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【バレル研磨解説②】バレル研磨機について簡単解説

有限会社 秋山産業は、大阪府でサンドブラストバレル研磨に関する機械・材料や各種研磨機材の販売、歯科技工用研磨材料の製造販売を行っております。

秋山産業が取り扱う”マニアック”なジャンルを皆さんに是非知ってもらいたくて、前回より「バレル研磨」について説明させていただいております。

前回は「①バレル研磨とは?」についてでした。

ここからさらに詳しく、第2回目以降は「バレル研磨に必要なものは?」について説明していきます。
人手不足と騒がれる昨今、バレル研磨は研磨工程において自動化が期待できることからやはり多くのお問い合わせをいただきます。初めてバレル研磨を知った方にも少しでも判りやすく丁寧な説明を心掛けていますので、少し長文になりますことをご容赦ください。目次欄から興味のあるところだけ絞って読んでいただいても大変嬉しいです。


湿式バレル研磨と乾式バレル研磨

まず予備知識として、バレル研磨には「湿式バレル研磨」と「乾式バレル研磨」というものがあります。
湿式バレル研磨」は水を投入して行うものであるのに対し、「乾式バレル研磨」は水を投入しないで行う手法です。
それぞれの特徴については別の投稿で詳しく説明するとして、まずは簡単にこの2つの手法があるということを押さえていただければと思います。

バレル研磨に必要なモノ

バレル研磨を行うためには、主に以下4つの機材を準備する必要があります。

  • バレル研磨機(機械・装置)

  • バレルメディア(研磨石) ※以下「バレルメディア」と呼びます

  • バレルコンパウンド

振動バレル研磨機によるダイカスト部品のバリ取り研磨

ただし、加工目的・条件によってはバレルメディアを使わなかったり(=被加工物だけを投入する)、「乾式バレル研磨」の場合では使用するバレルメディアによってバレルコンパウンドが不要だったりする場合があります。
また勿論、水は「乾式バレル研磨」で使うことはありません。

今回は「バレル研磨機」についてです

そして今回は「バレル研磨機(機械・装置)」について説明します。
バレル研磨機(機械・装置)にはさまざまなモデル(運動方式)があり、被加工物の大きさや1回あたりの投入量、研磨目的、目標研磨時間などから適したスペックを選定することが重要です。
では、どのような種類(運動方式)があるかについて、当社が取り扱っている3つのモデルを中心にご紹介していきます。

回転バレル研磨機

TM-30型(30Lモデル) ※オプション装着仕様
DT-200型(200Lモデル) ※SUS仕様
200Lモデル ※完全別注製作仕様

回転バレル研磨機についての概要

「バレル研磨機といえばこれ!」といった代表的なタイプです。
密閉型のバレル槽を水平回転して流動層を発生し、被加工物とメディアの連動差によって研磨を行ないます。

写真には「○○Lモデル」という記載がありますが、これは研磨槽(以下、タンク)の容量(容積)を指しており、大きければたくさんの被加工物を同時に研磨できます。回転バレル研磨機ですと産業用で最小のもので5リットル、大きいもので600リットルのモデルもございます。

なお、タンクの容量=被加工物の投入量ではない という点はご理解下さい。先にご説明の通り、バレル研磨には被加工物の他に、バレルメディアや水なども同時に投入する必要もあります。また、これらがしっかり運動することで研磨に繋がるわけですから空間の確保も必要です。
回転バレル研磨機の場合、被加工物とバレルメディアの混合物を投入する量はタンクの約50%であることを1つの目安としてお考えいただければと思います。また、この混合物の比率は 被加工物1:バレルメディア3 あたりが目安になりますが、これは諸条件によって大きく変わってきます。単純にこの目安に従うと、被加工物の投入量はタンク容量の12.5%程度ということになりますね。
あと、重量物を投入する場合などは、その装置がどの程度の重さまで対応可能かを事前に調べておく必要があります。

回転バレル研磨機のメリット

  • 装置価格が安価

  • 多ロットの量産加工が可能 

  • 操作が簡単

  • 構造が単純でメンテナンスが容易

  • 静かで堅牢なので長時間研磨に適する

  • 故障が少なく装置寿命が高い

回転バレル研磨機のデメリット

  • 研磨能力が低い

  • 回転運動なので被加工物同士の接触による変形・打痕のリスクがある

  • 選別・洗浄等の後工程への自動化対応が難しい

可傾式バレル研磨機

「回転バレル研磨機」には上記写真のような水平に回転するものが一般的ですが、流動層が長く研磨が増大する効率的なタンク形状で研磨能力を高めた『可傾式』モデルも存在します。
手動によるタンク傾動方式でベルト駆動の一般的なモデルの他に、ボタン操作で傾動可能な「自動傾動モデル」や、力が強くて比重の大きい被加工物の処理に向いている「モーター直結モデル」などもあります。

可傾式バレル研磨機 250Lモデル
可傾式バレル研磨機の動作

ローラーバレル研磨機

水平式回転バレル研磨機の中でもタンクを容易に脱着できるモデルです。大人一人でも十分持ち運びが可能な小さいタンク容量(5L、10L)のモデルで設定があります。
その装置のメリットは、タンクをシンクなどの水場まで持ち運びできるので装置本体付近を汚さない点です。ただ、小さいタンクだと遠心力が小さいので研磨能力はどうしても悪くなる傾向があります。

ローラーバレル研磨機 5Lモデル

振動バレル研磨機

CL-100型(100L・選別機構無しモデル)
VB-250D型(250L・選別機構無しモデル)
VB-150A型(150L・選別機構付きモデル) ※操作盤別

振動バレル研磨機についての概要

タンク内に三次元振動を発生させることで、加工物とメディアが流動し相互に摩擦することで研磨を行う装置です。
ロットの大きい量産加工に適しており、一般的な回転バレル研磨機に比べて研磨力が優れております。

タンクの容量は、産業用で最小のもので25リットル、大きいもので750リットルのモデルもございます。

回転バレル研磨機と同じく、タンクの容量=被加工物の投入量ではない です。振動バレル研磨機の場合、被加工物とバレルメディアの混合物を投入する量は、「選別機構無し」で研磨槽の約80%、「選別機構有り」で研磨槽の約60%であることを1つの目安としてお考えいただければと思います。この混合物の比率 被加工物1:バレルメディア3 あたりを目安とすると、被加工物の投入量はタンク容量の15~20%程度ということになります。同じタンク容積でも、回転バレル研磨機よりは1回あたりの処理量が多いのも振動バレル研磨機の特徴です
重量物を投入する場合などは、その装置がどの程度の重さまで対応可能かを事前に調べておく必要があります。

あと、水は多量投入する必要性は無く、メディアを湿らす程度の少ない量で研磨を行うことができます。

振動バレル研磨機のメリット

  • 回転バレル研磨機より研磨能力が高い

  • 多ロットの量産加工が可能

  • 操作が簡単

  • 遠心運動では無いことから変形や打痕が発生しにくい

  • 研磨中に加工物の状態を確認できる

  • 加工物とメディアを分けることができる選別機構を内蔵したモデルを選べる

  • 機種によっては別置きの選別機(振動タイプやマグネットタイプ)、コンパウンド自動供給装置を装着することも可能で、選別能率や作業効率が大幅に向上するチューニングを施すことができる

振動バレル研磨機のデメリット

  • 装置価格が高い

  • 振動、騒音が発生する

  • 構造が複雑でメンテナンスに費用が掛かる

遠心バレル研磨機

4L(1L×4槽)モデル
30L(7.5L×4槽)モデル

遠心バレル研磨機についての概要

複数個のタンクが公転・自転による高速連続運動を行なうことで、加工物とメディアに大きな遠心力がかかり強力な研磨効果を発生するというものです。
研磨力比は回転バレル研磨機の約30~40倍加工時間は振動バレル研磨機や回転バレル研磨機に比べて約1/10程度に短縮できます
その研磨力の強さから、回転バレル研磨機では困難な光沢研磨・鏡面研磨等にも威力を発揮し、その超精密研磨においては仕上げが困難な癖のある材質や複雑な形状の加工物にも幅広く対応します。

遠心バレル研磨機は他のバレル研磨機と違って、1台に複数のタンクが備わっています。タンクの容量は、産業用で最小のもので2リットル(1Lタンク×2個)、大きいもので200リットル(50Lタンク×4個)のモデルもございます。

2L(1L×2槽)モデル、2個の研磨槽が水平に配列されます

遠心バレルは複数のタンクを取り付けるという構造上 タンクそのものの容量を大きくすることができませんので多ロットの量産加工には不向きです。
逆に、少量多品種の研磨加工に向いております。標準仕様のタンクの他に、特殊なタンク(複室タイプ、シリンダータイプ)を用意することで

  • 効率の良い少量多品種の研磨加工の自動化を実現できる

  • 1室に1個の被加工物を投入することで、被加工物同士の接触が無くなり美しい仕上がり面を生成できる

  • 細長い棒のような変形しやすい形状の研磨加工にも対応できる

といったことが可能になります。これは遠心バレル研磨機ならではの自由の高い特徴と言えます。

標準タンク(1L)
【特殊研磨槽の製作事例①】2室タンク
【特殊研磨槽の製作事例②】8室ゴムシリンダー内臓タンク
【特殊研磨槽の製作事例③】シリンダータンク×4本を直接装置にセット

投入量については基本的に回転バレル研磨機と似たような考えになります。

  • タンクの容量=被加工物の投入量ではない

  • 被加工物とバレルメディアの混合物を投入する量はタンクの約50~60%

この混合物の比率 被加工物1:バレルメディア3 あたりを目安とすると、被加工物の投入量はタンク容量の12.5~15%程度ということになります。
重量物を投入する場合などは、その装置がどの程度の重さまで対応可能かを事前に調べておく必要があります。

遠心バレル研磨機のメリット

  • 研磨力が非常に強い

  • R付けなど研削加工や光沢仕上げにも活躍するので使用用途の幅が広い

  • 少量多品種の研磨加工に適する

  • 1台に複数のタンクが備わっているので、条件次第では別々の研磨加工を同時に行える

  • 特殊なタンク(複室タイプ、シリンダータイプ)を活用し、複雑なワーク形状や研磨条件に応じた自由自在なカスタマイズが可能

遠心バレル研磨機のデメリット

  • 単一部品の多ロット生産には不向き

  • 1台に複数のタンクが備わっているのでセットが面倒

  • 回転運動なので被加工物同士の接触による変形・打痕のリスクがある

  • 選別・洗浄等の後工程への完全な自動化対応が難しい(一部機種によってはある程度の自動化対応ができる)

  • 装置価格が高い

乾式遠心バレル研磨機

遠心バレル研磨機の優れた研磨能力を活用した、乾式バレル研磨専用装置もあります。
一般的な遠心バレル研磨機との違いは、タンクは粉塵を外へ排出する構造で完全密閉されておらず、排出された粉塵は装置内蔵の集塵機に回収される方式を採用している点です。他には、変形・打痕を防止するためにタンク室内を細分化したり固定治具を設けることで、被加工物同士の接触を防ぐ工夫を施しています。
乾式バレル研磨専用装置ならではのメリットは大きく2つあります。
1つ目はやはり水を使わないこと。水を使わないことで給排水設備が不要なので、社内における環境対策への負担軽減や導入時の制約が少なくなります。
2つ目はバフ研磨に匹敵するほどの美しい光沢面を得られることです。これを自動で行えるのは大きな魅力と言っていいでしょう。
デメリットは装置価格、ランニングコスト等 コストが非常に高いことです。

乾式バレル研磨による光沢仕上げ例

装置選定には事前の情報整理が重要

いかがでしたでしょうか?
今回は3種類のバレル研磨機を取り上げましたが、他に「過流バレル研磨機」や「磁器バレル研磨機」などといった装置もございます。

たくさん種類がありますがそれぞれのモデルに一長一短がありますので、先に申し上げました通り、装置選定の際には今回取り上げましたそれぞれの装置の特徴を参考の上

  • 被加工物のスペック(材質、形状、寸法)

  • 1回あたりの投入個数

  • 研磨目的

  • 目標研磨時間(1ヶ月や1日あたりの必要処理個数)

などの情報を事前に整理されることを推奨しております。

かなりの長文になりましたが、最後までお読みいただき誠に有難うございます。
次回は「バレルメディア(研磨石)・バレルコンパウンド」について解説したいと思います。ご興味ございましたら引き続きお読みいただけましたら幸いです。

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