#17 耳をふさげば
-かすかに、届いている気がする-
家でよく映画を見るのだが
音量をとてつもなく気にしている。
去年、今の家に引っ越してから
隣人の生活音が以前の家より多少だが聞こえるのだ。
ならば自分の家の音も相当聞こえるはずだと思い、テレビの音を下げるようにした。
もちろんテレビだけでなく大音量で歌うなり、大音量で音楽、ラジオを流す、一人で思いきり暴れてみるのも避けている。
暴れたことはないんですけれども。
小学生の頃、自分の部屋の上は父親の部屋だった。
父親も映画を観ることが好きで毎週レンタルDVDを何本も借りては観ていた。
一緒に行けば自分もDVDを借りられるので毎週楽しみなイベント。
父親はアクション、戦争映画を好んでよく借りていたものだから、決まって週末の夜は僕の部屋の上で銃撃戦が繰り広げられていた。それがまたかなりの音で。
マフィアの家なのかここは。
ゴッドファーザーがいるのか上の部屋には。
上の部屋にはマーロン・ブランド。
そんな僕はアル・パチーノ。
とふざけて思っていたものだ。
十数年経ち、今となっては父親の気持ちも分からなくもない。
小さい音だと、特に映画を見ている時なんかはどうにもこうにも迫力に欠けて、ストレスがたまる。
最近ロバートデニーロ主演の「ワンスアポンアタイムアメリカ」を家で観ていたとき
序盤で延々と電話の音が聞こえるシーンがある。
電話が映っていたり誰かがすぐ電話を取るならまだしも、まったく電話とは関係のないシーンで延々と電話のベルが鳴り、それが長い。
音量小さめで観ていた僕は
てっきりスマホのアラームが鳴ってるのだと思い、映画そっちのけでスマホを探してアラームを止めようとした。
そのあとすぐそれが映画の演出上、鳴らしていたものと分かり、くぅーーと悔しい声を上げたものだ。してやられた。
長い映画だが非常に面白い。名作。
ぜひご覧あれ。そのシーンにも注目だ。
兎にも角にも
小さい音量で見るのが嫌になった僕は
ヘッドフォンを買ってみた。
お試しなので、比較的安めのを。
正直、買ったヘッドフォンの音質は微妙だが
夜中に大音量で映画を見れるのは嬉しい。
いくらマフィアが撃ち合おうが、ミュージカルシーンで歌い踊ろうが、爆発シーンがあろうが関係ない。
最高だ。
ちなみに家でラジオや音楽を聴くときは、ワイヤレスのイヤホンをしている。
音量を気にしてるのもあるが基本的に作業をしている時に聴くので、移動しながら動きながら安定して聴くのに最適なのだ。
そう、そうすると、だ。
家に滞在時、テレビはヘッドフォン、動いているときはイヤホン生活をしていると外部の音に気づかないことが増えてしまった。
わざわざ時間指定した荷物が届いたのにインターホンに気づかず、おかしいなと思ったら不在通知の紙がポストに入っていたこともある。
大雨と雷の音に気づかず、颯爽と玄関の扉を開けて呆気に取られたこともあった。
根拠はないが耳にも悪いのではないか。
音量を気にせず常に装着していたら聴力も落ちているかもしれない。
と言っても
この生活がなじみ始めた。
やめられそうもない。
もっとなじんだら、もっといいヘッドフォンを買おう。
そこまで思ってる。
いや、その前にそんなもん気にしなくていい
どてかい家に住めって話だ。
そっちを目指そう。
さて、今日も
おもいきりドンパチしてやりますか。
いよいよ暴れますか。やってやりますか。
昨日も実は激しかったんだけどな。
すごい闘いだった。
おうおう野郎ども、俺には銃は必要ないぞ。
ナイフ?こぶし?ノーノー。
必要なのは、ヘッドフォンだ。
まもなく22時の東京都内、自宅、
窓の向こうは微かな灯りと寒空が広がっている。