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キューバで出逢ったアンティーク売りの青年

キューバの首都ハバナにオピスポ通りというストリートがある。
この通りは、ハバナの観光のメインストリートとなっており、連日多くの観光客で賑わっているストリートだ。
道の両サイドにお土産屋さん、レストラン、バーなどがたくさんある。 
この通りを抜けると、アルマス広場という少し拓けた広場にに出る。
そこにはちょっとした公園と、公園に面して多くのアンティーク、古本などの露店が出店しており、それらの小物が安く手に入る場所だ。
すべての店舗を見て回ったが、チェゲバラに関連する、コインや小物が多く置いてあるのを目にした。
やはりチェゲバラはキューバ国民にとって英雄のようだ。

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そこで、一人の青年と出会った。
彼はそのアルマス広場でアンティークを売っていた。
最初僕は、なんとなく彼が店番をしているお店に陳列されているアンティークを見ていただけで、買わないつもりだった。しかしちょうどいい感じのアンティークのブレスレットがあったため、少しその青年と値段交渉の会話をし始めた。

彼は僕と同じくらいの青年で、話をしていくうちに彼は日本のアニメと漫画が好きで、日本に興味があるという日本好きな青年であった。
日本のことを好きで興味があると言われると、日本人としてはやはり素直に嬉しいし、親近感がわくものである。

少し話をし、欲しいブレスレットがあったため一応彼にディスカウントしてくれるか聞いてみた。
彼は「近くに待機しているボスに聞いてくる!」
と言い、ボスに値段交渉。結果。。残念。。。
ボスにちゃんと聞きに行くところが彼の真面目で素直な性格を表している。
ブレスレットを購入し(日本円で千円ちょっとくらい)、その日は彼と別れた。

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そして、数日後その広場を通りすぎた。その日僕が向かう予定の場所までタクシーで行くため、その広場の近くでタクシーを拾おうと思ったからだ。
彼はまた同じ場所で働いていた。


彼に出逢ったのはたった数日前なので彼はもちろん僕のことを覚えていてくれて、少しだけ会話をし「タクシーでこの街まで行こうと思うんだけど、、、」僕が言うと


ボスに「ちょっとそこまで行ってくる!」と告げ
タクシーが停車する場所まで一緒に行ってくれ、場所の説明、値段の全てをしてくれた。

素敵な青年だ。
旅は見知らぬ土地に行き、誰かの助けを借りる。
人に助けられ、道を歩む。そして心が豊かになってゆく。

彼に感謝しながら、目的地へと向かい、 用事が終わり帰りもタクシーを拾ったその広場で降ろしてもらったため、彼にまた会うことができた。
お礼を言い、今度彼の仕事終わりに会って、ご飯かビールでも飲みながら少し話でもしよう、ということになった。

数日後、彼の仕事終わりの時間に広場に行き、彼の仕事終わりを待っていた。
お客さんが数人いたため、なかなかお店を閉めることができない。
彼は申し訳なさそうに僕の方を見て、「もう少し、待ってくれ」というようなジェスチャーをしながら、片づけをしていた。

彼は謝りながら、僕のところへ来た。
そして彼は
「ご飯ではなく、ハバナが一望できる、要塞へ行くこう!僕の好きな場所なんだ!」と言い、一緒にその要塞へ行くことへ。

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彼は嬉しそうに、要塞のことや、この街のことを案内してくれた。
キューバで、ここまで素敵な青年に出会えると思っていなかったし、だいたいキューバの人は案内したり、何かをするとチップを求めてくる。

しかし、彼は違った。

むしろ、彼は逆にチェゲバラが印刷されている、キューバ人のための通貨(キューバは二重通貨制)を僕にタダでくれた。
給料の低い(こんなことを言うのは大変失礼なのであるが実際のところ)彼にとって大切な紙幣のはずなのに、そんな貴重なお金を、ちょっと数日前に知り合ったばかりの僕にタダでくれたのだ。

夕暮れ時のハバナの街を見ながら、僕たちは色々と話をした。

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『彼の夢は海外へ行ってみること』


そしていつか

『日本へ行くこと』

と教えてくれた。

キューバ人は政府の許可なく海外へ行くことは許されていない。
そして、海外へ行くことができたとしても、キューバ人の平均月収、物価からすると、海外への渡航費用、滞在費用を捻出するには、彼らにとってはかなり厳しい現実なのである。

それでも、彼は輝いた目で僕に言ってくるものだから、話を聞いていてなんだか涙が出そうになった。
僕がしてあげること、できることって、日本のことだったり一緒に時間を共有することぐらいしかできないんだなと自分の力なさを感じた。


海外へ行くことが夢。
キューバ国民にとってそれは夢の中に分類される行為に値することなのかもしれない。

日本のことについて考えてみた。
世界最強と言われるパスポートを持つことができる日本に生まれたことが、どれだけ特権になるのか。
それは、もちろん、先人の方々の多大なる努力のおかげで、今の僕たちがその恩恵を受けているだけなのだが。
これだけ、どこかの国へ自由に行ける国民であるならば
若いうちから、もっともっと違う国、文化、歴史をみること、感じること、経験することをするべきなのではないかと。(もちろん簡単に海外へいく事が出来ない方々がいるのは承知である)
日本に住んでいることはものすごく便利で、綺麗で、スムーズに日々を送ることができる国なんだってことすら、外へ出なければ気付くこともないだろうし(悪いところも見えてくるが)、海外へ行ったら何かが変わるとかではなく、また違った視点から物事をみることができるようになると思う。

要塞の上で彼と色々と話をした後

「年上の彼女がいて、ご飯を作って待ってくれているから、そろそろ帰らないと怒られちゃうなー」

と、照れながら僕に告げた。とても素直で人間味がある青年である。僕らは一緒にバス停まで向かうことに。

バスを待っている間、彼は言った。
「いつか日本へ行くから、その時また会おう」

きっとどこかでまた会えるはず。

僕は持っていた、日本の五円玉を自分が首にしていたアンティークのチェーンに通し、彼にプレゼントした。
僕にできたのは、それくらいであったけど
彼の夢。日本を訪れると言う夢が叶うのを願って、
そして、彼が僕に出会ったという思い出を何か形にできればと思い
五円玉がアンティークのネックレスとなった物を彼に渡した。

彼はすごく喜んでくれた。
いつか絶対に日本へ行くと。


彼は笑顔でバスに乗り込み、大好きな年上の彼女が待つ家へと帰って行った。

そして、僕はこの素敵な出会いに感謝しながら、ステイ先のcasaへ戻った。

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