第43回「関ヶ原の戦い」
わたしは石田三成に似ているらしい。
関ヶ原の戦いが終わりましたね。
実は私事ですが、若くして急逝された友人の誉田龍一先生から生前に、「杉山さんは石田三成みたいだよね」と言われたことがあります。
作家仲間の鈴木英治先生と誉田龍一先生と私の三人で、来日したTOTOのライブを日本武道館に観に行った 帰り道。三人でバーで飲んでいるときのことでした。
もちろん、誉田さんは最大の褒め言葉として、私を三成に例えてくださったんです。
私は元は大手IT企業で経営幹部として、販売戦略や事業計画の策定の仕事をしていました。退職後は歴史時代小説家になる訳ですが、鈴木英治先生や誉田さんと一緒に、歴史時代作家の団体である「操觚の会」を立ち上げ、その事務局長を務めていました。
誉田さんは、そんな私の事務能力や調整力を認めてくださり、秀吉に負けぬほどの天下の大出世をして秀吉亡き後の天下の政を担っていた官僚のトップである石田三成に擬えて褒めてくれた訳です。
さらに私は「義の男」なんです。
損得では動きません。まっすぐで熱いんです。こういうところを、誉田さんはよく見ていてくれたんだと思います。
これは嬉しかった。
それ以来、私は石田三成ファンになりました。
だって、そうですよね。友人から「三成に似ている」なんて褒められたら、絶対に好きになっちゃうじゃないですか!
そんな私から見て、歴代の大河ドラマの中で、今回の石田三成が一番納得がいくというか、史実に近いというか、最も愛すべき人物像に描いてくれたという満足感があります。
とくに関ヶ原の戦いの敗戦後に捕らわれて、家康の前に引っ立てられながらも、一步も引くことなく、堂々と一騎討ちのごとく意見を戦わせたシーンは、涙が出るほど感動しました。
「思いあがりも甚だしい。私は変わっておりませぬ。この私の内にも、戦乱を求む心が、たしかにあっただけのこと。一度火がつけば、もう止められん。恐ろしい火種だ。それは誰の心にもある。ご自分にないとお思いか? うぬぼれるな! この悲惨な戦を引き起こしたのは、私であり、あなただ。そしてその乱世を生き抜くあなたこそ、戦乱を求める者。戦無き世など成せぬ。まやかしの夢を語るな!」
まさに、大河ドラマ史上に残る名セリフを、三成に言わせた古沢良太脚本の素晴らしさに、心からの賛辞を送ります。
戦国時代に限ったことではありません。幕末・明治維新も日露戦争も太平洋戦争も、果たして本当に日本国民の中に戦を求める心が無かったと言い切れるのか。
そして、それは平和が大切だと口にしてはばからない私自身だって、同じです。
三成に真実を突きつけられた家康と同様に、私も打ちのめされ、反省させられました。
これが古沢良太が視聴者に訴えたかったメッセージだったのではないでしょうか。
ドラマ『どうする家康』の中の家康は、この石田三成の死があったからこそ、平和な世を作り上げることができたのだと思います。
言ってみれば、260年の天下泰平は、家康と三成の合作だと言っても過言ではありません。
そんな風に三成を描いてくれた古沢良太脚本に、石田三成ファンの一人として、心から感謝の言葉を送りたいと思います。
ありがとうございました!
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