インフラエンサー
要旨: ある種の技術系・技能系VTuberによる再生産のプロセスを愛でよう、というお話
多様な技術系VTuber
専門的な情報を発信するVTuberさんが数多く活躍されています。科学、ビジネス、プログラミング、作曲やイラスト…幅広い分野で有益な情報を提供しつつ、VTuberとしての側面も併せ持つその存在感は、界隈の知性や多様性を示す明るい側面として、これまでにも注目され、取り上げられてきました。
これは例えばエンジニアがキャリアの一環として技術ブログを執筆する姿の延長のように見えますが、中の人を明かさず、自らのキャリアとは切り離して活動されている方もいるようです。
バーチャル系VTuberの神話
さらに細かく見ていくと、VRやモデリング、アプリ開発などVTuberに関連することを活動範囲に定めている方もいます。普通に有名なねこますさんを置けば、みゅみゅ教授や、もちひよこさんを代表として挙げることができると思います。
活動の元々の動機は、バーチャルの展望や技術を共有するために、自らVTuberに成ったという方が多いのだと想像します。この方々が黎明期において極めて重要な役割を果たした事は間違いありません。
当記事の主題は、このカテゴリの境界が曖昧になっており、似た性質の者が実は想像より多い、ということです。
広がり
このような存在は技術系の企業ではよく見られ、人間の場合はエバンジェリストなどと呼ばれています。新しい技術やサービスの素晴らしさを広める伝道者のことを指します。一口に言っても活動は色々で、開発ばかりで普及活動をしない人も、開発をあまりやらない人もいたり。
よく似た名前に、インフルエンサーというものがあります。技術からは少し遠ざかり、ブロガーや芸能人が担う役割であったりします。近いところでは、bot技術におけるりんなを想像すればいいでしょうか??
VTuber自体がイメージキャラクターの上位互換、バーチャルに関するインフルエンサーと言えます。エバンジェリストとの大まかな違いは、技術よりか、マーケティング・広報よりなのか、という点で、連続的に様々異なる立ち位置がありえると分かります。
ここに、VTuberのコンテンツとしての多様性が加味されます。普通、VTuberの活動は、VR技術や3Dモデリングなどに支えられていますが、Live2Dの普及によって(その是非はともかく)間口が広がったのちには、極端な例として、絵師さんもVTuberとしてデビューすればその役割を担えるようになったといえます。潜在的な人口の増加が、今後、目に見える変化をもたらすのではないでしょうか。
具体例
境目が曖昧になったところで定義をもう一度たどるべく、具体例を見ていきたいと思います。ところで…タグを見落とした諸賢には申し訳ないのだが、ここは、にじさんじ箱だったのだ。
先程が絵師さんの例でしたので、歌について見てみましょう。下記の動画は、歌を中心に活動して人気急上昇中の夢追翔さんが、同じにじさんじ所属の緑仙(敬称略)の歌をミックスする、という動画です。完成したものは、緑仙のチャンネルでコンテンツとしてアップされています。
作曲系VTuberが歌系VTuberのミックスを担当する、楽曲提供する、プロデュースする。このような例はにじさんじ以外でもみられます。夢追さんの本質はシンガーソングライターであり、自作曲と歌がメインで届けたいことだと思いますが、裏側に回ることも有るし、出来る、ということです。
すなわち、バーチャルの関連技術だけでなくコンテンツ製作や配信のノウハウまで対象となり、視聴者に技術を紹介するエバンジェリストの側面と、視聴者に直接的に影響を波及させるインフルエンサーとしての本来の能力を備えたVTuberが、この記事で注目しているカテゴリと言えます。インフラを支えると同時にインフルエンサーでもあるため、インフラエンサーと呼ぶことにしました。
では、ゲーム系の方がゲームの解説動画を出したり、歌系の方が発声法を教えてくれるのはどうでしょう?マインクラフトのサーバ管理出来る方、建築が上手い方は…?
…諸説ある
多様であるということは、虹のように連続体(スペクトラム)である訳ですから、境界はまだまだ曖昧で開かれています。界隈により多く貢献する者が偉い、みたいな論理でしょうか?
一視聴者としては、「放送作家のラジオ」のような舞台裏を垣間見る面白さを感じていますが、何より、インフラエンサーたちの活躍によって新規参入の障壁が下がり、一層多様で活気にあふれた業界になっていって欲しいと考えています。裏方系って言うな。
魂はひとつじゃない
VTuberのコンテンツは、特に企業勢の場合は特に、多人数の合作です。その意味で、VTuberの魂は一つではないとも言えます。造形をした人がいる時点で、その多重性の度合いはYouTuberよりも高いのではないでしょうか。
もちろん、声と人格(あるいはRP)が体感9割くらい大事ですが、例えばゲームをやる人が別にいてもいいのです。その意味で、VTuberはこれまで天才が担ってきた、人格への羨望のようなものを代替しているのかもしれません。
しかしそれでは「無名の中の人」という、つまらない存在を産んでしまいます。なので、インフラエンサーという新しいVTuberが立ち上がるのを応援するのはいかがでしょう。
補遺
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?