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本との遭遇覚書・憧れの少年探偵団

小学生の頃は探偵小説を読んでいなかったのです。
乱歩の少年探偵団もホームズも、表紙が怖くて手に取ってなかったのです。

唯一読んでいたのはマガーク少年探偵団でしょうか。あれは好きでした。なので少年探偵団との出会いは彼らかも知れません。
ひとりひとり特徴があり特技があり役割がある。集団活動が苦手な僕も、少し憧れるのですよ。そして自分ならどの役どころがいいかなと考えるのです。
僕はリーダー志望はなく、リーダーの横にいる人に憧れましたね。副官とか参謀とかあれですよあれ。意外と同じように思っている人は多いようで。
実際、中高に至るまでクラスでは委員長は務めず委員長の相談役みたいなのが多かったです。影の支配者です。いや、そういうことではなく。

『憧れの少年探偵団』(秋梨惟喬)と遭遇。
少年探偵団に憧れた僕の前に現れた転校生。彼はまさしく名探偵にぴったりの頭脳を持っていた。
謎と推理のバランスが絶妙なんですね。初っ端は密室殺人事件を扱うのですが、それでも日常の延長線上に事件があるのです。その後の事件も同じく突飛になり過ぎない。でも魅力的である。
その上で謎を解く手がかりや道筋も、小学生離れし過ぎず、それでいて視点をずらすことの見事さにやられるのです。
名探偵ゆえの見えてしまう、わかってしまう苦悩も描く。子どもにそれを背負わせるのかと思わなくもないが、フォローもある。何より仲間がそのことに気づき心を配る。そこもいいんです。
作者に数合わせと言われた子も、それぞれが語り手となって動くことで個性を発揮する。力自慢の子は人をよく見て観察しているし、情報係の子も頭でっかちなわけじゃない。ひとりひとりが語ることで、グループとしての面白みも増す展開が素敵なのです。
だからこそ、最後のエピソードの最後に明かされる顛末が、きらり輝くのですね。

創元推理文庫から出ているものではありますが、子どもたちにミステリの面白さ、少年探偵団の面白さを伝えてくれるものとして紹介したい作品ですね。


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