ミュージカル『モーツァルト!』
札幌千穐楽おめでとうございます!6月梅芸の幕が上がることを祈っています。
緊急事態宣言と公演中止で心が折れていましたが、感想を残したいので記します。
私は古川ヴォルフ回だけ拝見できました。古川さんといえばコンサート楽しみですね。無事に開催されることを祈っています。
さて、家族の話、星から降る金の話、アマデの話をしたいと思います。
家族
『モーツァルト!』は家族の話です。主に出てくる家族はヴォルフガングのいるモーツァルト家と、コンスタンツェのいるウェーバー家。
モーツァルト家は「赤いコート」から察するに、とても仲が良いのでしょう。仲は良いけれど、音楽の才能があって音楽に関しては理性の効かないところがあるヴォルフガングと、少し過保護な父と姉がすれ違ってしまう。家族はヴォルフガングを愛しているし、ヴォルフガングも家族を愛している。それでもすれ違ってしまう。モーツァルト家に限らず、よくあることなのではないでしょうか。
いっぽう、ウェーバー家はお金がなくて、お金を巻き上げられそうな男を誘惑して捕まえてしまう、そんな一家です。コンスタンツェはあまり馴染めていない。実はウェーバー家みたいな人たちのほうが生きやすいのかもしれない。余談ですが、ウェーバー家のナンバーの不快感がすごい。
モーツァルト家が分裂した主な原因が「星から降る金」でしょう。
星から降る金
第一印象では、ヴォルフガングの旅立ちに際して背中を押す前向きなナンバーだと思っていましたが、それだけではありませんね。
才能を持つ人は家族を捨ててでも1人で頑張らなければいけない。家族を捨てたんだから頑張らなきゃいけない。そんな呪いにも聞こえます。
そして父には「私を殺すつもりか」、姉には「許さない」と言われてしまう。そんなつもりはないのに。コンスタンツェもヴォルフガングを支えたいという気持ちがあっても、ヴォルフガングを理解できない。自分が見えないものを彼が見ていてこわい。
アマデ
コンスタンツェがヴォルフガングを理解できない原因、アマデ。アマデはヴォルフガングの才能の化身とされています。
アマデにとって、作曲が第一優先なので、ヴォルフガングをウィーンへ引っ張ったり、作曲の邪魔をするシカネーダーを嫌ったり、コンスタンツェが邪魔だから追い出すためにウェーバー家を呼んだりする。
ヴォルフガングはずっと好きで音楽に関わっていましたが、上記のことなどが精神的負担となり、「曲を作らなきゃ……!」と、唯一献身的に支えてくれていたコンスタンツェのことも蔑ろにしてしまいます。アマデとしてはこれは良かったのでしょうか。
『モーツァルト!』では「アマデ」として描かれていますが、自己実現のために人間関係を蔑ろにしてしまうというのは実はよくあることなのではないでしょうか。私も反省しましたが、二兎追う者は……と言いますし難しいです。家族も家族で、自己実現のために頑張っている人に接する態度としてなにが正解なのかわかりません。ただ遠くから見守っていればいいというわけでもないでしょう。
本当に色々と考えさせられる作品で、何度見ても新たな発見があるので再演の際には是非。