
本との遭遇覚書・怪人二十面相
昔からみんなが通る道を通っていないということがよくあります。
敢えて流行から離れているわけでなく、自然とそうなるのです。
まあ、みんながやっているからやるという選択肢をほぼ持たないことが原因なのでしょうが。
子どもの頃から本が好き。現在ミステリが好き。となると、多くの人の入口となる本がありますよね。
『怪人二十面相』(江戸川乱歩)との遭遇。
しかし僕は子どもの頃、少年探偵団を読んでいなかったのです。
たまたまではなく、わざと避けていました。
理由は簡単。「表紙の絵が怖かったから」です。それに漏れ聞く乱歩の噂も血まみれ残虐猟奇怪奇みたいなもので、怖がりだった僕にはとてもじゃないけれど手に取ることができなかった本なのです。
なので出会いは遥か後年、20代の頃です。
その頃は新本格ムーブメントに乗っかり、ミステリを手当たり次第に読んでいた時期です。そうなると方々で乱歩の面白さが語られるのを耳にするのです。
ええー本当に? 怖くない? 大丈夫? と怖々手に取ったのが『孤島の鬼』でした。
いきなりそれかい!! と今の僕なら思います。でも乱歩を避けていた僕には何を読めばいいかわからず、たまたま古本屋で見かけたその本にしたのです。
読みました。
面白かった。
読んでいる最中、大興奮ですよ。これでもかこれでもかと惜しげも無く散りばめられるサービス精神の塊みたいな作品ですからねえ。
えらいこっちゃー、何で読んでいなかったんだー! とそこから貪るように買い集め読みましたとも。
そして手に取る『怪人二十面相』。怖くて手にできなかったあの本です。
読みました。
面白かった。
これまた大興奮ですよ。そして何故子どもの頃に読まなかったのかと悔やみましたよ。これは子どもの頃に読んでこそだろうと。もちろん大人も楽しめます。楽しめますが一歩引いた楽しみ方になるんですね。物語世界にどっぷりはまり込む楽しみ方じゃない。ああ勿体ないことをした。あの頃に戻って、いいから読め! と押し付けたい。
そんなことが他にも多々ありまして、読みたい本は自分で見つければいいが、自分だけでは到達できない本もあることを強く思ったのです。
だから、この本は面白いよ、あの本も面白いよと大きな声で叫び続けるのです。誰かの耳に届きますように。