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危機を乗り越え、チームワークで築いたスリランカ工場の物語

連載企画「ダイキアクシスグループ海外工場立ち上げ・運営の裏側に迫る!」
財政破綻の真っ只中、数々の試練に立ち向かい完成したスリランカ工場。
今回は、日本人スタッフとスリランカ人スタッフの想いがこめられた工場建設の裏側に迫ります。
この人なくしてスリランカは語れない。スリランカ工場建設のリーダー的存在、海外営業統括部担当部長の小和瀬さんにお話をお伺いします。


■小和瀬 塁(おわせ・るい)海外事業統括本部 海外営業統括部
2015年入社。ダイキアクシスインドネシアの前身であるPT. BESTINDO AQUATEK SEJAHTERAを取引先としている会社で中東・アフリカの日系企業を中心に浄化槽の営業を行う。その後、PT. BESTINDO AQUATEK SEJAHTERAの子会社化を機にダイキアクシスに転職することを決める。入社時は、「Hello」「Good bye」「Thank you」しか英語が話せずに苦労した。

コスト削減から始まった工場建設計画

まず普段の担当業務について教えていただけますか?

スリランカ法人であるDAIKI AXIS ENVIRONMENT (PVT) LTD.<スリランカ>のマネージングディレクターとして運営に携わっています。
主には、営業の方針を定めたり、案件の進め方のレクチャーやレギュレーション(規則・規程・ルール)策定の計画をしたりですね。
マネジメントだけではなく、重要なお客さまにプレゼンを行ったり、他にはミャンマーやバングラデシュなどの法人を立てていない国へ営業に赴いたりもしています。

まさにプレイングマネージャーですね。
工場建設はどのように決定されたのですか?

2021年5月に法人設立はしていて、その時は現地生産を行わずに輸入を行って販売していこうという計画を立てていました。
けれど、政府の推し方やレギュレーションに基づいて、小型浄化槽XH-5型の販売が予想以上に進みました。当時は輸送コストが高くて利益を回収するのが難しかったこともあり、販売台数が見込めているのであれば現地生産を視野に事業試算を行ってみたのです。結果、十分に元は取れると判断し、上に掛け合ってみました。上からもそれなら現地生産を視野に入れた方が良いよねってことで工場建設の話が進んでいきました。
新型コロナウイルスの影響で日本人も自由に渡航できる状況ではなかったので、新たに誰かが行くよりは私がそのままプロジェクトも建設もコントロールするのが一番現実的ということで工場建設のプロジェクトに関わることが決まりました。

「輸入を行って販売をしていた」ということは、浄化槽は組み立てたものを輸入していたのでしょうか?

そうですね。組み立てた完成品をコンテナに詰めて輸入していました。でも、輸送に使っていた40フィートのコンテナに詰め込めるのは12基が限界ですが、コンテナの中はスペースが余っているので輸送コストがもったいないという話になりました。

組み立てる前だと、どのくらい輸送できるのでしょうか?

組み立てる前の状態だと、おおよそ3倍弱の浄化槽が製造できるくらいの部品が積み込めます。なので、現地生産をする方が明らかにコストパフォーマンスが良かったのです。

なるほど。そういった面でも現地生産に理があったのですね。
現地生産をするために工場を建てると話した時のスタッフの反応はどうでしたか?

スタッフは前向きに捉えてくれました。
どの国でも同じだと思うのですが、やはり現地生産した製品は政府の推奨やサポートが得られやすいのです。それと日本の技術で作られた製品となるとマーケティングやコストだけではない違う面でもベネフィットが得やすいこともあって、スタッフ全員が工場建設のプロジェクトへ積極的にサポートしてくれました。

完成した工場で浄化槽を組み立てる皆さん

スタッフ以外の方の反応はどうでしたか?

環境省の方に非常に喜んでいただけました。環境セミナーに環境省がブースを出していたのですがそこに「浄化槽を持ってきてほしい」と言われ、運んだ浄化槽を置いて説明を行っていただきました。現地の方たちも前向きに受け入れてくれていると思っています。

訪れた試練を乗り越えて―

工場建設中にスリランカで財政破綻が起きましたが影響はありましたか?

影響は受けていたと思います。破綻宣言があった後、インフラ面はかなり大きなダメージを受けました。ガソリンも不足していて、三日三晩並んでようやく手に入るって感じですね。
物が運べない、作業員が来られない、電気が来ないなどの通常では考えられない問題が起きました。ですから、作業も軒並み遅延が続いて、2ヶ月と少しの間何もできない時期があり、当初予定した完成時期から何か月も遅れて2022年10月に完工となりました。

新型コロナウイルスの影響はあったのでしょうか?

コロナの影響がだいぶ落ち着いた状況でプロジェクトがスタートしたので、新型コロナウイルスの影響はそんなに受けませんでした。
スリランカとしては、先ほどもお話しましたが財政破綻の影響の方が大きかったです。

大変だったのがこちらにも伝わってきます。
そんな中進めた工場建設で何か心に残るエピソードがあったら教えてください。

そうですね。心に残ったと言えば現地社員のみんなが工場の建設に関わったことでしょうか。
財政破綻の影響でガソリンが補給できないので、普段はメンテナンスで外回りをしているスタッフがある日突然来なくなった作業員の代わりに施工を手伝ったり、工場に隣接するオフィス棟にみんなでペンキを塗りました。私にとってもスタッフにとってもかなり思い入れのある工場になりました。

スタッフ全員で協力して建てた工場

皆さんの想いがこもった素敵な工場になりましたね。
現地生産が可能になった体制で、今後のマーケティングターゲットはどこを見据えているのでしょうか。

製造するのが一般家庭用のXH-5型なので、一般家庭に納入することになりますが一軒一軒営業に回っていくのは大変なので、もちろん前者も続けながら大手ディベロッパーへプロジェクト向けに大量に買っていただくというのを目標に営業をしています。

ちなみにスリランカの下水道の普及率はどのくらいでしょうか?

下水道普及率は5%未満ですね。
コロンボやキャンディは日本のODAが入り、下水道が普及していますがエリアが限定的なのでそれだけでスリランカ全体の水質をカバーするのは現実的に難しい状況だと思います。
政府の財政状況的に集中下水道の大規模なインフラ整備は進捗が芳しくありません。ただそういった状況でもプライベートカンパニーとしてビジネスをしている方が多く、そこをターゲットにしていくとビジネスチャンスはまだまだあると思っています。

下水道普及率が低いですが、水環境の現状はどんな感じですか?

都市部は徐々にという感じですね。ただ水質っていうのは「汚い」の基準をどこに置くかで評価は変わると思うんです。
例えばインドのガンジス川とスリランカのコロンボに流れる川の水質を比べるとコロンボの水質は良いってことになりませんか?スリランカの方は、これ以上水質を悪化させない。公害が起きる前にきれいに保つ。というところに賛同し、事前に動かれています。

問題が起こる前に対応する姿勢はすごいですね。

そうですね。水質が極端に悪くならないのは重工業が発展していなくて、観光業が中心なので公害が起こりにくい環境にあることも一因かなと思っています。

スリランカの街並み

ありがとうございます。
最後にスリランカという国は、小和瀬さんにとってどのような国か教えてください。

スリランカの方たちはまじめで識字率も高く、英語も話せる人が多いのでローカルマーケットだけでなく、今後ビジネスモデルの組み立てなど、新しいことを始める時に力になってくれる、進められる国だと思っています。
今後も積極的にビジネスを展開し、スリランカの水環境に貢献してまいります。

小和瀬さんとスリランカスタッフの皆さん


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