人類滅亡後の闘次郎ちゃん
「人類滅んじまったし この星が滅亡して新しいダインジアが誕生するまで暇だな」
「そうだ やりたいことがあったんだった」
ミラクシュディナにある、魔術国家時代の王宮。
夜に辿り着いたが、暗くて物騒だ。
「入るのは夜が明けてからにしよう……」
「そういえばここは朝が来ないんだった」
白夜の薄明かりを頼りに住居を漁って薪を手に入れる。
鞄からマッチ箱を取り出す。
「湿気てる……」
さらに住居を漁ってライターを手に入れる。
「…………」
ひろみくんがライターを使っている様子をふと思い出す。
松明を作って城に侵入。
煌びやかな光景が眼前に広がる……と思いきや、中は真っ暗で蜘蛛の巣が張っている。
コウモリの羽ばたきと鳴き声にビクッとする。
「人が住んでいた頃は煌びやかだったんだろうけど……
今となってはまるでお化け屋敷だな……」
当時の煌びやかな生活に思いを馳せながら、奥へ進んでいく。
「……ここが多分一番奥だな。とすると……」
一際広くて贅沢な寝室に辿り着く。
「これが『王様のベッド』ってわけか。」
大の字に寝転がる。ふかふかで温かいベッド……かと思いきや、絹や羽毛は既に朽ちてしまっていて、固くてバサバサしている。
「……思ってたのと違うな……これなら、うちの布団の方がマシだ。」
ふと家の光景を思い出す。
今は亡きひろみくんとの、暖かい我が家。
「……」
思い出さないようにしていたのに、期待外れの侘しさ、寒さと空腹、暗がりへの恐怖、慣れていたはずの孤独が相俟って襲ってきて、涙が溢れてくる。
「帰りたい……『うち』に、帰りたい……」
しばらく声を上げながら恥ずかしげもなく泣く。
どうせ誰もいないんだから。
しばらく泣くと少し気持ちが落ち着いた。なんだか、さっきまで怖かったはずのこの部屋もずっとここに住んでいたような気がしてきた。もしかしたらそれに足るだけの時間、泣いていたのかもしれない。
泣き疲れたので、朽ちた絹で涙を拭って、バサバサの毛布を寄せ集めて眠った。暖かい我が家の夢を見ながら。