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本との遭遇覚書・世界が終わる前に

本好きな人が登場する小説が好きです。その人が実在の本について語るような内容が好きです。
と言うと、どのような作品を思い浮かべるでしょうか。どのような作品が登場するのを思い浮かべるでしょうか。
大抵そこに登場するのは古典児童文学や近代文学なんですよね。もしくは一般文芸作品。
そりゃまあそうでしょう。ある程度の知名度がなければ実在の本を扱う必要はないかも知れません。一から本の内容を説明するよりも、みんながお馴染みのあの作品の方が話の展開もしやすいでしょう。
また作品タイトルが出てきた時に、なるべく多くの人が興味を示すものがいいでしょう。
だから実在のライトノベルやSFなどが出てくる小説作品って、なかなかお目にかかれないのですね。

『世界が終わる前に BISビブリオバトル部』(山本弘)と遭遇。
ビブリオバトルとは決められたルールを元に本を紹介して、参加者が読んでみたいと思った作品に票を投じるというもの。
第3弾である今回はミステリがテーマでした。
読んでいて仄かに漂う違和感が解明された時に訪れる世界の豹変。そう来たかと、まさにゾクゾクする快感が得られます。作品自体を通してミステリの魅力が語られるのですね。
好きなものを好きと言う。簡単だけど難しいのです。本が好きでよかったと強く思うシリーズです。

このシリーズはビブリオバトルであるがゆえに、あまり人が知らない作品を挙げることができます。「読んでみたい」と思わせなくてはいけないということは、「既に読んでいる」ものには票が投じられないのですから。
しかも主人公の少女は筋金入りのSFマニアです。そこにミステリマニアが絡むわけですから、まあマニアックに作品タイトルがポンポン飛び出します。
しかもこれは面白い! あれは読むべきだ! それもいいぞ! と次々に推してくるから堪りません。
そしてここではライトノベル作品も当然のごとく出てくるのです。それが嬉しい。
ライトノベルやSFやファンタジーは、そのジャンルであるだけで手に取られないことがあります。だからその魅力を語る本があってほしい。しかも本が好き、小説が好きな人の目にとまる形で。

入口があちこちに設けられれば、自ずと読む人も興味を持つ人も増えるのではないか。
そう思うのです。
そう思うからこそ僕は、古本市やマルシェイベントなどでも堂々とライトノベルや若者向け娯楽小説を並べるのです。
ここにきている人たちは、これを求めているわけではない。そんなことわかっていながら、それでもここにこんな面白い本があるんだよと伝えたいがために並べるのです。

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