店舗で5感を活用して売上を変える方法
人間が外部から情報や刺激を受け取るには、5感と呼ばれる5つの感覚を利用しています。
5つの感覚は以下となります。
触覚
味覚
嗅覚
聴覚
視覚
でも、多くの店舗ではこれらの感覚を充分に活用していません。
簡単に変えられるものから、変えるのが難しいものがあるかと思いますが、あなたの店舗でこれらを変えてみることで、売上に変化がある可能性が高いです。
ぜひ挑戦してみてください。
触覚:さわることで理解が深まる
まず最初の感覚は触覚です。
触覚とは、人が直接なにかに触れたときに感じる感触です。手で触ったときに、足で触ったとき、口に触れたとき、人間の体のどこかに何かが接触したときに感じる感覚です。
そういう風に考えたとき、あなたのお店で、お客さんが触れるもの全てがお客さんの感じることになります。
1つ目の触覚として、椅子に座ったときの感触を考えてみましょう。
椅子に座ったとき、あなたはどんなことを感じますか?
柔らかい椅子に座ったとき、ふかふかで気持ちいい。硬い椅子に座ったとき、角ばっていてちょっと痛い。そんな風に感じたことはありませんか。
つまり、お客さんが座る椅子の種類によって、お客さんの感じることが変わってくるということです。このとき感じた感触によって、売上が変わるとしたら面白くありませんか?
『ハーバード・ビジネス・レビュー』にこのような記事がありました。
ある車を販売している会社で、お客さんにこの車の購入にいくらまで支払うつもりがあるかを聞きました。ただし、このとき、お客さんによって1つだけ条件を変えていました。
片方のお客さんの場合は、柔らかい椅子に座ってもらい、もう片方のお客さんの場合は、硬い椅子に座ってもらったのです。
すると結果はどうなったでしょうか?
硬い椅子に座っていた人の方が、平均して28%も低い価格を言ってきたのです。他には特に条件を変えていないので、単純に椅子の硬さによって、お客さんの財布の紐も固くしてしまったのです。
お客さんが触れる可能性のあるものは、すべてこのような影響を与える可能性があるということです。
お客さんが触る扉はどうでしょうか。扉を開けるとき、建て付けが悪くて、扉が開きにくかったりしたら、どんな影響があるでしょうか。
外側の扉の取っ手が汚かったら、どう思うでしょうか。汚い入り口で、触りたくないと思うことでしょう。触りたくないと思われたら、それで最後、お客さんがあなたのお店に入ってくることはないでしょう。
エアコンの風が、お客さんに直接当たっていたら、お客さんはどう思うでしょうか?もしかしたら寒いと思うかもしれません。このまま、この席に座っていたら、冷えて体調を崩しそうだと思うかもしれません。お客さんが席を変えて欲しいと言い出しにくい人であった場合、お客さんが早くお店から出たいと思うかもしれません。つまり、滞在時間が減り、注文も減るのです。
このように触覚によって、あなたのお客さんから得られたはずの売り上げが、得られなくなる可能性があるのです。
アクション
あなたのお客さんが、お店に入ってきてから、お店から出るまでに、触れる可能性のある物をすべてリストアップしてみましょう。
お客さんから見て、安心して触れたり、触って心地よいと感じるようになっているでしょうか。もしそうなっていないのであれば、どうやったらプラスの感情を感じてもらえるようになるでしょうか。
味覚:甘いものの魅力は悪魔的
飲食店であれば、食事が美味しいお店に、お客さんが来ることは当たり前ですよね。でも、飲食店以外であっても、味覚を活用することで、売り上げが変わるかもしれません。
例えば、お客さんとの商談の時にお茶を出しているかもしれません。最近は、コロナのせいで対面しながらの商談をするのは難しくなっているかもしれませんが、やはり一番売りやすいのは対面でセールスしている時です。
さて、この時に出しているお茶は、熱いお茶ですか?それとも、冷たいお茶ですか?
どちらであるかによって、あなたの売上が減っている可能性があるとしたらどうでしょうか。
基本的に、商談の時に出す飲み物は温かいものの方が良いとされています。人は暖かさを感じることで安心するのです。暖かいと人はホッとしますし、人から温かい対応をされると嬉しくなるものです。逆に冷たいものを飲んでいると心まで冷えて、あなたのことを厳しくみるようになるかもしれません。
飲み物以外にも、お菓子を一緒に提供することもありますよね。お客さんが欲しいものをあげることができると、あなたに好意を感じてもらえるようになります。また、返報性の法則によって、何かをもらうことで何かを返さなければという気持ちになりやすいです。
それに、人は何かを食べている時、幸せを感じます。三大欲求よ呼ばれるものでもありますし、人は仲の良い人としか一緒に食事をしたがりません。一緒に食事をしていることで、この人とは仲が良いのかもしれないと脳が錯覚を起こして仲良くなりやすくなる可能性もあります。
つまり、あなたの話がちょっとぐらい詰まらなくても、食べ物が美味しければ、そんなに悪い経験でなかったと感じるようになるということです。
想像して見てください。リモートで離れたところにいる人と話しているときに、相手に宅配便でお菓子が届きました。一緒に同じものを食べながら、打ち合わせすることができたら、どんな感情になるでしょうか?
アクション
試食を提供できないか考えて見ましょう。
スーパーの試食は効果的ですよね。お客さんは、美味しいかどうかわからない状態から、美味しいと言った状態に変わります。そうなれば商品が売れやすいのは当たり前ですよね。
飲食店でもお客さんが普段食べない料理を、サービスとして提供して見たらどうなるでしょうか。
お客さんに、冷たいものを提供しているなら、それを温かいものに変更できないでしょうか。
夏でも部屋を涼しくしていれば、温かい飲み物を出すこともできるでしょう。温かい部屋で冷たい飲み物を出すのか、冷たい部屋で温かい飲み物を出す方がいいのかは、テストしてみたほうがいいかもしれませんね。
お客さんや社員と話している時、一緒に何か食べることはできないでしょうか?
美味しいと感じるものを一緒に食べていると、それだけで話をするきっかけにもなりますし、共感も生まれます。
嗅覚:匂いだけでもご飯を食べられるなら
5感を活用することにも、だんだんなれてきたのではありませんか?
というわけで次は、嗅覚です。
僕は、例えば、雨の匂いが好きだったりします。昔、過ごした地元の街を思い出したりしますし、同じ匂いを嗅いだことがある場所を想起します。他にも線香の香りがすると実家を思い出します。このように匂いには、記憶を呼び覚ます力があります。
もし飲食店であるなら、匂いを活用することはとても強い力があります。正直、街を歩いていて、美味しそうな匂いがすると、どうしてもそちらに引き寄せられてしまいます。そして、お店に入るかどうかを検討します。
つまり、あなたのお店から、何かいい香りを外に流すことができると、お客さんを導くことができるということになります。
特に鰻屋さんや焼き鳥屋さんなどをイメージするとわかりやすいですよね。タレの焦げた匂いがすると、よだれが出てきて、その食べ物を食べた時の気持ちが呼び起こされてきます。そして、その経験が呼び起こされるとそれをまた体験したいという気持ちになってきます。匂いだけでご飯が食べれそうな匂いがすれば、お客さんが引き寄せられてくるのです。
僕の場合、チョコレートの香りがしても引き寄せられますし、バニラビーンズの香りも好きです。ワインの香りもいいですし、フルーツの甘い香りだって素敵です。そうした匂いを道を歩いている人に嗅いでもらうことができれば、あなたのお店にきてくれる可能性が高まります。
さて、飲食店ではない場合は、どのような香りがすると良いでしょうか。基本的には、あなたのお客さんが安心できる香りがいいでしょう。でも、その匂いが強すぎると、お客さんから臭いと思われる可能性があるので、気をつけておきましょう。
人は、いい匂いがする人に引き寄せられるものです。
そうやって、あなたのお店の匂いを覚えてもらったら、お客さんが他の場所で似たような香りを嗅いだとき、あなたのお店が思い起こされること荷物ながらいます。そうなれば、お客さんがまたきてくれる可能性が高まることでしょう。
あなたのお店ではどんな匂いがしますか?
アクション
あなたのお客さんは、あなたのお店でどんな匂いを感じますか?
それはいい匂いで、お客さんを安心させたり、幸せな気持ちにさせる匂いでしょうか?もし不快な匂いがする場所があれば、その香りがしないように改善できないか考えてみましょう。
外を歩いているお客さんに、幸せになる匂いを振り分けられないでしょうか?
お客さんがあなたのお店の前を通るたびに、いい匂いがしていたら、いずれお客さんはあなたのお店に来店してくれることでしょう。
聴覚:耳から入る情報は脳にとても近い
あなたはどんな音楽が好きでしょうか?あなたがある特定の曲を聞いたとき、どんな感情が生まれるでしょうか?
楽しい歌を聞くと、あなたも楽しい感情になりますし、悲しい歌を聞けば、あなたも悲しい感情になるでしょう。
つまり、人はその曲に込められた感情に、近づいていくことになります。
とあるスーパーでの実験を紹介しましょう。このお店ではワインを売っていたのですが、そのワイン売り場でかけている音楽を変えてみることにしました。
日によって違う音楽をかけるようにしたのです。ある日は、フランスの音楽、違う日にはスペインの音楽、など違う国の音楽を流したのです。
結果はどうなったかというと、フランスの音楽を流したときには、フランスのワインがよく売れ、スペインの音楽を流したときにはスペインのワインがよく売れるようになったのです。
他に何の違いがなくても、お店に流れる音楽によって、売れる商品が変わるのです。面白くありませんか。
他にもこんな事例もあります。
とあるお店で2種類の音楽を流しました。片方はゆっくり目の音楽、もう片方の音楽はテンポの速い音楽です。するとどうなったでしょうか?
お店の滞在時間が変わったのです。もちろん、ゆっくり目の音楽が流れていた場合、お客さんのお店の滞在時間が伸びて、早い音楽の場合は、滞在時間が短くなったのです。
つまり、ビジネスモデルとして滞在時間を伸ばしたいときには、テンポの遅い曲を流して、逆に回転率を上げたい場合は、早い音楽を流すのです。
こうしたことを考えて、あなたのお店で流れる音楽を決めているでしょうか?
アクション
あなたのお店では、どんな種類の音楽をかけたらいいでしょうか?
別の国の音楽でしょうか、別の時代の音楽でしょうか、何かの作品の音楽でしょうか。切り口はいくらでもあります。あなたのお店で売り上げを伸ばしたい商品に合わせて、音楽の種類を考えて見ましょう。
あなたのお店では、どんな早さの音楽をかけたらいいでしょうか?
お客さんにゆっくり過ごして欲しいならゆっくりな音楽。素早く対応したいのならテンポの速い音楽にしてみましょう。もちろん、実際にテストして試さないとダメですよ?
視覚:目から脳に行く情報はほんの一部でしかない
視覚は普段から一番使っている感覚器です。ですが、当たり前だと思って、多くのことを見逃していませんか?
人は、何かを見るとき、1箇所を集中して見ています。だから、見ていたはずなのに、その周りのものは覚えていないなんてことがよくあります。例えば、あなたの友達が今日、どんな靴を履いていたか覚えていますか?
注意して見なければ、きっと詳細は思い出せないはずです。
さて、そのような状態なので、視覚を活用するには、視線が集中するように、対象となるものを目立たせる必要があるということです。
例えば、動きがないものならそのまま見逃してしまうかもしれませんが、動いているものには目が行きやすいです。
多くのお店で既にやっていると思いますが、POPの作成も効果的です。ただし、目立たせて視線を集めても、その内容を読んで、お客さんが購入するかは、POPの内容にかかってきます。その内容でも、商品の興味を惹くことができれば購入の可能性は高まることでしょう。
このようなPOPがなぜ効果的かというと、普段と違うからです。通常時は、何も置いていなかったところに、いつもと違うものが置いてあると、そこに注目します。違いがあることによって、生命の危険が訪れるかもしれません。それを確かめるためにも、反応して見てしまうのです。
だから、注目して欲しいものがあるときには、それをいかに目立たせるかが重要です。もしくは、それ以外のものをいかに目立たせないかが大事になってきます。
お客さんの視線がどのように動いていくのかを計算したり、設計することで、売上をあげる施策を打ち出しやすくなります。
アクション
あなたのお店で現在目立っているものはなんですか?それは売上にどのような影響を与えていますか?
お店の前に看板を置いているなら、それを如何に目立たせるかと、見た後にお店に誘導できるかが大切になってきます。
例えば、看板には【無料】もしくは大幅割引のクーポンを配布していると書いておいて、クーポンをとったら今すぐ使えることを伝えてみるのはどうでしょうか。
第6感:全ての感覚を統合して感じる印象
ここまで5感を活用して、お客さんに影響を与えることを試みてきました。ここまでの手法に共通していることは、お客さんに直接買ってくださいだとか、こっちにしたほうがいいですよ、というあからさまな誘導をあんまりしていないということです。
お客さんは売られるのは嫌いますが、買うのは好きなのです。
だからこそ、お客さんが自分の意思で、商品を買うようにするべきです。それに加えて、お客さんが買いやすい感情になる環境を用意してあげることが大切なことです。このような環境に変えるきっかけになるのが、今回紹介した、5感を活用する手法です。
お客さんを、あなたの求めている方向に少しだけ行きやすいようにしてあげる…そうした手法を行動経済学ではナッジと呼びます。
ナッジ(nudge)というのは、英語で肘で突くというような意味の言葉で、行動経済学者のリチャード・セイラーが命名した概念です。
人間の行動は、90%以上が無意識に行われています。意識的に行われる部分は、実はそんなにないのです。つまり、無意識をうまく活用することで、あなたはこれまでの10倍以上の成果を出すことができる可能性があるということです。
行動経済学にも興味が出てきませんか?
最後に
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この記事のようなマーケティングの手法や行動経済学。それをどうやって実施したらいいかについて、具体的でわかりやすく解説していくことを考えています。
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