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一人親方の獣医師が労災に加入するための苦労話

働いているなら労災保険にできれば加入したい。労災に加入するメリットは大きいからだ。今回、産業動物獣医師として労災に加入しようとして大変苦労したので、その過程を書いておきたいと思う。

まず、中小の事業主も、個人事業主も条件が合えば労災へ特別制度加入ができる。僕も産業動物獣医師を立ち上げるに当たって、労災へ特別加入しようとし、色々調べてみた。

まず、労災の特別制度加入のしおりを読んだ。中小事業主等用、一人親方その他の自営業者用、特定作業従事者用、海外派遣者用と分かれているので各種読んでいく。中小事業主等用を読んでいくと、誰か雇用をしていないと対象にならないようだ。

次に、「一人親方その他の自営業者用が当てはまるハズ!」、と読んでいく。加入者の範囲は多く括りには次のように記されていた。①個人タクシー業者や個人貨物運送業者など、②大工、左官、とび職人など、③漁船による水産動植物の採捕、④林業、⑤医薬品の配置販売、⑥再生利用の目的となる廃棄物などの収集、運搬、選別、解体などの事業、⑦船員、⑧柔道整復師が行う事業、⑨高年齢者が行う事業。獣医師については何も当てはまるものが無いように見える。

さらに、特定作業従事者用のしおりを読む。①特定農作業従事者、②指定農業機械作業従事者、③国または地方公共団体が実施する訓練従事者、④家内労働者およびその補助者、⑤労働組合等の一人専従役員、⑥介護作業従事者および家事支援従事者、⑦芸能関係作業従事者、⑧アニメーション制作作業従事者、⑨ITフリーランス、が加入者の範囲と示されている。これらの内、①特定農作業従事者には、「牛、馬、豚に接触するおそれのある事業」を営む、一定の収入または規模のある農業者と書かれている。農業者を拡大解釈し、「一人で診療を行う産業動物獣医師もこれに含まれるハズ」、と動きだした。

特別加入をするなら特別加入団体に加入して手続きをする方が圧倒的に楽だ。都道府県により、特別加入団体が決まっているので名簿を見て、一番近い団体に連絡をしてみた。すると、団体により取り扱う事業が異なることが分かった。つまり、都市部に近い団体では、特定農作業従事者を扱う事業は行っていない。調べると、千葉県内ではわずか2団体しか該当しないことが分かった。

一つは酪農ヘルパーのための組合であった。連絡を取ってみると、酪農関係者だけあって、すぐに加入資格を調べてくれた。しかし、「産業動物獣医師は酪農ヘルパーとは言えないだろう」と、断られてしまった。まぁ、確かにその通りだ。

もう一つは、居住と遠く離れた市にある農業協同組合(JA)の内部に設置された組合であった。JAは何か嫌な予感がする…。連絡してみると、JAへの加入資格のある市町村居住者ではないと、あっという間に断られてしまった。

これは困ったと、他地域の特別加入団体を調べてみた。幸いなことに農林水産省が事前に調べてくれていて、すでに一覧になっていた。ぱっと見ると、特定農作業従事者を扱う団体はほんのわずか。さらに、その多くがJA、小数が市を運営団体としていた。これでは加入資格が相当に怪しく、ほぼ断られるだろう。一件ずつ調べていくと、関東でわずか1団体が地域を限定していないようだと分かった。

早速、電話で栃木県の特別加入団体に問い合わせる。事情を話し、その組合に加入をお願いする。やはり、地域は他県でも大丈夫であった。しかし、最後の最後で、産業動物獣医師は制度の趣旨に合わないことが分かった。特別加入するには「特定農作業従事者には、一定の収入または規模のある農業者」でないといけないという旨であり、獣医師は農業者ではないというのである。暗礁に乗り上げてしまった。

もちろん雇用さえしていれば、獣医師であろうとも中小事業主として特別加入ができる。しかし、僕にまだ雇用の予定はない。とても困った。残るは民間の保険か…?色々検索して調べてみる。

すると、労災の特別加入に関する、とある厚生労働省の検討書類が見れた。そこには、なんと「柔道整復師」の同種のものとして「医療業」とあり、その「医療業」の補足説明として、「飼育動物に関する診療及び保健衛生の指導その他の獣医事を行う動物病院」もこの分類に含まれると記されていた!!つまり、制度上、「柔道整復師」に獣医師が含まれるよう検討されていた

そうと分かれば、また地元の一番近い特別加入団体に連絡する。「またお前か」という表情を浮かべられつつ、経緯を説明し。再度加入できるか調べていただいた。

しかし!結局、検討されたものの、「柔道整復師」の同種のものとして、一人親方の獣医師も特別加入ができるようにはならなかったそうだ。残念ながら、2021年12月現在、労災加入については八方塞がり状態だ。

どうにか一人親方の獣医師が労災加入できるようになる道があればぜひ教えていただきたい。徒労感が残った1日であった。今日はココまで。

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