久しぶりに感じた聖杯戦争の雰囲気 Fate/Samurai Remnantを60時間プレイした感想

今回は、Fate/Samurai Remnantをプレイした感想を書こうと思う。

注意事項

最初に書いておくと、今回は真名バレを含めたネタバレありの感想となっているため、未プレイの人にはおすすめしない。既にプレイ済みで他のプレイヤーの感想が知りたいという人や、プレイするつもりはなく、プレイした人の感想が知りたいという人向けの記事だと思ってほしい。

私自身はFateシリーズはFate/stay nightなどのゲームはプレイしたことがなく、staynightやUBW、HFなどは視聴済みで、FGOもプレイしている。最近、月姫や空の境界などの他の型月作品に触れ始めたところで、型月ファンというよりFGOファンだ。なので型月世界の常識などは知らないところも多いと思う。今回の感想でも的はずれなことを言っているかもしれないが、温かい目で見ていただけるとありがたい。

ストーリーに関する感想

まずは、プレイをした感想をざっくり書きたい。私は異傅(異伝)を含むストーリー達成率が100%になるまで、タイトルの通り60時間ほどプレイした。

聖杯戦争のやるせなさと聖杯戦争ならではの面白さ

ストーリーを全部見て最初に感じたのは、聖杯戦争のやるせなさだった。(今回は正確には「盈月の儀」だが、便宜上聖杯戦争と呼ばせてもらう。)
私は特に最近はずっとFGOをやっており、それ以外のFate作品にはあまり触れていなかったため、久しぶりの聖杯戦争体験だった。FGOでは主人公たちVS強大な敵という構図になるため、7人のマスターとサーヴァントの思惑が交錯してカオスな状況になるという聖杯戦争ならではの状況を久しぶりに味わったように感じた。過去作をなぞるような描写も多く、懐かしさもあった。また、これまでの聖杯戦争と同じように悲惨な結末を迎えるマスターも多く、FGOでは味わうことのなかった感情が湧いてきたように思う。これまでの作品もそうだったが、聖杯戦争は幸福よりも大量の不幸を多くの人にもたらす。危険なものだとわかっていながら、己の信念や絶対に譲れない願いのために聖杯戦争に参加し、悲惨な結末を迎えるマスターたちを見て、「ああ、聖杯戦争ってこういうものだったな」という感情が浮かんだ。

また、久しぶりに聖杯戦争ならではの、7者(15者?)それぞれの思惑が交錯する様子を見られたのはとても面白かった。共闘する陣営もあれば、敵のサーヴァントを無理やり従わせる理外の策を使う者もいて、本当に次何が起こるかわからない、という感覚を味わえた。逸れの存在もストーリーにうまく絡んでおり、より聖杯戦争を複雑化させていて良いなと感じた。

やっぱり武蔵ちゃんは最高

武蔵ちゃんの存在なしではFate/Samurai Remnantを語ることはできない。武蔵ちゃんがいたからこそこの作品はここまで魅力的になったと個人的には思っている。武蔵ちゃんはFate/Grand Orderからの登場で、FGOの2部5章では大活躍した大人気のサーヴァントだ。そして本作は、そんな武蔵ちゃん(正確には男の宮本武蔵だが)の養子で一番弟子の宮本伊織が主人公となっている。武蔵ちゃんが活躍しないはずはない。本作を通じて思ったのは、やっぱり武蔵ちゃんは最高だということだ。

この文章を書くにあたり、自分は武蔵ちゃんのどういった点を魅力に感じているのかを考えてみた。おそらく、行動原理がはっきりしていて、武人らしさとお茶目さが両立しているところだろう。本作やFGOで彼女を表す言葉として、「天衣無縫」という言葉が使われることがある。(なお本作では伊織に対してもこの言葉が使われている)私はこの言葉の意味をよく理解していなかったのだが、調べてみると「①天人・天女の衣には縫い目がまったくないことから、文章や詩歌がわざとらしくなく、自然に作られていて巧みなこと②また、人柄が飾り気がなく、純真で無邪気なさま、天真爛漫なことをいう。③また、物事が完全無欠である形容にも用いられることがある」(google辞書より引用)とあった。武蔵ちゃんに対しては、おそらく主に2つ目の意味(3つ目も含んでいる?)で使われているのだろう。まさしく天真爛漫で邪気がないが、戦いのことになると頑固で、一緒に戦った戦友だろうと斬ることもいとわない武蔵ちゃんの性格を表すにはまさにふさわしい言葉だと思った。私は天衣無縫な武蔵ちゃんが好きなのだ。

また、武蔵ちゃんデザインを担当したこやまひろかず先生は言わずもがな、佐倉綾音さんの声も武蔵ちゃんをより魅力的なキャラクターにしていると思う。声のトーンや喋り方、口調などが「宮本武蔵」という存在を、誰もが親しめる「武蔵ちゃん」たらしめているように感じる。私はFGOでは武蔵ちゃんを持っていないこともあり、佐倉さんのCVを聞く機会はこれまでほとんどなかった。本作はフルボイスであり、3Dで動いている武蔵ちゃんの声を楽しむことができる。動く武蔵ちゃんの声は、まさしく私が想像していた通りのもので、どれだけテキストが長くても、ずっと聞いていたくなるほどだった。この作品を通して一番感動したことの一つと言っても過言ではない。話がそれるが、フルボイスでFate作品を楽しめる嬉しさは本当に大きい。ギルガメッシュやクー・フーリンなどのおなじみのキャラはもちろん、キルケーなど、FGOでもあまりボイスを聞かないキャラがボイスありで動いているのは、それだけで感動ものだ。この話を書いていて、アヴァロン・ル・フェの朗読劇?YouTubeで見てひたすら泣いたのを思い出した。やっぱり声優さんってすごい。

話を戻すが、そんな武蔵ちゃんを本作では操作できるのだから嬉しくないわけがない。しかもしっかり強くて、宝具演出もFGOファンにはたまらない。このゲームをプレイして武蔵ちゃんのことを好きにならない人などいないだろう。……熱意のあまり二重否定を繰り返してしまった。

ストーリーを進めるうちに成長を感じる伊織の成長

ここまで武蔵ちゃんの魅力を語ってきたが、本作の主人公はその一番弟子で養子の宮本伊織だ。プレイヤーは基本的に伊織を操作するわけだが、最初の頃の伊織は特に弱い。戦いを重ねていくうちに5つの型を修得し、さまざまなサーヴァントとの絆を通じて強くなっていく。そして最終的には、サーヴァントも凌ぐほどの強さになる。プレイをしていると、徐々に伊織が強くなっていくのが実感できる仕組みになっており、その伊織の「強さ」がストーリーにも大きく関わってくる。このゲームデザインが本当に良くできているなあと感じた。物語終盤の武蔵ちゃんとの死合は、本当に最高だった。私は本作の中でも、あの場面が一番好きだ。死合の前に名乗りを上げるところで心が震え、伊織と同じ型を使った戦い方で異次元の動きを見せる武蔵ちゃんに対し、最後は佐々木小次郎直伝の燕返しで倒すというのもこれ以上ない決着の付き方だと思う。武蔵ちゃんとの別れのシーンを見ていた際に、「このゲームをプレイしてよかった」と心から思った。

伊織について話すなら、その内面についても触れておきたい。伊織は当初、盈月の儀という、江戸中を戦火に包む危険な戦いに義妹のカヤを巻き込みたくない、という理由で参戦を決意する。しかし戦いに身を投じ、百戦錬磨の英霊との戦いを続けるうちに自身の内側に潜む闇に気づかされるのだ。伊織の根底にあるのは、幼い頃に山賊の一味から救ってくれた老剣士の美しい剣さばき。その最強の剣を身につけることが彼にとっての生きる意味であり、彼のすべての行動はそのためのものである。彼が他者を思いやるのは、あらゆる人間の思考を理解し、それを効率的に斬るため。その事実を伊織の口から聞かされたとき、私はゾッとした。心優しい主人公に見えていた彼が、突然化け物のように感じられた。
しかし、一通りクリアして伊織について振り返ってみると、彼はただの化け物ではないと私は感じた。彼のカヤを思う気持ちは本物だし、鄭成功やドロテア・コイエットそしてセイバーとの共闘で感じた彼の感情も、必ずしも斬るためのものだけではなかったように思う。

モヤモヤの残るエンディング

そんな伊織を見たからこそ、EDにはモヤモヤを感じてしまった。本作では3つのEDが用意されている。(もう一つ特殊EDも用意されているが…)1周目のプレイ時は決まったED、2周目以降は最後の決断によってEDが変化する。そしてこの3つのED全てが、私にとってはハッピーエンドとはいえない内容だった。
ざっくり3つのEDを説明するとこんな感じだ。

ルートA(1周目目):マスターを失ったキャスターが鄭成功と再契約し、盈月の器を手に入れてラスボスとして君臨、伊織とセイバーが撃破する。
ルートB(2周目以降①):盈月の器とカヤを地右衛門に奪われ、地右衛門は江戸城で盈月を使って化け物に。その後江戸に地獄を顕現させようとした地右衛門を倒してカヤを救い出す。
ルートC(2周目以降②):盈月の器を紅玉の書が吸収し、破壊することになったが、最後の最後で伊織が盈月の器を破壊しないことを決意。そして盈月を使って強者を呼び出し、自身の究極の剣を目指すことを宣言し、セイバーと敵対。一騎打ちの末セイバーに倒され死亡する。

これだけ見るとAとBは幸せでは?と思うかも知れないが、A,Bのルートをプレイしていても、端々で伊織がルートCに行きそうな描写があるのだ。つまり、伊織は自身の根底にある究極の剣技を身につけたいという思いを持ちつつ、盈月の儀を終えて元の暮らしに戻るのがA,Bルートだ(あるいは、この②つのルートでは、伊織は自身の根底にあるその願いを明確に自覚しているわけではないのかもしれない)。そんな伊織が元の暮らしに戻れるだろうか。伊織は儀を経て人間ならざる力を手に入れている。そんな彼が平和な江戸で生きる場所を見いだせるのだろうか。すべてのルートをクリアした後だと、そんなこと思わずにはいられない。

そして、上の説明を見ただけで分かると思うが、ルートCは本当にやるせないのだ。伊織はあの日見た剣を忘れられず、儀を通じて自身の思いを確かめ、至高の剣に至る道をどうしても諦めきれずに盈月の器を壊さないことを決意する。それに対してセイバーは、自身がこの世界にサーヴァントとして再び顕現したのはこの世界を守るためであり、伊織の提案は断じて受け入れられないと、伊織の打倒を決意する。ルートCの最後は、セイバーに破れて倒れた伊織のもとにカヤが駆け寄ってくるシーンで終わる。こんなものを見せられては、胸が張り裂けるほど苦しくなるに決まっている。念のため言っておくが、私はこのシナリオが嫌いなわけではない。ただただやるせなくて悲しいのだ。伊織が救われる道が一つくらいあっても良いのではないかと思わずにはいられない。というか救われてほしい。伊織はそれほどに魅力的なキャラクターだ。人間離れした大活躍を見せてくれたので、もしかしたら英霊の座に記録されてFGOにやってくるかもしれないが、そうではなくこの作品の中で報われてほしいと思う(もちろん伊織実装はこの上なく嬉しいが)。ちなみに、作中では伊織が関わる人物は少なく、彼の活躍を見ている人の中で生きている人間はごく限られている(日本人ではなく、母国に帰ってしまう人もいる)ため、英霊として語られるような存在にはならないような気もしている。

ところどころ快適とはいえない箇所も

ここまで、本作の良いところを書いてきたが、ゲーム性という観点では快適と呼べないところも少なからずあった。ここからは、プレイしている中で気になった点をいくつか挙げていく。

分岐する選択肢の直前にセーブできない箇所がある

これは書いたままなのだが、シナリオ分岐が発生するゲームである以上、分岐直前のセーブはさせてほしい。しかも、最後の2つのEDを決定する選択肢の直前でセーブができないのだ。もう片方のEDを見るためには、少し前の戦闘からやり直さなければならない。

アーチャーの操作性の悪さと敵として登場した際の厄介さ

本作では、伊織とセイバー以外のキャラクターも操作可能となっているのだが、最初は特にアーチャー2騎の操作に苦戦した。スティックの倒した方向に弓を発射するのだが、最初はそれが分からず、あらぬ方向に何度も発射してしまうのが本当にストレスだった。他の人のプレイ動画を見ても、同じように苦戦している人を何人か見かけたので、結構みんな感じていることではないかと思う。

また、彼らが敵になったときは戦闘が本当に面倒くさい。それを説明するために、本作におけるサーヴァント戦(サーヴァント+マスター戦も含む)について説明する。サーヴァント戦においては、シールドゲージを削らないとダメージをほとんど与えられないため、まずシールドゲージを削り、その後HPを削る必要がある。そして、サーヴァントは一部の必殺技を除いてこちらの攻撃で怯むことはなく、基本的にはスーパーアーマー状態となっているうえガードもしてくる。ガード状態ではシールドすら削ることができない。ただ、攻撃をしたあとに若干の隙が生じ、そのタイミングなら攻撃が通る仕組みになっている。そして、もう1つ戦闘において重要なのが、ジャスト回避だ。相手の攻撃をジャストのタイミングで回避すると、敵のガードが解けて攻撃が通るようになる。あとは、強力な必殺技を当てると、相手が怯んだ状態になり、その間は大ダメージが通るようになる。基本的にこの3つを駆使して戦うのがサーヴァント戦の定石だ。
だが、アーチャー相手だとジャスト回避が極めて難しい。相手が剣や槍を振るってくるなら、その前動作を見て回避するのは慣れれば難しくないが、相手は弓兵だ。矢をかわせるわけもなく、弓を振り払ったりする一部の動作でしかジャスト回避ができなかった。さらにこちらは剣で戦っているので基本的に近距離戦しかできないが、アーチャーは当たり前ながら遠くからでも攻撃できる。距離を詰めてもジャスト回避ができずに相手の攻撃が止まらず、距離を取られたところで攻撃を受けて回避不能な連続攻撃を放たれれるのだ……。プレイしたことがなくても、なんとなくその厄介さがわかっていただけると思う。まあ、セイバーはセイバーだし、伊織もクラスで言えばセイバーなので、アーチャー相手に苦戦するのは正しいと言えば正しいのかもしれない。

貴石錬成の使い勝手の悪さ

本作では、伊織は戦闘中に「貴石」というものを消費することで、魔術を使用することができる。凛の宝石魔術のようなものだろうか。その貴石の入手方法はいくつかあり、そのうちの一つが「貴石錬成」だ。これは、伊織の自宅の工房でできる行動で、入手したアイテムを消費して貴石を作れるという機能である。一見すると便利な機能だが、なにぶん使い勝手が悪い。

まず、貴石錬成はすぐ完成するわけではない。消費アイテムを使って貴石錬成を行った後、街を探索していると(時間経過か歩数かは分からないが)徐々に貴石ができあがってくるのだ。つまり、貴石がなくなってしまったから貴石錬成をしたとしても、すぐに貴石を入手できるわけではない。
もう1つ欠点なのが、使用できるアイテムが多く、序盤は下手に使えない点だ。貴石錬成で貴石を作るために使用できるアイテムには、貴石錬成以外の使い道もある。例えば、魔術素材や汎用素材は工房のレベルをあげるために必要なアイテムであり、工房レベルをあげると恩恵も大きいため、貴石錬成に使うのはためらわれる。他のアイテムも換金用などの目的があり、貴石錬成専用アイテムというのは存在しない。選択肢が少なく、貴石真術が有効な序盤ほど貴石錬成に頼りたいのだが、先述の通り序盤は他のことのほうが優先度が高い。結局工房レベルをある程度まで上げ、素材として要求されなくなったものを素材に貴石錬成をすることになる。(一応補足しておくと、貴石を使った魔術はどんどん増え、途中からは必殺技のようなものも使えるようになるため、後半で貴石錬成がはかどるのは決して悪いことではない。)
そして何より、この貴石錬成は自宅の魔術工房でしか行うことができない。貴石錬成してもすぐ貴石が手に入るわけではないと先程述べたが、錬成でできあがった貴石を獲得するのにも、一度自宅に戻る必要があるのだ。本作では、ストーリーの進行上、自宅に戻れない場面も少なくない。また、貴石錬成のためだけに長屋に戻るのは正直面倒だ。

こういった微妙な使いにくさがあり、私はほとんど貴石錬成を使うことはなかった。貴石錬成でできあがった貴石が自動で入手できるようにしたり、貴石専用のアイテムを用意したりなどのちょっとした工夫で改善されそうではある。私が言いたいのは、貴石錬成が悪いシステムというわけではなく、改善点の多いシステムである、ということだ。貴石錬成を使った魔術や必殺技は性能面でも優れているものがいくつかあるし、ビジュアル的にもかっこいい。より快適なシステムになれば、より快適にプレイできると思うので、改善されることを願っている。

おすすめできる作品か

本作はFateシリーズのファンの人には間違いなくおすすめできる作品だと思う。Fate/stay nightの聖杯戦争の雰囲気が好きだという人にはマッチすると思うし、FGOファンならプレイして損はない。ストーリーに関しては、いまだ明かされていない部分も多く、個人的には若干消化不良を覚えたが、それでも新作でこれだけの大規模なストーリーを楽しめるFate作品だ。Fateが好きな人ならプレイして後悔することはないだろう。

思ったよりも話が長くなったので、伊織、セイバー、武蔵ちゃん以外のサーヴァントやキャラクターについて触れることができなかったが、他の登場人物も魅力的である。個人的には、ドロテア・コイエットが好きだ。あと、三国志が好きなので、今回コーエーテクモつながりで新たな三国志のキャラクターが追加されたことがとても嬉しい。

ここまで、Fate/Samurai Remnantについて、感じたことをつらつらと書いてきたが、最後はこの作品を作り上げてくれた制作陣の皆さんに感謝したい。本作について、コーエーテクモのシブサワ・コウさんがFGOの「英霊剣豪七番勝負」に感動し、自社でFateの作品を作りたいとTYPE-MOONに持ちかけたとどこかのインタビューで目にした。ゲームをプレイした感動が新たなゲームに向かうというのは、とても素敵な話だなと思った。Fate/ Grand Orderのストーリーはもちろんのこと、今後も新たなFate作品が誕生してくれると、1ファンとして本当に嬉しい。とりあえず今は、今後出てくるFate/Samurai Remnantの追加DLCが楽しみだ。











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