は…………とある小さな国の主(あるじ)の息子でありました…………
幼い僕は……立派な父と心優しい母のもとに生まれ、毎日豚飼が引き連れてきて捌いてくれる肉を食らい、牛の乳を飲みながら、贅沢に暮らしておりました……
ところが…………ところが……ある日…………
あの忌々しい夜に…………
他国からやってきた海賊どもが、僕の故郷を……めちゃくちゃに……してしまいました……
父は…………青銅の鎧と盾で身を固めて…………大きく長い槍で応戦しましたが…………突然の夜襲に…………為すすべもなく…………
国の男たちは…………悲鳴を上げて血を流して倒れ…………
女たちと……子供は…………捕らえられて船へひかれてゆきました…………
そうして僕は…………奴隷として売りさばかれ……
今のご主人様に仕えているのです…………

あぁ……!どうして僕は……こんな不幸な話を……!
最も恥ずべき過去を……お話してしまったのでしょう……
僕は……僕は……
お兄様が…………僕に…………優しくするから…………


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