デイリーポータルZは「令和のポパイ」になれるのか?「これすごくない?」拡充、「特派員」を始めます #DPZ
デイリーポータルZが2024年1月に独立し、1年目が終わろうとしています。みなさまの励ましのおかげで、何とか年を越せそうです。
運営は落ち着いてきた……と思いきや、Webマスターの林雄司が急に焦りだしました。カルチャー誌「ポパイ」を読んだことがきっかけです。
「昔のポパイを見て焦ったんですよね。 うわ、すげえ面白い、なんでデイリーはこれができないんだろうって」
どういうことでしょうか? 今のデイリーポータルへの反省とこれからの計画を、林が語ります。(聞き手とまとめ:岡田有花)
内面より、外にあるものの方が面白い
――1970年代後半ごろの「ポパイ」を読んで焦ったんですね。
林 「ポパイ」の「pop*eye」というコーナーがすごくて。奇妙なできごとを紹介する短い記事がたくさん載っていて、ずっと読んでいられるんです。
「大英海洋博物館で新しいロープの結び方が追加された」「グレナダの首相が国連でUFOについて論じた」とか。サブカルだとかメジャーだという壁がなく興味本位で面白い。……という話は記事にも書きました。
「内面より、外にあるものの方が面白い」って私はずっと言って来たんですが、「ポパイ」を見てそれが改めてわかった感じです。ライターが自分の外にある奇妙なことを書き続けている。それによって、書き手(ポパイの場合は雑誌全体)にも興味を持ってもらえる。
翻ってデイリーの記事は、pop*eyeほどテンポが良くない。文章が長いから。あとお前が言うなって話ですが、書き手の顔が多くないですか?
――でも、デイリーのライターは愛されていますし、キャラの強い記事こそ、引きがある気がします。
林 そうなんです。だから、今のデイリーをポパイ的なものにすると混乱する。今まで通りキャラの強い記事もありつつ、ポパイのように、奇妙な事実を短くまとめて紹介するコーナーもあるという風にやればいいかなと。
“令和のポパイ”は明太子の切子かも
林 デイリーのライターはみんな、面白いモノを持っていたり、面白いことをやったりしているんですが、記事のハードルを自分で上げちゃっていて。「これは記事にならないですよね」って落としている小さなネタがあるんです。そういうのが、「pop*eye」のようにまとまって載っているといいですね。
デイリーの記事の形にならない……明太子になれない切子みたいな。そういうのを集めたコーナーを作りたいですね。「切子」ってコーナー名にしようかな。「ショート記事」もそういう意図で始めたんですけど、思ったほどライトにならなかったんですよね。
かといってポパイの「pop*eye」もいいことばかりじゃなくて、気持ち悪いニュースもあるし、英語雑誌の内容を転載するだけで真偽不明の“こたつ記事”も多い。
そういうところは、2024年なりにアップデートして、悪趣味にならないようにしたいですね。自分の目で確かめない“こたつ記事”もできるだけ避けたいです。
「これすごくない?」を拡張したい
林 デイリーの「これすごくない?」のコーナーが、“令和のポパイ”に近いのかも。
「これすごくない?」は、記事にするにはシンプルすぎる、でもXで流れていってしまうには惜しい、そんな気づきを掲載する投稿コーナーです。今載っているのは、面白い壁とか掲示とか、渋めのネタが多いけど、もっといろんなジャンルをカバーしたくて。
林 例えば、今、原宿ではいちご飴ばっかり売っていて、竹下通りに「あめ&あめ」っていうお店があるんです。すごくないですか? 歌舞伎町のライブカメラで客引きを見るのも面白くて、ずっと見ています。
「YouTubeのこの動画が面白かった」「サブスクで聴いたこの曲がいい」は、“コタツ記事”かもしれないけれど、選者の責任や意思があるからいい気がして。映画や動画、電子書籍の良かったものの紹介とか。
リンク集もいいなと思っていて。デイリーポータルも2024年に「いまこそリンク集」というコーナーを始めて、半年ぐらいで立ち消えたんですが、外のサイトにあるおもしろいニュースを集めるのもいい。
「海外特派員」をやりたい
林 デイリーは海外在住の読者も多いから、海外からネタを送ってもらう「特派員」もやりたいんですよね。
夜7時のテレビは何をやってるかとか、スーパーの安いお惣菜の紹介とか、行列しているお店とか、すごく簡単なテーマを提案して、写真と200文字ぐらいのコメントを送ってもらう。これは、“コタツ記事”にならない「pop*eye」ですよ。うん。
国内特派員もいいかも。厚揚げが地域によって全然違うらしいので、スーパーで厚揚げを買ってきて、とか。名古屋の味噌売り場の写真も見たいんですよね。北海道のホームセンターも見てみたい。雪かきグッズがどれくらいあるんだろう、とか。
サクサク読める見せ方は……リールなのか?
――「pop*eye」は1ページに細長い記事を3本載せていて、見開きでいろんな記事が読めるようになっています。Webだとそういうレイアウトは難しくて、上から1本ずつ読む形になってしまいますよね。
林 見せ方は難しいですよね。ショート動画とか、InstagramのリールのUIが近い気がしていて。スワイプすると次々に記事が出て、ちょっと読んでつまらなかったらスワイプできる。
Instagramとか、縦動画のプラットフォームでやればいいですかね。でも気になるのは、人のプラットフォームだから、人に首根っこをつかまれる感じになる。Metaとか、TikTokならByteDanceとか……。
できれば自分のドメインでやりたいんですけど、難しいですかね。すばらしいデザイナーさんが「こうやったらできますよ」って提案して実装までしてくれないですかねえ。
新しいこと、やりますよ!
――今回のお話をまとめると……
林 事実の面白さを重視した軽い読みものを詰め込んで、「pop*eye」令和版コーナーを作ろうと思っています。
具体的には、「これすごくない」にライターも参加してもらい、内容を拡張して定期的に更新します。海外・国内の特派員によるレポートや、リンク集もやりたいですね。
12月上旬から余裕ができるので、やっていきますよ!