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#23 寝転びながら鼻すする






-おて、おかわり、おすわり、できるわけないか-



小さい頃から
動物が身近にいた。

ヒトだって動物だろ、ホモ・サピエンスがどうたらこうたらという動物学的な話ではない。
かといってライオンやキリン、ゾウみたいな、いわゆる動物園にいる類のものでもない。

主によく家で飼われる動物たち。

実家では
猫、犬、ハムスター、インコなど。

よく一緒にいた記憶があるのが
猫である。
名前はもちろんある。

実際今も実家に二匹いる。

あまりカウントするのも心証が悪くなりそうだが今までに7〜8匹は飼ったことがあるのではないだろうか。

物心ついた時には
となりに猫がいて、一緒に寝るなり、遊ぶなりしていたものだ。
僕が一生懸命ゲームをやっているとそれを見守るように隣に座ってくれた。
寝ていると上に乗って丸くなり寝る。

あちらからしたら、僕がペットだったのかもしれない、とふと思う。

なぜそんなに昔からいるのかと言われると僕にもよく分からない。
親が動物を好きなのか、姉が好きなのか。
僕の意思で飼ったことはないので気づいたら家族の仲間入りを果たしている。
ウェルカム。

10年近く前に実家を出て一人暮らしをする頃には、動物が近くにいすぎたのかなんなのか僕は軽いアレルギーが発症したのである。
マジだ。
外出していると何も問題はないのに家に帰った途端、鼻が詰まる、鼻水出るのオンパレード。
休める場所である家が地獄絵図に様変わり。

最初それに気づかなかった。
あーハウスダストかなー、花粉かなーなんて軽く思っていた。
ミステリードラマさながら、僕の周辺をうろちょろしている近しいヤツらが真犯人だと気づくのは数年後のことだ。

きっかけは、健康診断を受けたときアレルギー検査もついでにやってもらったこと。
このアレルギー検査がまた衝撃的な結果だった。

もともと知りたかったのはどの花粉と相性が悪いのか。

のはずが、
猫やある食べ物一連が重症ではないが数値が高く出てしまった。

郵送で来た検査結果の紙を
口をあんぐりあけながら見た。
もちろん変わらず僕の隣にそれを見守る猫がいる。目をパチクリさせて。
なんとも間抜けな絵面である。
「謎は全て解けた!」と言ってやりたい。


あるフルーツを食べると口の中がむず痒くなる。
僕は小さい頃からみんなそうなのだと思っていた。
みんなむず痒い思いをしながらこのフルーツの美味しさにやみつきなんだ、と勝手に解釈をしていた、その十数年間。

え、違うのと気づいた時にはフルーツとの思い出が走馬灯のように流れた。

その日から、仲のいい人に会っては
あれ食べると口の中痒くならない?ねぇねぇ。
と聞きまくる日々。

猫は大好きだ。
フルーツも大好きだ。

だが心と体は別問題。

まだ軽症でよかった。
付き合い方がわかった今、少量ならフルーツを食べるし、猫に関しては鼻が詰まることを覚悟して実家に帰る。
そしてほぼ触らぬようにして自分の部屋には一切入れず、遠巻きにかわいいねー、写真撮るよー、動画撮るよーと言い近づいてくると
くるな!!と逃げ回る。
猫からしたら、とんでもないツンデレの男だと思われてるに違いない。


大量に保存されている我が家の猫の写真や動画を見ながら、フルーツジュースを手に取る。
こんな僕ですが、仲良くしてください、猫。
美味しく飲ませてください、フルーツ。

あれ、結局花粉はどれがダメだったんだっけな。

鼻を啜りながら、冷蔵庫を閉じた
東京の18時頃、まだひんやりと寒い。


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