自分を動かすコマンド|演技の原理 3
前回まとめ
前回記事
演出と演技指導は、真逆の方向性を持つものであり、担当するのは
・演出は演出部
・演技指導は俳優部
が理想。
監督・演出家のようないわゆる演出部が演技指導をすることはある種の越権行為。気に入らなければNOを出し続ければよいだけ。
俳優は提示された演出に対し、監督のOKが出るまで己のメソッドで答えを出さねばならない。
俳優が演技プランなどと思い違いをし、演出プランに口を出すのもまた越権行為。
少し過激に言い直してみました。
リアリティを作り出す意識
演技とはギャップを埋める作業。
ギャップを最初から埋めておけば演技の要素は少なく済みます。
リアリティには「演技をしない演技」が理想なのです。
まずは意識のギャップを埋めていきましょう。
役者がシーンの最中、演技そのものに意識を向けているとき、オーディエンスはそれが演技だという認識を受けます。
例えば別れを切り出すシーンがあったとして。
男「じゃあ、また明日。連絡するよ」
女「待って」
男「ん?」
女「……あのさ、」
男「うん」
女「……今後について、…ちょっと、話あるんだ」
男「……え、何?……深刻な話?」
女「……」
のようなセリフのやりとりで。
ここでうっすら涙がほしいから、もっと感情をひねり出そう、セリフは低く低く。頭の角度はこんな感じで…
なんてことを頭において芝居に入ると、オーディエンスが目にするのは、演技を頑張っている役者の姿です。
次に。
この人と一緒に過ごした時間には感謝している、でもこれからの未来のために今、きちんと別れを切り出さなきゃ
と、役の思考・感情で芝居に入ると、
オーディエンスが目にするのは、役です。ストーリーの中の住人です。
役と役者の間にある意識のギャップを埋めるのには、演技をしている意識を手放すことが必要なのです。
演技の意識を手放すには?
まず芝居の最中の「Doing・行動」の内訳を変えていきましょう。
上の別れを切り出すシーンとは別の例で考えていきましょう。
太郎は超絶貧乏。借金だらけで生活もどうにもならない。
もう最後の手段、泥棒に走るしかない。
手先が器用な太郎は、どんな鍵も大抵こじ開けることが出来た。
そして、お金のありそうない家を見定め、侵入し、借金の返済や生活費になるものを盗んだ。
そして今、また新たな家の玄関前。
Aさんがピッキング犯・太郎の役を演じるとします。今、鍵をこじ開けるシーンです。
Aさんは第三者目線、何をしているように見えるでしょうか。
①ピックング犯の演技をしている。
②ばれないように鍵をこじあけている
①に見られていたら失敗、②に見られていたら成功です。
何度も言うように演技の感想は持たれたら負けです。演技=作り物である証明ですから。
②にたどり着くにはどうすればよいのでしょう。
役の行動を心のコマンドに
まずは役がしている行動を見つけます。
上の例のピッキング犯だったら鍵を開ける、です。
次にその行動の結果・目的・ターゲットを設定します。
この場合、高級品やお金を得る。
実際にする行動とその結果を設置したら、それを自らにコマンドとして下します。
侵入せよ!
と。
コマンドを得たら…
自らに下すコマンドを得たら、シーンの最中にそれを実行。
一番シンプルな形です。
ただ、そのコマンドを正しくパワフルに遂行するために、仕込むべきものがいくつかあります。
動機と背景の設定です。
順番としては
①行動の解析(コマンドの設置)
②動機インストール
③背景を設定
の順を推奨します。
それぞれの工程すべてnoteで詳しく取り上げますのでご安心ください。
まだまだ先のキャラクターづくり
台本に取り掛かるときキャラクター設定、人物背景から取り掛かる人も多いかもしれません。
ここではキャラクター設定などは後回しにすることを推奨しています。
それともう一点、ここでは役イコール自分という考え方を貫きます。
それも後々書き連ねていきますので。
次回予告
今回もお読みいただきありがとうございました。
本来次回は「動機」についての記事が望ましいのですが、一旦、反射、という要素についてお話したいと思います。
大監督・溝口健二が頻繁に言ってたという「反射してください」の反射です。
良かったらご覧くださいませ!
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